持病と税理士試験、会計事務所への就職

2018年08月04日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

「持病と税理士試験、会計事務所への就職」

 

から様からのご質問です。

 

■年齢 25歳
■性別 女性
■資格 日商簿記1級
■職歴 なし
■学歴 MARCHより少し下
■会計事務所経験 なし
■居住地 それ以外の地方
高橋先生、はじめまして。就職相談室、拝見させていただいております。

 

私は、現在公認会計士試験の論文式試験に向けて勉強しています。
ちなみに、税理士の簿記論、財務諸表論も初めて受験する予定です。
会計士試験がメインのため対策はしておりません。)

 

数年、会計士の勉強をしてきたのですが、会計士よりも税理士の仕事の方に興味があると最近になり気づきました。
会計士試験で租税法の勉強をしていて面白かったことから(科目合格しています)、税務をしてみたいと思うようになりました。最初から税理士を目指しておいてもよかったかもしれない、と何度か思いました。

 

Q.1

そこで、今年の会計士試験にもし落ちたら税理士試験に転向しようかと思うのですが無謀でしょうか?

 

税理士試験は、一科目の負担が大きく大変難関だと聞きます。
私は、試験勉強やほかの事情により大学を休学しており、今年復学しました。なので、まだ大学生をしております。あと半期ですべての単位を取り終えることができるのですが、卒業は来年の9月になります。

 

Q.2

このような状態で、会計事務所等で来年の2月か4月あたりから雇ってもらうことはできるのでしょうか?

 

Q.3

もしくは、新卒を使って一般企業の経理を目指した方がいいのでしょうか?

しかし、一般企業は異動などにより、経理についてもすぐに部署を替えさらされるのではないかと心配してしまいます。

 

Q.4

就職にあたって、普通の人より、大学卒業の年齢が遅れてしまうことはマイナスになるのでしょうか
専門学校は一応卒業しています。まだ大学を卒業していないことに負い目があるのかもしれません。
明確な将来の目標はないのですが、自分の性格や持病のこともあり、営業職は向いていないのではないかと思います。

 

そして、女性ですが、生涯、結婚したいとは思わず独身でいる予定であるため、自分の力である程度余裕のある暮らしをできるくらいには稼ぎたいと思っております。
また、専門知識も持って、人のお役にたてたらと思っております。

 

もし、よろしければ、回答お願いいたします。

 

A.1

全然無謀ではありません。むしろかなり有利です。

公認会計士試験の短答合格、租税法科目合格ですから、

税理士試験で言うと、
簿記論、財務諸表論合格レベル

法人税法、消費税法も一通り勉強はしたというところです。

今年で会計2科目合格の可能性は高いし、仮にダメでも来年対策すれば大丈夫でしょう。

9月以降、消費税法と法人税法の勉強をすれば、早ければ来年には3科目以上の合格になります。

20代で税理士になれる確率も高いでしょう。

 

A.2

年末には簿記論、財務諸表論2科目合格かもしれませんし、そうでなくとも短答合格者ですから会計事務所での就職はもちろん可能です。

会計事務所も他の業界と同様(他の業界以上に)人手不足で、若手の受験生の減少が問題になっています。

卒業前でも受け入れは行われていますし、最近はパートやインターンのような形を取ることも増えています。

 

A.3

一般企業の経理を目指した方がいいのかは、価値観の問題なので私にはわかりません。

 

ただ、一般企業が、上場企業・大手企業という意味なら、就職は休学の受け取られ方によってはやや厳しいかもしれません。上場企業は減点法が基本ですから。中小・中堅企業でもいいという意味ならおおいにチャンスはあると思います。
持病によっては労働時間管理がしっかりしている大手企業やのんびりした中堅企業に絞った方が良いのでしょう。

日本の大企業は、就ではなく就ですから、職種別採用ではなく総合職採用のため部署替えは、男性ならジョブローテーションで必須でしょう。

ただ、女性は採用の仕方や会社によるのではないでしょうか。

 

A.4

上場企業なら、就職は留年や休学もきびしく評価されるでしょう。優秀な応募者も多いですから。
税理士業界では新卒ではあまり優秀な人材は入ってきません。税理士試験は、公認会計士試験と違って挫折経験者が多い試験です。新卒採用にもれたか、新卒の会社でうまくいかなくて税理士業界に入ってくる人がそもそも多いのです。

このため、公認会計士試験に専念して数年だけ人より遅れたというのはマイナス評価になるどころか、むしろ教育コストが下がってありがたいとさえ思われます。

 

新卒で大企業に入社して、「営業」で通用しなくて、資格に逃げるために会計事務所に転職する男性は昔から多くいました。

最近では、大企業は生命保険会社に加えて都市銀行、地方銀行といった金融を中心に女性にも「営業」をさせることが多くなってきています。営業ノルマをかけられて強いプレッシャーを受けてお客様のためにならない理不尽な金融商品を売るのが嫌で、会計事務所へ転職する女性が目立って増えてきています。「営業」が向いていない女性は多いのかもしれません。

 

週明けは税理士試験、月末は公認会計士試験ですね。暑い日が続きますが、体調に気をつけてください。

せっかくここまで頑張らってこられたので、特に公認会計士試験で良い結果が出ることをお祈りいたします。

 

持病を持つと、厳しい労働条件のもと、安定して働き続けられるか自信が持てません。このため資格を取ろうという人も多いと思います。

 

税理士業界は、心や体に持病を抱えた方が多くおられます。中には難病、奇病の患者さんもおられます。

税理士は、人生の敗者復活戦として30代前半くらいまではやり直しがきき、身近にどこでもあるのに自分のペースで働くことが可能な数少ない仕事です。

 

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私自身は、中学生の時に色素性痒疹という奇病を発病し、世界で第一号の男性患者になりました。

生きていくためには資格しかないと思って、最初は司法試験を目指しました。体力と気力が続かず、20代半ばで楽そうな(勘違いでしたが)税理士試験に転じましたが強い薬の副作用で30歳までは生きられないと思っていました。その後、治療法のない病気に自分なりに仮説を立てて試行錯誤しながら向き合い、社会人になったのは28歳になる直前です。
30代前半までは病気の再発に悩まされ続けました。あの頃を思うと今、こうして生きていられるだけでありがたい。

 

10代後半~20代を病気と共に過ごし、まともな結婚なんてどうせできないだろうと思っていましたが、あきらめずに今の奥さんをしつこく口説き続けたら結婚することができました。妹が二人いますが、結婚は私が最後になりました。今は二人の子供たちに恵まれています。人生って何が起きるかわかりません。

結婚、そして子供たちとの生活は大変なこともありますが、それ以上の幸せを私にもたらしてくれています。

 

から様の持病の内容や結婚したいと思わない理由は存じ上げません。

専門知識も持って、人の役に立つことは素晴らしいことです。

それでも、余計なお世話ですが、自分がより幸せになることをあきらめないでもらいたいと思います(的外れでしたら申し訳ありません)。

=====================

 

 

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

高橋様

お忙しい中、ご丁寧な回答をありがとうございました。
就職に関しまして、私は就職できないのではないかと自信を無くしていましたので、大変励みになりました。
試験結果によって、税理士試験という選択肢もありなのだということがわかり、希望が持てました。
また、先生のご病気の体験談など、大変参考になりました。持病があってもそれを理由に挫けてる場合ではないですね。
まずは、目の前の試験を頑張りたいと思います。

この度は、ありがとうございました。

2018年8月5日 12:43 AM | から

高橋先生、再びコメント失礼します。
現在、公認会計士試験の結果待ちの状態なのですが、先日、10人規模の地元の税理士法人に書類選考(履歴書を送付しました)で落ちてしまいました。
事務所の方と、対面はしておらず、やり取りは電話とメールのみです。
落ちたことは気にしていないのですが、なぜ落ちたのか知りたい気持ちがあります。
なぜ落ちたのか、今後の就職活動(税理士法人に限りません)の参考にしたいので、先生から見て落ちる要因がありましたら(わかる範囲で結構です)教えていただけたらと思います。
お忙しいすみません。

2018年9月19日 5:32 PM | から

すみません。
補足です。
その応募した税理士法人は新卒採用(第二新卒まで)を行っており、それに応募いたしました。

2018年9月19日 6:06 PM | から

落ちる要因
(1)公認会計士試験に合格しそう
科目合格しているということは、最終合格するかもしれない。監査法人に入る前の腰掛けで仕事をさえれてはたまらない。
.
(2)公認会計士試験に合格しないで受験を続けそう
短答合格ということはしばらく会計士試験の受験を続けるだろう。どうせ、会計士試験と仕事の両立は難しい。仕事に本腰は入れてくれないだろうし、いずれ試験専念になって辞める人を採用したくない。
.
(3)公認会計士試験についてよく知らない
短答? 科目合格? 公認会計士試験はよくわからないな。でも、税理士のことを下に見てそうだし、大学も休学しているので使いにくいと嫌だな。めんどくさそうだしプライドが高くてやめるかも。
.
こんなところが考えられます。
.
社会は学校ではありません。採用する側は応募者が優秀かどうかよりも、自分の税理士事務所できちんと働き続けてくれるかを重視して採用するものです(医大は大学入試ですら、大学病院で働き続けない女性に不利な扱いをしていることがわかって問題になりましたよね)。特に新卒、第2新卒の採用は教育コストがかかるだけにその傾向が強くなります。
会計士試験又は税理士試験の結果発表後、自分がどうしたいのか、会計士試験をやめて税理士に本気で転向するつもりがあるのかを明確に書類に書く方が採用されやすいでしょう。応募のタイミングや、それに応じた履歴書の書き方も工夫してみてください。

2018年9月20日 11:02 PM | 税理士 高橋寿克

高橋先生
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
応募のタイミングは悪かったですね。履歴書も、将来税理士として活躍したいという旨は書いたのですが、具体性にも乏しかったのかも知れません。
働き続ける人間であるといることを、わかってもらえるような書き方が良かったですね。
今後は、反省点を生かして就職活動を行ってゆこうと思います。
ご教示いただき、誠にありがとうございました。

2018年9月21日 6:55 PM | から

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