税理士試験と独立のための税理士事務所選び
2014年12月30日/ 高橋
税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。
平成26年度(第64回)税理士試験の合格発表があり、税理士法人TOTALでは2名 官報合格でした。
(これで税理士・有資格者は27名になりました)
一人は、3年間での短期合格、
もう一人は10年以上かけて最後の1科目たくさんのA判定を積み重ねての合格。
(税理士法人TOTALに来てからは初年度で合格ですが)
形は違えど、とりあえず、ほっとしたことでしょう。
おめでとう!
その他にも元スタッフが、遠く九州の地で合格なさっていました。
Yさん、おめでとうございます。
一方で
残念な結果となった方もたくさんおられました。
(本音ではあと2名、合計4名くらい官報を期待していました)
来年の皆さんの合格を祈念します。
そういえば、来年の税理士試験の日程も発表になりました。
<平成27年度(第65回)税理士試験>
試験実施 平成27年8月18日~平成27年8月20日
合格発表 平成27年12月下旬
えーっ!試験がお盆過ぎで、発表がクリスマスですか!?
どうなってるんだろう。
この日程では、9月入社や1月入社に間に合わない人が出てきます。
採用活動をみんな、試験前や発表前にするのかな。
受験生には酷な日程ですね。
うちは通年採用だからいいけど…。
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ROY様からのお問合せです。
■年齢 25歳
■性別 男
■資格 財務諸表論合格
■職歴 親の会社の経理
■学歴 地方私大経済学部卒
■会計事務所経験 大学卒業後、約2ヶ月勤務経験有り
■居住地 地方
■その他 趣味:運動・読書
得意な事:接客
他人からよく言われる事:正義感が強い
今年の税理士試験でようやく1科目(財務諸表論)の合格を得ることが出来ました。
そこで、税理士事務所への転職を、来年の8月の試験後にしようと考えています。
ちなみに受験科目は「簿記論・法人税法・消費税法(簿記論は3回目、他は2回目の挑戦)」の3科目です。
かなりのボリュームがあり、大変だとは思いますが、
・法人税・消費税は実務で必ず使うから、勉強してから実務に就いたほうが良いと思う
・前回の試験で簿記論を受験しているから、そこまでの負担は加わらない
(来年は法人税・消費税の2科目受験の予定でした)
以上の2点から3科目受験を決意しました。
将来、税法は「法人税法・所得税法・消費税法」を取得しようと決意しています(実務重視の科目を取得したいため)。
ちなみに、将来は独立し、自分の事務所を作る予定です。
Q.
自分はどのような税理士事務所が向いていると思いますか?
A.
ROY様は、真っ直ぐな一本気な方なんでしょうね。
こちらも直球で勝負です!
1.受験に向いている事務所
税理士としての独立のために、ROY様の場合、税理士試験に5科目合格することが必要です。そのためには、受験勉強がしやすい税理士事務所を選ぶ必要があります。
事務所は学校とは違います。「仕事」をする場所であって、あなたの「勉強」のためにあるのではありません。
勉強しやすい環境がある事務所の方が圧倒的に少ないでしょう。特に、人気がある中堅・大手の事務所や、若い伸びている税理士・会計士の事務所では忙しいのが当たり前です。
もちろん、人手不足なので、求人ページや求人誌等の事務所案内には、「受験生を応援します」と書く事務所も増えています。でもそれが受験生が思うレベルである確率は残念ながら低いでしょう。事務所だって営利企業で限界があるのです。
中には、合格実績を書いてあっても、試験後(9月)入社組ばかりというケースもあります。
よく調べないと受験との両立ができなくてあとで後悔することになります。
受験が本当に可能かどうか・バックアップが手厚いかは、
・過去(または今年)に在籍中に官報に合格した者が何人いるか
・受験生は今何人いるか or 何人受験したか
・試験休みはあるか、有給は試験前に消化できるか
・専門学校の学費や受験料の事務所負担があるか
を聞けば分かります。
ただ、教えてもらえない or 聞かずに判断したい場合、
(1)どれだけ税理士がいるか調べる
税理士事務所別の登録税理士数は、日税連のHPで確認できます。
「税理士 検索」でページを出して
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch0.asp
「条件を指定して検索したい場合」の「税理士」を選択
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch3.asp
「事務所名」に就職希望会計事務所を入れればすべて出てきます。
(ここでは登録していないいわゆる「税理士有資格者」は検索できません)
有資格者の比率が低すぎる事務所は注意が必要です。
合格者が出ないか、合格者が在籍し続ける理由がないかということになります。
(2)所長税理士の経歴
官報合格者の方が、大学院免除組より試験に理解があることが多い。
税理士試験のつらさを知っていますから。
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税理士法人TOTALでは、専門学校の学費の原則全額免除や、試験休み+有給消化、試験を意識した担当割等、受験のバックアップ体制はかなりととのえています。
うちが税理士試験に理解があるのは、私が税理士試験のつらさを知っているからです。
私の出身事務所は、歴史と規模があるかなり良い税理士事務所ですが、大学院免除者を一人輩出したのみで、在職中合格者は一人もいません。私も合格できず、退職して専念受験しました。言い訳になりますが、仕事が好き過ぎたのと、同僚にいわゆる万年受験生が多く本気で勉強している人が少なかった環境も原因かもと思っています。
うちのスタッフには、同じ思いはさせたくありません。
このため、税理士法人TOTALでは、仕事は本気でやってもらいますが、税務以外の付随的な能力を身に着けるのは合格後でもいいと思っていますし、何年も真面目に勉強しないような受験生には少し「勉強してる?」とうるさいかもしれません。
最近は、「熱く仕事しろ」、「お客様のためにできることを考えろ!」という熱血スタイルの会計事務所がはやりです。これは、中小企業に依存する税理士という仕事を考えると正しいと思います。でも、仕事ばかり考えていると、試験が合格しにくくなるのも確かです。
自分が幸せになれない人(受験生)が、他人(お客様)の幸せのために尽し続けるのは難しい。事務所による「論理のすり替え」にいつか気づきます。
仕事にリミットなく没頭するのは官報合格後でも構わないのです。
まずは今しかできない受験との両立をがんばって、
合格したら、やるべき仕事はいくらでもあげます。
税理士試験に合格したら見えてくる世界もあるのです。==================
試験の出来や残り具合によっては、パートスタッフで働き始めたり、8月に正社員になっても将来パートになるという選択もありです。
2.最初はオーソドックスな中堅事務所
税理士には専門家として善管注意義務が課されており、税務調査で失敗すれば、損害を賠償しなくてはならなくなることもあります。その額は相手によっては数千万円から数億円になる危険性があります。身近でも損害賠償による税理士廃業は起きています。
信頼関係という点でも、「税理士」は独立したら、お客様から何でも知ってる相談相手として頼られます。このときに、さも何でも知っているかのようにふるまえるかが重要になります。
やはり一通りのことを独立前に経験しておいた方が有利でしょう。
小さい事務所だと、お客様が種類的にも偏るし、中規模以上のクライアントがほとんどなかったりします。
逆にBIG4や都心(丸の内)大手は、お客様に零細企業はいないでしょう。
また、
若い先生の事務所だと相続税申告業務がほぼない(お客様が若すぎる)
ご高齢の先生で伸びていないと起業支援が経験できない(お客様も高齢)
など所長の年齢による偏りもあります。
業務の専門特化を考えても、SPCや国際業務、金融機関を相手にした資産税業務は、独立しても規模がないとそのお客様を獲得するのが難しいはずです。
(地方にはほぼないし)
できれば、
まんべんなく多様な業務があり、極端に業務分担が進んでいない、所長が40代半ば~50代くらいの中規模以上の税理士事務所が良いでしょう。
その後、ある程度の経験を積んだら、例えば、資産税業務や医療関係のようなものを手を挙げてやらせてもらうか、それが認められなければ必要に応じ専門特化事務所に転職すればいいでしょう。
なお、営業経験ですが、税理士法人の勤務時代に営業を経験して独立する方はあまりいません。その事務所の営業手法がそのまま独立して使えるとは限りませんし。実際には、独立してしばらく(2年程度) 本気で努力すれば、半分以上の方は自分なりの営業のコツがわかってきて生き残れます。
これを大変とみるか、楽とみるかですが、他の産業よりははるかに恵まれています。初期投資(ソフトとPC関連くらい)が少なくて、独立成功率が半分以上ある仕事なんて、もうあまりありません。税理士は、独立に関する限り、大勝ちは難しいけれど、食べていくには困らない業務と言えるでしょう。
それに、ROY様の場合、
親が会社経営をなさってており営業がどんなものかわかっているし、接客が得意だし、もしかしたら人脈も多少は期待できるのかもしれません。
繰り返しになりますが、将来独立したい受験生の場合、
1.受験に向いている事務所
2.最初はオーソドックスな中堅事務所
がおすすめになります。
参考 「会計事務所規模別特徴」
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税理士法人TOTALに入社してから税理士資格を取った方は24名。
元からの有資格者と併せると49名
思えばたくさんの税理士・有資格者を輩出してきました。
半分以上の方は税理士法人TOTALに残ってくれており、
残りの方は社外で頑張っておられます。
そのうち独立した税理士は15名
これからもたくさんのスタッフが税理士になるでしょう。
みんな残ってくれればもちろんうれしいけれど、そうもいきません。
税理士法人TOTALはのれん分けはしないけれど、たくさんの税理士が独立して頑張っています。同じ業界の仲間です。競い合っていきましょう!
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あ、しまった、
書き終わってアップした後に致命的なミスに気が付きました。
地方で、税理士事務所の選択肢があまりない可能性が高いのですね。
地方でぴったりの事務所がない場合は、
(1)地方で就職する場合:地方で次善の事務所をさがす
落ち着いたしっかりした 50代~60代の税理士で、
従業員が3人以上いるところを目指す。
(そこが気に入らなくても、早めに独立するので構わない)
これなら、日本中ほぼあるでしょう。
(2)地方を出る場合:関東で良いと思う税理士事務所をさがす
残念ながら少子高齢化に伴う日本経済の規模の縮小は避けられません。
安倍政権がどんなに地方活性化を唱えても、
愛知、沖縄、宮城等の一部例外を除くと地方経済は衰退を止められないでしょう。
オリンピックを契機に東京1極集中はさらに進み、成長できるのは東京の通勤圏になっている関東地方の一部くらいのものです。
会計事務所業界は弱い中小企業に依存するだけに厳しさはそれ以上です。
地方には、人を育てるのに適した税理士事務所が今後はもう無くなっていくかもしれません。
その場合は、ROY様が関東地方に出てくるという選択もあり得ます。
ただし、慣れない一人暮らし、地方より高い生活費を考えると2~3科目合格後の就職が良いでしょう。
そういえば、「平成27年度税制改正大綱」が発表されました。
地方の活性化策を含めてよく勉強しようと思います。
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質問に対する回答、本当にありがとうございました!
とりあえず、転職活動は今年の受験後なので、まずは合格できるよう努力し、自分に適した事務所が探せるよう、高橋先生の意見を参考にし、こちらも少しずつ自分に合う事務所はどんなところなのかを考えていこうと思います!
2015年1月3日 10:59 PM | ROY