地方公務員の税理士試験受験と転職
2019年01月06日/ 高橋
税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。
「地方公務員の税理士試験受験と転職」
平成30年度(第68回)税理士試験の結果が発表になりました。
税理士法人TOTALは、今年も2名官報・最終合格者を輩出できました
(これで8年連続官報合格者を輩出しています)。
今年の官報合格者と最終合格者は2名ともマネージャーでした。仕事と受験の両立はかなり大変だったはずで頭が下がります。
科目合格者の中には、出産明けのママさんスタッフもいます。
主婦の時間のやりくりの上手さは男性も見習わないといけないですね。
そう言えば、昨年は、在籍者の中から社会保険労務士試験2名、司法書士試験も1名合格者が生まれました。
合格した皆さん、
おめでとうございます!
試験の結果、春から3名の方が大学院に進学することになりそうです。
なお、税理士法人TOTALの受験生支援は
・税理士試験受験料の負担
・大学院進学費用の全額又は一部負担
・試験休み制度
・有給休暇の活用
・自習室の確保
・担当割の工夫(試験前にあまり担当をつけない)
・受験メインのパートである「受験スタッフ」制度
といった形になっています。
最近では新卒をいかに採用するかに注力する事務所も増えてきています。
税理士法人TOTALも、本気で新卒採用をはじめました。
4月から3名の新卒の新人が入社します。
(早めに合流して、パートで働いてくれている人もいます)
大事な若者たちをきちんと育てていきたいと思います。
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ゴースト様から、年末にご質問をいただきました。
■年齢 38歳
■性別 男性
■資格 簿記論、財務諸表論、消費税法、国税徴収法
TOEIC840
■職歴 地方公務員13年勤務
■学歴 MARCH
■会計事務所経験 なし
■居住地 首都圏
いつも楽しく拝見させていただいております。
どんな質問にも誠意をもってご回答されていて、先生のお人柄が伝
さて、早速ですが、相談に乗っていただきたいことがございます。
私は地方自治体で13年ほど、行政事務職員として働いてまいりま
13年の間には、福祉関係の職場を中心に、現場から法律・条例等
まったく会計とは無縁に過ごしていたところ、数年前、法人決算に
と、ここからはよくある話で、もっと勉強したい、難関資格に挑戦
税理士試験の勉強もやはり面白く、仕事が忙しい時期もあって苦労
ここで、40歳が目前に迫り、迷いが生じてきました。
現在の仕事の内容が、現場を離れ、管理的な方向に偏ってきていま
やがて、それよりも、ずっと勉強してきた試験の知識を活かしたい
前置きが長くなりましたが、以下、アドバイスを頂戴できればと思
私はこれまでいわゆる会計業務というものに触れたことがありませ
ただ、生活面から、年収大幅ダウンは厳しいと考えています。何よ
そこで、ここ数年国税庁では経験者採用を実施しているようですの
(ちなみに、現職において地方税部門に配置される可能性はほぼあ
以上を前提とし、先生のお考えをお聞かせいただければ幸いです。
Q.1
国税出身の税理士の需要等についてどのようにお考えですか。
もとが公務員志望で、人の生活を裏で支えたいという気持ちもあり
数年、例えば45歳くらいまでそのよう
Q.2
Q.1以外、例えば現状ですぐ会計業界へ飛び込む場合の年齢リスク
以上、長文となりましたが、年齢のこともあり、若干焦っています
最後は自分の決断、と思いつつも、どのような可能性があるのか、
年末のお忙しいところとは思いますが、ご返信いただければ幸甚で
A.1
国税出身の税理士には、一定の需要があります。
(1)独立の場合
税務署OBの税理士は、税務調査を数多くこなしてきており、行政手続きの流れを知っており交渉相手となる税務署職員の手の内がわかる、さじ加減がわかるところは強みです。
このため「税務調査に強い」ことを売りにして成功している税理士も一定程度おられます。
ただ、以前と違って税務署による顧問先の斡旋は行われないので独立する方は減っており、独立するためには自分でお客様を獲得する営業力が必要になります。
人と接するのが得意で親身になって話ができ積極的に人の中に入れるのだとしたら有利でしょう。
(税理士で、最初から営業が得意な人は多くありません)
中には組織化して数十人規模の税理士法人の経営者をされている方もおられます(経営者として成功するのはバイタリティがあふれる方が多いように思います)。
なお、以前は顧問税理士が税務署出身者だと調査に入りにくいという都市伝説(もしかしたら20年前は事実だったかもしれません)がありましたが、最近は税務署OBだからといって特別な扱いはしてくれません。現役は、OBに気を使って手加減するということもなさそうです。それだけ税務署・国税局は公平な役所だと言っていいでしょう。最近では、脱税に手を染める不良OBの摘発も目立っています。
(2)パートナー候補・後継者として
40代半ばのOB税理士なら、税理士法人のパートナーとしての需要はあると思います。
民間の税理士事務所の代表からは、公務員出身者なら人柄は真面目だし看板にもなると思われるでしょうし、
税務署OBの代表者にも、同じ文化で育った後継候補として迎えられることもあるでしょう。
これらは、個別性が強いので、退職後に探すのではなく、税務署在職中に条件をよく見極めて転職する必要があるでしょう。
(3)専門職として
職歴によっては専門職として勤務することが考えられます。条文を読める審理担当や、資産税部門出身者は需要が多いでしょう。
勤務、半独立のいずれの形態も見られます。
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税理士法人TOTALでは、現在、元国税不服所審判官(税理士法人のパートナー)、元審理担当、元資産税部門統括官の3人の国税OBの税理士が頑張ってくれています。
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不利な点があるとしたら、ゴースト様のお気づきの通り、経済的な問題です。
(1)の独立はどうしても開業当初2~3年は利益が出にくいですし、
(2)は上述の通り、個別に判断するしかありません。
税務署と税理士事務所でも文化や求められるものが違うので、
(3)の勤務の場合はどうしても当初は評価がやや低くなるのはさけられません。
A.2
第2子の誕生、おめでとうございます。
上のお子さんの年齢が低く奥様が育休明けはフルタイマーで一定の所得が見込まれる場合以外は、今すぐ会計事務所に転職するのはあまりお勧めできません。
忙しく働きながら7年で4科目税理士に合格とはすばらしいですね。そんな中でも早い出世をしているので仕事の実力は証明されており、業務経験を積むのは税務署経由でも間に合うと思います。
20年前、男性の平均寿命が70代半ばの時代なら、組織で出世を目指し、60歳定年後は悠々自適という将来設計はしやすかったと思います。
ただ、今のアラフォーだと男性も90歳を超えて生きる方が多いでしょう。医学の発達と健康情報の普及により寿命が15年も伸びるのです。
地方公務員も今後は役職定年で給料が3割カットされ、定年後はさらに半分以下の給料になるでしょう。頼みの年金は少なくとも70歳支給まで繰り下げられるでしょう(最大75歳もありうると思っています)。
ゴースト様の場合、子育てでお金がかかるピークの前に役職定年を迎えることになるかもしれません。
大企業では総合職・ゼネラリストとして出世した元部長よりも、出世できず現場に最後までいて定年を迎えた人の方が、技術者・スペシャリストとして再雇用の条件が良いという逆転現象も起きています。
地方公務員も技官と違って行政職の方は、どうしても異動が多く専門性はないので定年後は不利になるかもしれません。
私からアドバイスするとしたら2点
(1)奥様の仕事について(奥様が正社員なら読み飛ばしてください)
もし奥様が専業主婦だとしたら、最終的には「正社員」を目指してパートからでもいいので働いてもらう。
高齢化社会で男性の1馬力で2人の子育てを経済的に支え続けるのはかなりリスクがあります。もし、独立や転職の勝負所で奥様が正社員になっていれば数年間は経済的に支えてもらうことも可能でしょうし、社会の厳しさも理解してもらいやすいでしょう。
40代で早めに独立を目指すなら、ゴースト様の場合は奥様の理解と協力がある方が望ましいでしょう。
(2)タイミングをはかる
奥様のバックアップが期待しにくい場合は、税務署や役所から 税理士事務所への転職や独立は条件を見て慎重にタイミングをはかってもらいたいと思います。
税理士という仕事の特性は、健康状態さえ問題がなければ定年がないことです。最近の合格者の平均年齢は38歳になっており、登録している税理士の平均年齢は60歳を超えています。70歳はおろか、80歳の税理士も普通におられるし、中には90歳の現役もいます。
子育ての経済的な目途がつくまで今の役所に残ってもいいし、
税務署に転職しても定年まで税務署に残って再任用(税務署の内部での再就職)を受けずに定年後に独立してもいいのです。
私がそれなりの数のスタッフを採用し、一緒に働いてもらって感じるのは
人はどうしても最初の職場の文化の影響を強く受けるということです。
公務員に求められるもの(安定性・安全性・連続性)と民間で求められるもの(融通性・効率・不連続・サービス精神)は同じではありません。
文化の違いに適応するには時間がかかりますしリスクもあります。
元公務員や元半官半民の公的企業出身者の方は
税務署に転職するのは比較的楽で、
(代表が税務署OBではない)税理士事務所に転職してうまくやるのはややハードルは高いかもしれません。
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税理士法人TOTALの3人の税務署OBは、
一人は40代での採用で、
あとは子育てが終わったので定年前に退官した方、
そして定年で再任用を受けなかった方です。
ここで、大企業の部長だった税理士もパートナーに迎えることになっています。税理士試験は若くして合格していましたが、子育てが終わって定年直前に税理士業界に入ってこられた方です。
第2の人生をどう生きるかは高齢化時代に働き続ける上で重要です。
税理士は、お客様から感謝されることが多い、やりがいがある仕事です。
長く高原上に実力や経済的なピークが続く、高齢化時代に合った仕事でもあります。
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高橋先生
新年のお忙しい中ご返信いただき、ありがとうございます。
税理士になることや、転職の先にある、その後の将来設計まで見据えた具体的なアドバイス、参考になります。自分にとって税理士として可能性がないわけではないことが知れた以上に、働き方についても大変貴重なご提案をいただいたと感じております。
今後も信念を持って、試験勉強や業務に邁進していける心持ちです。
重ね重ね感謝申し上げます。
2019年1月7日 6:33 PM | ゴースト