元公認会計士受験生の英語を生かした就職

2012年08月25日高橋

東京都千代田区・新宿区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

税理士事務所の定期採用がひと段落したところです。
今年の採用活動をして感じたのは、「結構、他の会計事務所のみなさんは長時間働いているな」
ということでした(だから転職活動をしているのかもしれませんが)。
内定の電話をする時間を遅らせても、まだ仕事中という方が多かった。
会計事務所の閑散期なのに大変ですね。
税理士法人TOTALも、資格者にはもっと頑張ってもらった方がいいのかもしれません。
(その分は給料で報いればいいわけですし)

 

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O様からのお問合せです。
内容
■年齢 26歳
■性別 男性
■資格 なし(公認会計士試験の勉強2年半)、TOEIC750
■職歴 中小メーカーの営業(1年未満)、他士業事務所のアルバイト(1年3か月)
■学歴 旧帝クラス
■居住地 大都市圏

 

私は会計士の短答試験合格まであと数%のところで2度失敗しました。
試験が難化傾向にある上に、受かっても年齢的に就職先がない可能性が高いこと、資格要件が厳しいこと、監査をしたいと思えなかったことから、会計士試験から撤退しました。
税理士を目指すのは、勉強を途中で辞めるのは悔しいし、これまで勉強してきたことを全て生かしたいと思うからです。それに、意思決定権者を相手にして、当事者意識をもって仕事ができる所が魅力的です。

 

私は受験に専念できるのがあと1年だけで、その後は働きながら受験する予定です。なので受験に突入する前に、将来をより具体的にイメージ・計画し、モチベーションを高く保ち続けたいと考えています。そこで、
11月に簿記1級の受験(管理会計の知識の証明のため)→1年目は簿・財・法を受験
→受験後すぐに勉強を始め、残り2科目を一通り勉強
→合格発表後に就職して、残りの科目を受験していく
と漠然と計画をしています。この計画についてご意見をいただきたいのですが、

 

Q. 1 税法科目の選択と受験順序について
やはり実務で役立ち、高く評価される法・所・相・消の中から選択したいとは思うのですが、決めかねています。
受験時の負担・就職・実務(使用頻度や独学の容易さ等)のことを考えたら、どれを選ぶべきでしょうか?それとも、いわゆるミニ税法科目から選ぶこともおススメなのでしょうか?
また、1年目に科目合格できないと後がない事を考えると、簿・財と共に受験するのは分量的に法人税以外のほうがいいのでしょうか?
ちなみに、会計士試験レベルですが法・所・消の勉強はしていました。

 

Q.2 就職について
最初に勤める事務所選びは重要だと聞きます。多くの方がそうでしょうが、多岐に渡る実務経験が積めて、勉強時間も確保でき、英語を使うチャンスもあるような事務所に就職し、最低でも5年は勤めたいと考えています。

 

 

(1)私の経歴を踏まえると、そういう事務所に就職するのは条件的に厳しいでしょうか?

(2)就職活動の開始時期ですが、1年目の合格発表後では遅いでしょうか?

(3)よく募集要項に「2科目以上合格」とありますが、2科目しか合格していなくても採用されることはあるのでしょうか?

 

A.1
公認会計士試験受験お疲れ様でした。ここ数年の試験制度の大幅な変更で受験生は大変だったろうと思います。
公認会計士受験生は、一般論で言うなら、税理士受験生より平均学力は高いと思います。ただ、若い一部の方を除くと思っているよりも母集団のレベル差はありません。また、税理士試験は公認会計士試験に比べて、キレよりも努力を要求するので学力差は決定的なアドバンテージにはなりません。
公認会計士受験生が、税理士試験へ転向してくれるのは、税理士事務所経営者としてはありがたいですが、油断せず、きちんと取り組んでほしいと思います。
税理士法人TOTALでも、元公認会計士試験受験生(短答式試験合格者を含む)が何人かおられますし、平均して優秀ですが、それでも1~2科目ずつじっくり進む感じです。
専門学校のパンフレット通りに2年で終わる人はほぼいません。
あえて言うなら、税理士試験をあまり甘く考えずに、しっかり取り組んでもらいたいと思います。

 

まず、簿記1級は税理士になるなら、不要です。
簿記論・財務諸表論受験生より、評価は低いです。もちろん、一般就職と両にらみだというなら止めませんが。
簿記論、財務諸表論に税法まで受験するのに、簿記1級で遠回りする余裕は普通ありません。
3科目専念なら、O様なら、分量は多いですが法人税で行ってもらいたい気がします。
1年間みっちり頑張れば、2科目~3科目合格できるでしょう。
2年目の税法は、法人税の出来しだいです。
先のことを具体的に考えて、計画的に進めるのは効率的ですし、良いことだと思います。ただ、実際には、認識と現実のズレを直しながら臨機応変に進むのが税理士試験だと思います(中小企業や会計事務所の経営にも通じるものがありますね)。

実際に税法を受験してみると、自分の税法受験の適性、税理士試験の難易度を肌で感じるはずです。
どれだけ余力があるかと、どんな税理士になりたいか(資産税・相続等をやりたいのか、法人中心で行くのかなど)
を勘案して決めていくことになります。ミニ税法でもいっこうに構いません。
試験合格後も一生勉強ですし、受験しなかった税法を含めて体系的に学ぶ必要があります。

 

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税理士法人TOTALでは、税理士(有資格者を含む)に受験しなかった税法の受講をすすめています。
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なお、書籍だけでの本当の「独学」はあまりお勧めできません、税法は、毎年改正があるため、過去の書籍が受験用としては必ずしも役に立ちません。
専門学校の利用をお勧めします。
通学が不都合な場合、セルフコントロールにたけている人なら、DVD、ネット配信の利用等は問題ありません。

 

A.2
(1)残念ながら、そういう会計事務所は存在しないかもしれません。
多岐に渡る実務経験が積めて、英語を使うチャンスもあるような事務所は、BIG4くらいしか、O様の居住地にはないような気がします。
東京だと、もう少し 英語を使う事務所も多いのですが(それでも圧倒的な少数派です)。

 

BIG4は、高給な分、平均して激務ですので、勉強時間をきちんと確保するのは(部署にもよりますが)難しいかもしれません。
英語をあきらめないなら、まずはBIG4を目指して(3科目合格なら、O様の学歴で可能だと思います)
時間は与えられるものではなく、作り出すものだという覚悟が必要です。

 

(2)就職活動の開始時期
BIG4を目指すなら、3科目合格以上が望ましいですし、その後の受験を考えても1年後の発表後がベストだと思います。
BIG4以外に行くなら、来年の試験直後か発表後かは、12月まで受験に専念したいかによります。

 

(3)募集要項の条件
税理士試験2科目以上合格とあれば、その通りだと思います。
BIG4ならこの辺が下限になるのでポテンシャルやコミュニケーション能力を見られます。
O様の場合、人物に問題がなければ当然選考対象になります。
もちろん、同じ条件なら、3科目以上合格者の方が採用されることが多いでしょう。

 

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なお、本件とは関係ありませんが、「簿記2級以上」という募集をしている事務所は
・女性のデータ入力要員を念頭に募集している
・受験生より、営業力のある未経験者が良いと思っている(受験は難しい)
・応募者が少ないので、とりあえず間口は広くしよう
などが多くみられます。
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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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