税理士業界の未来予想図

2013年03月19日高橋

東京都新宿区・千代田区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

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M様からのお問合せです。

内容
■年齢  20歳
■性別  男
■資格  簿記2級
■職歴  なし
■学歴  早慶上智
■会計事務所経験 なし
■居住地 首都圏(東京以外)

 

こんにちは、いつも歯切れの良いお話ありがとうございます。どのサイトよりもここが一番頼りになります。最近は毎週このサイトを拝見して更新してないかチェックするのが習慣になってます。
私は大学生2年です。将来、税理士になるために勉強しています。後学のためにお伺いしたいのですが、

 

Q1、自分たちの世代は定年が70歳になっていると思われるので、半世紀働き続けることになります。そこで、半世紀後まで税理士業界がどうゆう方向に動いていくのか、どのようなキャリアを積むのが無難なのか?

 

Q2、会計基準が世界中で統一されようとしている中、国どうしで互いの公認会計士を認め合ったりしています。日本の税務は複雑で外国人には難解だと言われていますが、税理士業界にもそのようなことは起こると思いますか?

税理士になれば一生その業界で働くことになります。国際化が進み、日本の繊維産業のように税理士業界がなってしまわないか気になります。
学生にはついていけない世界、肌で感じたことを聞けたら幸いです。


 

A.

このタイプの質問は久しぶりですね。3年前の
「税理士試験の難易度と公認会計士試験 以来かな。 

 

経営者は、時代の先を予測します。
短い方は目の前又は1年後のことだけですが、長い方は100年後の将来を予測するそうです。
残念ながら私には50年後の未来は予測できませんし、していません。
不連続なイノベーションが起きるので、具体的な予測の限界を超えると思っています。
(抽象的には100年後、数千年後、数千万年後も考えますが、予測というレベルではありません)
 

私の場合、30年先を予測するようにしています。
今採用した、30前後の若者の将来を背負うことになるのでその方の60歳くらいまで(最後の数年は惰性で逃げ切れます)は責任があると考えるからです。
(もちろん、その前に自分は引退していると思いますし、実際には辞めていく方が多いことは承知しています)
具体的な未来をカラーで予測しますし、その中に、税理士業界、自分たちの組織、そして一人一人のスタッフをイメージします。
どんなキャリアプランならより長く、より良い職業人生を営めるか、本人からすれば、大きなお世話かもしれませんが考え続けます。

コンピューター、ロボットの普及、情報化社会の進展は、人間の労働の質を大きく変えています。
ホワイトカラーと呼ばれていた仕事の多くは、ITにより生産性が飛躍的に向上し、単なる作業になってきており、ブルーカラー化が進み、
従来の、ブルーカラー、ホワイトカラーの分類は意味をなさなくなりつつあります。

上記リンク先の予測通り、弁護士業界に引き続き、会計士業界も大変ですし、公務員も本格的な賃下げ・天下り制限がはじまり、おいしい仕事ではなくなってきました。
このため文系は壊滅的ですが、理系も、研究者として大学に残れる方には定員がありごく一握りにの方に決まっていますからポスドク問題は起こるべくして起こっている現象です。
メーカー研究者も、電機業界の現状を見ると、業界が勝ち続けない限り、いずれ苦しくなるのは避けられません。

今、人気があるのは、医師、薬剤師、看護師です。規制業種で価格が国家による統制を受けるため、資格さえあれば、高給が約束されると信じられているからです。
特に医師は人気が高く、首都圏・中京圏以外では、成績が優秀な高校生の多くは、東大や地元旧帝大ではなく医学部をめざすようです。
東大理Ⅰ組の転向はもとより、文系しかない一橋大学の卒業生で社会人になってから医学部に再入学する人がかなりいるのは異常でしょう。
もちろん医師は 命に近い職業ですし、激務でよく頑張ってくれていると思いますが、日本のトップ頭脳の多くが、本来、 手先が器用だったり、一定の知識があればできる作業である(研究医以外の)医師の仕事に就くことは社会全体の生み出す付加価値を考えると国家的損失だと思います。
みんなが良いと思った時が、天井で、その後、下って行くのが職業の歴史的運命です。個人的には、薬剤師、看護師の順番に評価が下がると思っています。
薬剤師は、ネットでの薬品の販売が解禁されて規制が緩やかになればあっという間に効率化が進みます。看護師は外国人の参入も本格化するかもしれません(接客要素が強い分、看護師の方が評価は大きくは下がらないでしょう)。

医師は、高齢化の進展で、しばらくは需要の増加の方が大きいでしょうが、国家財政の制約がある以上、いずれ需要と供給が逆転すれば、規制業種であるという「強み」が「弱み」に転じることになります。
IT化の波も、今は数億円の医療機械による手術がやっと実用化されたレベルですが、
技術革新が進み、量産化されて本格的に普及すれば、コンピューター画面で拡大された画像を見ながら、手順を検索してロボットが手術をするようになり、
手先の器用さや専門知識の暗記は要らなくなり、手術も単純作業になり、作業効率は飛躍的に上昇しますし、通信回線をつなげば遠隔地医療の問題も解決します。
今の高校生が医師になるころまでがピークで、徐々に医師でさえも普通の職業になっていくような気がします。

チェスの世界チャンピオンがコンピューターに敗れて久しいですし、将棋も数年で名人よりコンピューターの方が強くなります。
(追記 将棋電脳戦でA級棋士がコンピューターに敗北しました)
金融・投資は、コンピューターのシステム開発の世界になりましたし、独創性が必要で知的分野と思われていた研究者ですら、コンピューターの上手な利用にとってかわられるかもしれません。
SF的にいうなら、極端な話、時代が進めば進むほど、芸能人、スポーツ選手、宗教、風俗関係以外は人間がやる必要がない仕事になって、人間はコンピューターによって管理された「動物園」にいる「猿」になっていくのでしょう。
(以前、NASAが予測した5000万年後の人類の姿は衝撃的でした)

技術・経験が必要とされ長時間労働に根差していた男性ホワイトカラー正社員の失業率があがり、20代サービス業では、男性と女性の賃金が逆転したのはその前兆にすぎません。

それでも将来、我々はますます物質的には豊かになり続けるでしょう。コンピューターの活用で生産性は上がり続けるのです。
ただ、それがわかればわかるほど、人間は精神の安定を何かに求めるようになるのかもしれません。
(先進国の若者に、高失業率、閉塞感が見られますよね)

 

A.1
税理士業界も
作業はIT化が進み、情報の共有・システム投資で有利な大手の会計事務所へのクライアントの集中は進むでしょう。
大規模な会計事務所が合従連衡を繰り返し、全国的には(BIG4以外で)4つ前後の大グループが決まっていきます。
現在の 大手が生き残るのか、中堅・若手が伸びるのか、その競争が行われているのです。

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税理士法人TOTALは、生き残りをかけて質量ともに「日本一の会計事務所」を目指しています。
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それ以外に、経理代行・個人確定申告等カテゴリーごとの大規模アウトソーサー、各地域ごとに地域ナンバーワン事務所、そして専門分野ごとにニッチなナンバーワンも生き残るでしょう。

 

ただ、技術ではかなわなくても中小企業の社長の相談相手としての税理士の需要はあり続けるので、
小規模経営者と直接向き合う個人税理士の需要は、なくならないと思います。

大規模事務所、アウトソーサー、エリアナンバー1、ブティック型、親身な個人事務所
このどれを目指すかによってキャリアプランは変わると思います。
特に決まっていないなら、教育・管理が比較的できている会計事務所にまずは勤務して、その後、必要に応じて違う税理士事務所に転職するのが無難だと思います。
 

ところで、税理士は、無資格職員がお客様を担当していますが、士業の中では異常です。

医師以外の職員が手術をしたり、助手が歯を治療するようなものです。司法書士なら、無資格者の立ち合いは懲戒事由です。税理士が余り始めており、登録者以外の担当を禁じる法律改正・運用変更が将来もないとは言い切れません。長い目で見ると税理士以外の担当者は減るでしょう。

今、重宝されている無資格担当者は将来は不要になる危険性があります。

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TOTALでは現在、総勢70名の内、26名が士業有資格者で、24名が資格試験の受験生です。外回り担当者には主婦を除き、資格の勉強をしてもらっています
 
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A.2
先日、安倍首相によるTPP加入の表明がありました。公認会計士資格の取り扱いによっては、税理士資格に影響があるかもしれません。
ただ、税理士資格の持つ意味が多少変わったとしても、社会に需要がある限り、税理士の仕事がなくなるとは思いません。
国家財政の基礎である税金にもっとも近い資格である税理士業務がなくなるとは思っていません。

 

IFRSは、導入のところで今ももたついていますが、会計基準の統一化は、大企業については進むでしょう。国際的な投資環境を整える必要があるからです。
ただ、中小企業の会計基準は、その国の歴史、産業、そして何より税制に根付くので、この統一化はそれほど進まないと思います。
誤解されている方も多いようですが、欧米ですら、大企業の会計基準と中小企業の会計基準は同一ではありません。
IFRSは国際的な大企業のための会計基準です。

大企業の会計基準は、投資という尺度が最も重要で、
中小企業の会計基準は簡便さ、そして納税の手段としての役割が重要になります。
 国家という枠組みが残り、税制が社会政策として利用されている現状では、、税制の国際的な統一は難しく、中小企業の会計基準の同一化には限界があると思います。

 

繊維産業の衰退は、運輸・通信の発達により最適地生産、国際分業体制が進んだことによる影響でしょう。
労働力の占める比率が高い軽工業は、
欧米先進国→戦前の日本やちょっと前の韓国のような中進国→東南アジアや中国
というように人件費の安い国に移っていきます。
アルミニウム製造は、電力が高いため、今や日本国内では一工場しか残っていません。
テレビ生産の縮小も避けられません。

ただ、経営者、資産家が日本にいる限り、税理士の仕事はなくなることはありません。
(国内の企業が停滞し、大資産家が海外に移住し、国内が減少傾向にはなるでしょうが)

ちょっと気合を入れて書きすぎましたね。

未来を予測することは仕事をしていくうえで大事です。
おそれるだけでは、何もはじまりません。
 一方で、未来を創っていくのが今を生きる私たちの仕事でもあるのです。っ未来はみらみらい 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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