公認会計士試験から税理士試験への転向と会計事務所への就職

2018年08月04日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

「公認会計士試験から税理士試験への転向と会計事務所への就職」

 

来週 8月7日~9日は税理士試験 本番です。

この時期は税理士法人TOTALでも、受験生は試験休みや年次有休休暇の消化に入ります。

7月から約1か月、オフィスを空けるスタッフも増え、代わりに受験しないスタッフが支えてくれています。

暑い日が続いており、私はかなりバテ気味ですが、
受験生のみなさんには体調管理に気を付けて最後のひと踏ん張り、頑張ってもらいたいと思います。

税理士試験が終われば、税理士業界最大の就職シーズン、熱い夏!がはじまります。

 

JOHN様からのご質問です。

 

■年齢 30歳
■性別 男性
■資格 英検二級
■職歴 なし
■学歴 早慶上理
■会計事務所経験 なし
■居住地  首都圏
私のケースは過去の質問の中で、おそらく過去に稀に見るくらい深刻なケースだと考えております。

私は、大学を4年遅れで卒業した後(多留多浪)1年ほどフリーターの期間を経たうえで、一発逆転をかけて公認会計士の勉強を始めました(大学時代の就職活動には完全に失敗)

しかしながら、3年近く勉強しても全く合格することができず(短答は僅差で不合格)、論文式に最終合格したところで上記のような経歴では監査法人に採用されるかどうかも怪しいと最近では考えております。

さらには、簿記の資格を何も取得しておらず、監査法人や税理士事務所の方々に会計士の勉強をしていた事を信用してもらえるかどうかさえも怪しいと考えております。そこで、会計税理士事務所に何とか就職し、《職歴をつくりたい》と考えています。そのうえで、税理士合格を目指していこうと考えております。

 

Q.1
簿記関係の資格取得によって、会計事務所への就職がどのくらい優位になるか? 私の経歴をご参考にお答えいただけると幸いです。
→(例)2級の取得に比べて、1級をとるとこのくらい優位になる等

 

Q.2

上記の簿記資格取得によって、現実的にどのレベルの事務所に内定が可能なのでしょうか?
(例)簿記○○級ならば、社員数○○人規模の教育がしっかりした事務所なら可能、簿記○○級ならブラック事務所なら可能、そもそもこのような経歴だと事務所に内定するのは無理等

 

Q.3

もし仮に会計、税理士事務所の内定できたとしたら、最終的にはどのくらいまで私の経歴と年齢からだら年収を上げるのが可能なのでしょうか?そのためにはどういった経歴を歩めばいいのでしょうか?

 

長文失礼いたしました。非常に深刻な状況で悩んでおります。

 

A.1

JOHN様の場合、簿記1級は事業会社に就職するなら有効ですが、会計事務所への就職では簿記関係の資格を取ってもほぼ評価は変わらないでしょう。

なぜなら、会計士試験の短答式の合格は簿記1級よりは評価が高く、簿記論、財務諸表論と同じくらいとされているからです。短答合格にかなり近い成績なら今更時間をかけて簿記資格を取る前に就職した方が良いと思います。

=====================

税理士法人TOTALは、経歴詐称防止のため、試験結果の通知や卒業証明書等は提出していただきます。
簿記1級の方は難化のせいなのか最近はあまり応募してもらった記憶がありません。簿記3級で十分です。簿記の勉強をしたことがない会計志望の方には入社前後で勉強はしてもらいますが。

=====================

 

 

A.2

会計事務所も他の業界と同様(他の業界以上に)人手不足で、男性社員は特に不足しています。

早慶上理(会計事務所業界では学力は上位10~20%に入ります)で短答合格に準ずるレベルなら、採用を検討する会計事務所の方が多いと思います。

ポテンシャルがあるので育てやすくて伸びしろがあるし、会計を広く勉強してきてくれているので初期の教育コストもかかりません。

大手が若さと科目合格を要求した数年前とは状況が全く変わりましたね。

 

逆に、JOHN様を嫌う事務所は、
・未経験者を教育することができない事務所

求人票に会計事務所経験者又は経理募集と書いてあったら難しい。

未経験者歓迎と書いてあれば大丈夫
・コミュニケーション能力優先で社会人未経験者不可の若手ベンチャー系成長事務所

ホームページのノリが明るすぎる
・高学歴の頭でっかちを嫌う学歴に自信のない所長の事務所

資格なんていらないとか、勉強より仕事と強く打ち出している
などでしょうか。

 

面接の結果、不採用になることは当然あります。そのときは会計事務所によっては、税理士試験の科目を合格したら とか 会計事務所を経験してから などと言われることがあるはずです。これは、面接の結果、総合的に少し足りなくて、でも将来採用を再度検討したいときのお断りの常套句です。当初から絶対に科目合格や会計事務所経験が必要だったならわざわざ面接にお呼びしません。

 

A.3

最終的にどれくらいの年収になるかは、JOHN様の仕事ぶりと今後の状況によるとしか言いようがありません。

 

最初は300万円未満かもしれませんが、仕事が普通に出来れば最終的には
・無資格で450~700万円(番頭さんや営業のエースを除く)
・勤務税理士で500~1500万円

・独立税理士は年収に制限はありません。数百万円から1億以上まで。

年収を上げようと思えば、最初は激務の大手やベンチャー系よりも、勉強が優先できそうなのんびりした近所の税理士事務所や合格実績が本当に多数ある(嘘も多いので採用広告に騙されないで)しっかりした税理士法人でまずは働き、早めに税理士になる目途をつけ、

どこかで大規模税理士法人に転職するか、独立するのが良いでしょう。

 

ただ、文章を読んで気になるのは、JOHN様が『過去に稀に見るくらい深刻なケース』、『非常に深刻な状況』と自分を評価している点です。

今、迷路に迷い込んでいる人に言っても理解してもらいにくいでしょうが、JOHN様の経歴は、税理士業界ではごく普通、平均レベルです。

 

JOHN様の場合、
(1)働きながら初年度、悪くても2年以内に簿記論、財務諸表論に合格
(公認会計士試験とかなり重複しています)

(2)そこから2年以内に週一科目に合格

(3)働きながら大学院に進学して税法を2科目免除

が可能でしょう。

これで順調なら35~38歳で税理士になれます。

昨年、平成29年度の税理士試験の年齢別合格者は

41歳以上………34.8%

36から40歳……21.8%

31から35歳……20.5%

26から30歳……15.6%

25歳以下…………7.3%

でちょうど真ん中くらいになります。

少しくらい遅れても長い人生、たいした差ではありません。

何せ税理士の平均年齢は60歳代ですから。

 

====================

税理士法人TOTALで、似たような経歴な方は、
大学卒業後に会計士試験を受け続けた(短答合格レベル)GMARCH卒で30歳過ぎに入社した女性は、30代後半で大学院免除(仕事と両立)で税理士になりました。
30歳までバイトしかしたことがなかった早慶卒男性は、試験を始めて働きながらがんばってあと1科目まで来ています。
上記二人は結婚して幸せにやっておられます。

MARCH卒でアラサーから試験を始めた官報合格者も37歳!になるまで社会人経験がありませんでした。今年の遅咲きの新人です。

 

私自身は、中学生の時に色素性痒疹という奇病を発病し、世界で第一号の男性患者になりました。

生きていくためには資格しかないと思って、最初は司法試験を目指しました。体力と気力が続かず、20代半ばで楽そうな(勘違いでしたが)税理士試験に転じましたが強い薬の副作用で30歳までは生きられないと思っていたし、社会人になったのは28歳になる直前です。
30代前半までは病気の再発に悩まされ続けました。あの頃を思うと今、こうして生きていられるだけでありがたい。

 

税理士業界は、心や身体の持病をお持ちの方もおられます。中には難病、奇病の患者さんも…。
今も指定難病で闘病中の元同僚や、受験時代に肉体労働で体を酷使し食べる物にも苦労して税理士試験に合格し働き始めた直後にそれまでの無理がたたって病に倒れお亡くなりになられた方もいます。彼らのことを思うと今でも胸が痛みます。

====================

 

 

上場企業なら、就職は現役か一浪まで、留年はきびしく2留は不可でしょう。コミュニケーション能力やリーダーシップも面接で見られます。採用後も減点法の出世競争が待っています。
そんなレベルの人材は税理士業界では新卒ではほとんどいません。そこから落ちこぼれたり、新卒の会社でうまくいかなくて税理士業界に入ってくる人がそもそも多いのです。

若くして税理士試験の勉強を始める早慶上理の方は少ないし、その多くはBIG4に行くでしょう(税理士法人TOTALにも来てくれる方がいてうれしいです)。

 

 

税理士試験は、公認会計士試験と違って挫折経験者が多い試験です。その挫折経験が、苦労人が多い中小企業の社長と話す上で役に立ちます。エリートのつまらない奴より気持ちがわかってくれて話しやすいと社長さんから言われるのです。

 

繰り返しになりますが、JOHN様は、ぜんぜん深刻ではありません。税理士業界ではごくごく普通です。敗者復活戦ができるのが税理士業界なのですから。

 

自分を『深刻だ』、『不幸だ』と思うネガティブな感情は、人に伝わり、面接等でマイナス評価になります。

 

<笑う門には福来る>

口角を上げて意図的に笑ってみてください。少し気持ち良くなりませんか。

夏は、会計事務所の採用シーズンです。早めに前向きに頑張れば、JOHN様を採用する事務所はきっと出てきますし、道は開けると思います。

 

 

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

高橋寿克様

質問内容がまとまっておらず、このようなひどい文章に対してご回答していただき、大変ありがたく思っております。

受験勉強が長期化し、周囲に相談する相手もほぼおらず、
藁にも縋る思いで、貴社のホームページの質問コーナーを見つけました。
今後の身の振り方全般に関するアドバイスありがとうございます。
何よりも、後半部分の先生の私の対するメッセージには、思わず涙がこぼれてしまいました。
みなさん挫折を経験しながら、強くて一人前の人間になっていくのですね。
様々なケースを交えて紹介していただき、大変参考になりました。

お忙しいなか、ご丁寧に対応いただき感謝いたします。
取り急ぎ、回答の御礼を申し上げます。

2018年8月5日 12:22 AM | JOHN

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