キャリア相談室
大手メーカー設計職 20代後半からのキャリアの選び方
~税理士業界への転職~
どこでも渡り歩ける、貢献を感じやすい仕事へのキャリアチェンジ
どこでも渡り歩ける、貢献を感じやすい仕事へのキャリアチェンジ

TOTAL士業キャリア相談室の税理士 高橋寿克です。
「大手メーカー設計職 20代後半からのキャリアの選び方」
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ご質問いただいた内容
相談者
M様からのご質問です。
■年齢 26歳
■性別 男性
■資格 簿記3級
■学歴 旧帝大大学院卒業
■職歴 大手メーカー設計職
■会計事務所経験 なし
■居住地 関東(転職の際に九州に戻ることを想定)
■その他(特殊事情等)
職場・人間関係が原因で現在、仕事を休職しております。元の仕事に戻る気力が湧かず、転職を視野に考えており、色々考えている中で士業に興味を持ちました。
相談内容
大手メーカーで働いて感じたこととして、
- 自分の仕事の貢献度を感じにくい。
- 小さな達成感、また成長を感じることが出来ない。
- 5年後10年後のキャリアに不安を感じる。
- いざ転職を考えたときに、選択肢が少ない(メーカーだと設備の都合上、勤務地が限られる。)
以上を踏まえて、キャリアチェンジとどこにでも渡り歩ける力、貢献を感じやすい仕事を重視したいと思うようになりました。士業を調べているうちに、税理士が自分の理想に近いのではないかと思い、興味を持っています。
そこで質問なのですが、
Q.1
税理士の仕事について実情を知る方法はありますか?(相談会や説明会等)
Q.2
税理士試験のために、退職し、勉強専念で臨む、または仕事をしながら試験勉強に臨むべきか
Q.3
仮に仕事と並行する場合、どの仕事に就くと将来的に有利か?(例えば経理や事務所アシスタント等)
以上の、仕事についてと20代後半からのキャリアの選び方について相談させていただきたいです。
回答
Mさんは、仕事を休職なさっているのですね。まずは体調回復を最優先に考え、ゆっくり休みましょう。その後、じっくり取り組むことがおすすめです。その際には、今までと違って、自分で何でも解決しようとするのではなく、使えるもの(者)は、親を含めて何でも使った方が良いのではないでしょうか。
まずは、回答をする前に、おさらいを兼ねて、前半・前提部分の私の考えを書かせていただきます。(長文ですが、回答に関係する部分もありますのでおつきあいください)
(1)仕事の貢献度・達成感
メーカーの設計職は、直接、お客様に接する場面がないので、仕事の貢献度を感じにくいですよね。税理士業務は、お客様(社長や、その配偶者等)から直接「ありがとう」と言われる仕事です。
そのため自分の仕事が、お客様に貢献しているとかなり頻繁に感じられますし、達成感も得られます。
(2)小さな達成感・成長実感
会計事務所・税理士法人に入社すると、
- 領収書整理・記帳代行・クラウド会計の設定を行う
- 税務申告書(法人税・消費税・所得税等)の作成
- 先輩や所長のお客様対応に同行・同席
- 自分が担当する
- 付随業務も徐々に覚える
- お客様の相談相手になってコンサルティングもできる
という流れで仕事を覚えていきます。 簡単なお客様から難しいお客様へ徐々に広げていくので、そういう側面でも成長していくでしょう。覚えることが多いので最初はすごく大変ですが、その都度、スキルの成長は日々、感じられます。税金計算の職人としては数年の経験である水準には達しますが、相手が経営者で経営相談も仕事の大事な部分なので、いつまでも成長に終わりはありません。
また、お客様に起業から関わらせていただくと、お客様が成長することも多いので、それに合わせて自分も成長していると実感できます。
(3)将来のキャリアに対する不安
税金は、国家存続の基盤です。また、日本の場合、予算を握っている財務省(旧大蔵省)が強いという歴史的な経緯もあり、社会政策の一部も税金が担っているのでかなり複雑な制度で、毎年細かい税制改正が行われます。このため、IT、AI(データの蓄積が必要)が進んでも専門家としての需要は減らないでしょう。5年後、10年後と言わず、将来、仕事がなくなることは考えにくいです。
2014年に、税理士業界はAIに置き換わり「10年後になくなる産業」というオックスフォードのマイケル・A・オズボーン教授(当時は准教授)の論文が出されましたが、10年を経過した今日まで、税理士業界は拡大を続けています。中小企業庁の統計にあるように、単なる、「税務申告代理業者」ではなく、中小企業の一番の相談相手だからでしょう。最後の相談をロボットやAIにしたい人よりは、専門家にしたい人の方が多いと思います。
(4)選択肢と勤務地
税理士は、知的な産業の中ではかなり珍しく、メーカーや大企業と違って、全国どこにでもある産業です。勤務地に困ることはありません。
但し、都会と地方では業務の幅には違いがあります。地方は総合型、都会は特化型がやや目立ちます。商圏の小さな地方では、特化型は難しいのかもしれません。M様は九州ですが、広いので地域の実情に合わせてご判断ください。また、一度就職して経験者になれば、転職の際は、より選択肢は広がるはずです(会計事務所経験者は教育コストがかからないので中小事務所が多い税理士業界では重宝されます)
M様も同じように考えたので「税理士が自分の理想に近い」と思っていただけたのでしょう。
前置きが長くなりましたがご質問に対する私の意見に移らせてください。
A.1 税理士の仕事について実情を知る方法(相談会や説明会等)
記事にするのが遅くなって申し訳ありません。まだ関東に住んでおられますか。ちょうど、税理士試験が終わり、今日と明日、大原簿記専門学校とTACの合同就職面談会があります。当日参加も可能です。それぞれ、多数の税理士事務所、税理士法人が参加いたします。
他の大都市圏(大阪、名古屋)でも同様のイベントは開かれますが、やはり東京が一番、規模が大きく、参加事務所・税理士法人数も多いので可能なら参加するのがおすすめです。宣伝的な要素はありますが、それでも、実際に参加して、じっくりと気になったこと、疑問点をお聞きしてみてください。回答の内容はもちろん、スタッフの人柄、全体的な雰囲気から、様々な特徴があることがわかるでしょう。『ここは!』と思う会計事務所があったら、数社面接を受けてみるのも良いと思います。より深い話を聞くことができるでしょう。候補は絞り過ぎないで、多めに受けてみてください。
また、この時期は税理士法人によっては、個別の事務所説明会を開いています。これらのイベントはオンラインもありますが、実際に現地で対面で参加する方が得られる情報は多いでしょう。
A.2 税理士試験のために、退職し、勉強専念で臨む、または仕事をしながら試験勉強に臨むべきか
M様の目標が、資格を取って、専門家としてキャリアチェンジしたいというなら、親等、周りの人に頼れるなら1~2年程度の専念がおすすめです。
税理士試験は、確かに科目合格制で働きながら合格する人もおられます。ただ、働き始め当初は仕事を覚えるために負荷がかかります。必ずしも、仕事と税理士試験の両立がしやすい職場ばかりではないかもしれません。個人的には、簿記論、財務諸表論の合格のめどがたち、税法1科目(消費税等)をある程度勉強が進むまでは受験専念がおすすめです。必ずしも合格していなくても構いません。そこまで勉強が進んでいれば、採用上でも有利になりますし、仕事にも比較的スムーズに入れます。
なお、税法科目に暗記(理論の単純暗記)は必須です。理系のM様は抵抗を感じるかもしれませんが、修行だと思って乗り越えるしかありません。税法3科目の暗記はもしかしたら、今思っているよりもつらいかもしれません。その場合は、会計2科目と税法1科目の3科目取得を前提に大学院免除というオプションも持つことができます。もちろん官報合格を目指しても構いません。
A.3 どの仕事に就くと将来的に有利か(経理や事務所アシスタント等)
M様の場合は、経理ではない方が良いと思います。理由は、経理は残念ながら未経験者が途中からは良い会社(新卒一括採用が前提の大企業等)に入りにくいからです。また、メーカーの設計職と同様に、あまり他の人から感謝される機会が多くはないので仕事の達成感も感じにくいかもしれません。
他業界に就職しては得られない 税理士業に直接役に立つ経験を積んで、様々なノウハウも学べる税理士事務所アシスタント(補助者)がおすすめです。
ただ、大企業と違って、教育や制度のレベルがバラバラで大きな違いがあるので、最初の税理士事務所・税理士法人の選定がより重要になります。
- 未経験なので、教育制度がしっかりしているところ
- 可能なら業務の標準化が出来ているところ
- 税理士試験受験への理解があるところ
- 特にやりたいこと・業務が決まっていなければ、様々な業務が将来選択可能なところ
が良いと思います。
すべての条件を満たすところはあまりありませんし、どんなに考えて、調べて入社しても当初の想定と違うこともあるでしょう。
無理でない程度にそこでがんばれば会計事務所経験者になるので転職の選択肢はかなり広がります。その時には、業界に対する理解も今よりも格段に進んでいるので、その時点で判断しても良いと思います。
税理士法人TOTALは、8月8日(金)にTACの「就職説明会」(東京 新宿会場)、8月9日(土)に資格の大原「就職フェア」(東京 渋谷会場)とTACの「就職説明会」(大阪会場)にそれぞれ出展いたします。会計業界最大級の就職イベントです。先輩社員も多数参加しますので、興味のある方はぜひTOTALのブースまでお越しください。ちなみに私は両日とも東京会場にいます。みなさんのご来訪をお待ちしています。
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執筆者
税理士法人TOTAL
代表社員税理士
高橋 寿克
千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国17拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。