税理士試験の特徴と、合格までに必要な時間
2010年11月14日/ 高橋
東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。
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内容:
■年齢 30歳
■性別 女性
■資格 日商簿記2級、情報系資格(複数)
■職歴 コンサルティング業(転職経験:有)
■学歴 国立大学(理系)
■会計事務所経験 なし
■居住地 関東
■その他特記事項
現職は非常に忙しく、このまま今の仕事を一生続けられるとは
思えないので、税理士を目指そうと考えております。
(月平均労働時間:350時間超、土日はほぼどちらかが仕事、
1ヶ月間無休のケースも有)
しかし、現職では前述の通り、非常に忙しく、勉強時間をほとんど
確保できない状況です。
Q.
30代半ばまでに資格取得をすることを考えた場合、会社を辞め、勉学に専念すべきでしょうか。
もしくは、適性があるかないかを見極めるためにも、しばらく仕事を続けながらコツコツと勉強を進めるべきでしょうか。
現職がコンサル業であり、人と接する仕事は好きなので、長期的なキャリアを考えると税理士というお仕事は望ましいのではないかと考えておりますが、税理士の実業務を知っているわけではありませんので、仕事を辞めて勉学に専念すべきかという点で判断に迷っております。
A.
お仕事お疲れ様です。
夜の電車に乗ると、皆さん頑張っていることに驚かされます。
うちは主婦も税理士受験生も多いので、それほど残業は多くありません。
月350時間の労働時間はさすがに大変でしょう。
最近は経営者である私でもそこまで働いていません。
(数年前まではもっと働いていましたが)
会計業界では月300時間以上は、ごく一部だと思います。
(税理士法人TOTALでは残業代を1分単位で支払っていますが
最近では私と社員税理士の沓掛本部長以外は、
繁忙期でも月間300時間を超えることはごくまれです)
もっとも、コンサル業界より、給与はその分安いはずです。
税理士試験は、暗記とスピードが必要な試験です。
このため、一年でも若い・早い受験が有利です。
地頭の良さは、若さにはかないません。
18歳スタートなら、普通の人でも専念2~3年で合格できますが
30歳スタートだと、早慶レベルでも専念3~4年かかります。
(たまに人生をかけて2年で取りきる人がいますが、年に数人です)
30歳スタートの方にとってはかなり難関の国家試験です。
私は、26歳スタートで2年では5科目そろえられませんでした。
油断もありましたが、言い訳になります。みんなそんなものです。
30代半ばで最終合格したいなら、今の職場で働きながらではほぼ不可能です。
2年間専念し官報(5科目)合格を目指し、最低3科目は合格してください。
その後は、状況により働きながら受験を続けても、働きながら大学院通学でも良いでしょう。
受験開始前は、専門学校のパンフレットに書かれている最短のケースを想定しますが
(働きながら1年1科目とか、2年で官報とか)
実際には30代ではその通りにするのは難しいです。
また、30代前半に会計事務所で働き始めないと、専門職・技術者としては一流になれないでしょう。
税理士は一人前になるのに5年程度がかかる専門職なので、
(税理士法人TOTALでは2~3年を目標にしていますが)
一流の税理士になるにはここ数年がラストチャンスだと思ってください。
(のんびりと40代で税理士になる方も多いです。家庭とのバランスを考える方はそれも良いかなと思います)
30代からの人生のやり直しはなかなかできません。
税理士業界に転じるべきかはよく検討してください。
T様の場合の注意点は、
税理士はコンサル業的要素が強いと言っても、対象は大企業ではなくて、中小企業です。
このため、報酬単価も低いし、お客様の理解度・能力に合わせる粘り強さも必要になります。
この泥臭さに耐えられないようだと税理士業務に合わないでしょう。
会計事務所は小規模事業所が多く、個人商店です。税理士法人・100人以上の会計事務所でも、最大手クラスでさえも(BIG4を除くと)所長の個性で雰囲気がまるで違います。
(税理士法人TOTALも、普通の会社を目指していますが、私の個性の影響は大きいと思います)
残念ながら、労働環境等(残業、セクハラ、パワハラ、法令違反、思想的な問題等)で入社を勧めにくい会計事務所もそれなりにあります。教育や業務の標準化は全体に遅れており、事務所によってかなりの差があります。会計事務所選びは他の産業以上にキャリア形成上重要になります。
一方、税理士業務の良い点は、専門性やコミュニケーション能力、総合判断力が必要なので、すぐには一流になれないけれど、その分、息の長い成長が可能で、日々の研鑚さえ怠らなければ長く第一線でいることができます。
専門知識の蓄積が前提ですが、作業のスピードよりも、コンサル的なコミュニケーション能力・分析力が重要になってきており、前職のキャリアも生きるでしょう。
急な対応を要することは少なく、計画的に仕事ができるので、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
女性の場合、配偶者の転勤があってもどこにでもある仕事なのも魅力の一つです。
厳しいことも書きましたが、私は、中小企業・明日の日本を支える税理士の仕事が大好きです。この仕事を選んでよかったと思っています。
まずは会計業界に転じるか、じっくりと考えてください。決断したら1年でも早い合格を目指しましょう。
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