税理士が、会計事務所・税理士事務所の就職のお悩み・質問に本気で答える!

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公認会計士が代表者の会計事務所の業務水準

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

週末は、TOTALグループの事業計画説明会でした。
1年に一度、全社員が集まります。
組織としてどう戦っていくか、
これから社会で何を目指すのかを
みんなで考えるいい機会になりました。

なお、
税理士法人TOTALの前期のテーマは
「みんなちがって、みんないい。」

 

そして今期のテーマは、
「私が変わる みんなが変わる 世界を変える!」
です。

 

スタッフのみなさん、お疲れ様でした。
今期も頑張りましょう。

 

公認会計士が代表者の会計事務所の業務水準について
さびきじみけ様からのお問合せです。

■年齢 36歳
■性別 女性
■資格 税理士科目合格
(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法)
■学歴 MARCH卒
■会計事務所経験 正社員12年
■居住地 東京都

 

初めてメールを送らせていただきます。
当方、会計事務所勤務しております さびきじみけと申します。

 

現在転職活動しておりまして、似たような求人を多数受けておりますが
気になった点がありますので質問させていただきます。

 

公認会計士2人が代表の税理士法人
・人数規模が8~20人前後
・少数精鋭と謳う
・税理士の人数が不明
(試験で受かった人数の意味で、
免除なのか公認会計士かつ税理士であるのか等不明)
・年収も400~600万円
・平均年齢30代前半

 

勤務地が異なるのみで、ほぼ上記のような条件のものが多いのですが
当方のような人間が採用された場合
・仕事を大量に丸投げされる。
・組織として機能していないため仕事を系統だてて学べない。
と分析し、応募していません。

 

Q .
当方の上記の判断は妥当なのかどうかご意見いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。

 

A.
一般的には妥当な可能性が高いと思います。
もちろん、例外もあります。

 

かなり書きにくい問題ですが、
さびきじみけ様が、この質問を私になさっているということ自体が回答な気がします。

 

さびきじみけ様は、税理士試験の勉強も進み、実務経験も10年以上なのにまだ若いので大人気ですね。
(率直に言って税理士法人TOTALでも欲しい人材です)

 

『プレーヤーとして結果を出せるのは間違いないだろう。場合によっては組織や仕組みを作ってくれるかもしれない』

そう期待されているでしょう。

 

公認会計士は、上場企業の監査を行うための資格なのに対し、
税理士は中小企業の税務申告を行うための資格です。
「会計」という点では共通しますが、その対象も、行う業務も本来は異なっています。
言うなれば、料理人で言うと、フレンチのシェフと、和食の板前さんです。

 

ただ、法制度上、公認会計士は、実質的に税理士の上位資格としてほぼ無条件に税理士登録ができることになっています。
フレンチのシェフは、修行しなくても和食の板長と名乗っていいという制度とも言えます。

 

実際には、税理士の仕事はご存知の通り職人技で一定の期間研鑽を積んで、技術を学んでいく必要があります。
ただ、会計士は、(制度上やむを得ない面もありますが)税理士をやや下に見ているので、体系的にていねいに学ぶ意欲がある人はかなり少なく、
先輩会計士の事務所で1年弱お手伝いするか、それすらせずにすぐに独立して業務は後から覚えればいいと考える人が多くなっています。

 

このため、多くの公認会計士は、少なくとも開業後相当の間は税務に関する技術をあまり持っておらず、そのコントロールができません。

 

公認会計士で独立するような方は、営業力がある方もおり
(営業力に自信がなければ、そもそも監査法人に残るか上場起業の経理に転じます)
集客はできたりします。
公認会計士は、監査法人で徹底した標準化を習っているので、税務も簡単に標準化が可能だと考えがちです。
ただ、監査法人で既に緻密に作られているマニュアルを運用することと、
自分が経営者としてマニュアルを作成し、それを従業員に教育し、人事を管理し、実際に安定して運用するのでは難易度は全く違います。

 

そもそも、税理士に比べると税理士業務がよくわかっていないので適切なマニュアルは簡単には作れません。監査法人のスタッフと税理士事務所の職員の人の違い、組織が違うと管理手法も異なること、その差を乗り越えて運用することがどれだけ大変かも理解していません。

 

このため、最初のうちは、イライラして怒ってばかりになります。その結果、離職者が増えて失敗を繰り返すと、

 

(1)業務を職員に丸投げする
そもそも職員に期待しないで辞められてもいい程度に、業務を投げます。
①一人辞めたら二人採れ、二人辞めたら四人採れ
②結果を残した従業員だけ残れば後はいなくなってもかまわない
UP or OUT は監査法人の従来の人事システムで
彼らからしたら当然のことです。
今の公認会計士が代表者の大手税理士法人の多くは
この考え方で大きくなってきました。

 

(2)低い税理士業務レベルでも問題ない業務領域の開発
職人的な税理士業務ができなくても、公認会計士として事業計画、SPC、デューデリ等、時代に応じて付加価値を高くとれる領域を目指す。

 

この場合、その事務所がやっている業務が、さびきじみけ様にとって刺激になる新しい面白い領域でないと、成長が感じられず、やらされ感が強くなって疲弊するでしょう。

 

もちろん、例外もあります。マニアックで職人タイプの公認会計士の先生もおられます。このタイプの方なら、自分で仕組みを作れるでしょう。

 

従業員30名以下の事務所では、所長の代わりに業務をコントロールできる人は外からはあまり入社してこないので所長の技術に依存することになります。
ただ、決してその能力があり、努力が続けられる公認会計士の方は多くありません。

先日も、従業員10名程度、開業して10年近い公認会計士の所長が業務がうまく回らず、拡大をあきらめようとしているのを知りました。
(かなり頑張っている営業が得意な方で、すぐ100社以上のお客様を獲得して注目・応援していたのですが…)
税理士業界の標準化をしようと思うと、少なくとも従業員100人くらいまでは、自分でビジネスの設計図を書けて業務をコントロールする必要があります。
それには最低3年、できれば5年程度の職人としての訓練・蓄積が必要です。そこからさらにビジネスデザインを安定させるのに5年以上の年月を必要とします。営業中心で頑張っているとその時間を作ることやそれを意識し続けることがなかなかできません。
成長し続けると事務所はあまり儲かりません。
営業力のある公認会計士なら、成長を志向するより、手堅く(成長を止めて)単価の高い会計士業務を小さく続けた方がお得だと気が付きます。
これを続けるには、10年以上苦しみ続ける必要があるし、今後はその期間が延びるおそれがあるのです。

 

 

多くの場合、さびきじみけ様の予想は当たっているでしょう。
ただ、もしお時間があるなら、面接をして直接その事務所の内容を確認してみてもいいと思います。
この質問ができるあなたなら、代表者と業務の話をすれば、どんな業務をどの水準で行っているかはかなり正確にわかるでしょう。

 

面接は、事務所が求職者を選ぶだけでなく、
求職者(転職希望者)が事務所を選ぶための機会でもあるのです。

 

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私は、開業当初から業務の標準化、マニュアル化に伴う士業の組織化を志向していました。
2年の受験専念期間に加えて、5年の修業期間、開業してさらに8年、
標準化を一定レベルにするのに合計して15年の年月をかけています。

 

業務レベルは、標準的レベルではなく常に最高レベルを目指しています。
それを各部門(一般法人、資産税や医療、海外業務なども)で標準化して達成していきたいと思っています。
TOTALは現在180名のスタッフが在籍しています。
最近では優秀なスタッフがそろってきました。
私を超えるスタッフも増えてきました。
(私のレベルが低い?)
本当にありがたいことです。

 

人はそれぞれに優れた点があります。
多様な人材のご応募をお待ちしております。
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税理士 高橋寿克

この記事に関するコメント

  • 高橋寿克 様

    いつも大変お世話になっております。

    ご多忙の折にも関わらず、ご回答いただきまして
    誠にありがとうございます。

    質問させていただいた税理士法人では、

    ”ふつうの仕事”を”ふつうにしたい”

    当方の意図とは相いれないケースがやはり
    多いようです。

    ご回答大変参考になりました。

    ”ただの消耗品”にならないよう心して
    転職活動していきます。

    取り急ぎ用件のみにて失礼いたします。

    2017年10月11日 9:26 AM | さびきじみけ

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