税理士の将来性(税理士という仕事)

2015年05月06日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

GWも今日で終わりです。
会計事務所で働いている方は休み明けは3月決算でお忙しくなりますね。
受験生は、実力判定公開試験等のテスト期ですね。頑張ってください。

税理士法人TOTALでは、8月の試験前にも随時面接を行って9~10月入社の内定を出しています。今年は試験日程の都合で10月入社も増えるかもしれませんね。

早めのご応募をお待ちしています。

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milk様からのお問合せです。

■年齢 19歳
■性別 男
■資格 簿記2級
■職歴 なし
■学歴 地方国立大学2年生
■会計事務所経験 なし
■居住地 地方
■その他(特殊事情等) 簿記1級勉強中

税理士の職に興味があり勉強をしようか迷っているものです。

今日は先生に税理士の現状がどのようなものか、自分に向いているのかということでいくつか相談したくて問い合わせました。

Q.1 税理士の将来性ということ

クラウドシステムの導入などで税理士の需要などは徐々になくなってきているということをよく目にします。今後も税理士需要の低下は続くのでしょうか?

Q.2 税理士は企業内でも役に立てるか

私は最終的には経営企画部を目指しています。そこに至るまでに、企業内で優れた税務の知識をもち、企業の役に立つことでアピールは可能でしょうか?またアピールが無理だとしても企業内で税務に関しての人材として企業に貢献するチャンスはあるのでしょうか?

Q.3 就活に有利か

卒業までに何とか最低でも簿財のいずれかまたは両方を受かろうと考えてます。これらの税理士科目合格というのは、内定の決定打にならなくともほかの就活生よりも有利に働きますか?

Q.4 1年目3科目受験は無謀か?
来年の夏の試験で、今のところ簿財消の受験を考えてます。無謀でしょうか?

Q.5 税理士について
先生はこの業界を若者に自慢できる業界としてはっきり断言できますか?

Q.6 学生生活を賭すべき価値はあるか
税理士試験を受験するには相応の覚悟が必要と思います。遊びの時間をなるべく多く勉強に費やさないといけません。先生はそれほどの価値がこの試験にあると考えますか?できればその理由もお答えください。

質問は以上です。中には失礼な質問もございました、すいません。本気で税理士試験受験を考える最終段階になってきて、迷いが生じてしまったので長々と質問してしまいました。ご回答を今後に生かしたいと思ってますので、どうかお願いします。

A.1

「税理士は衰退産業だ。いずれなくなる」という話は、TACの「日本の会計人」を読むと30年以上も前から言われていました。

風説

(1)コンピューターが普及したら、会計業務はなくなる。
(2)税務ソフトが普及したら、税理士は不要だ。

実際

(1)自計化支援 又は アウトソーシング

(2)税務ソフトを使える会社は増えていません。

以前、手作業でやっていた事務仕事が、コンピューターに置き換わるだけです。

この10年で経理事務を行うスタッフ(社内の経理のおばちゃん)は最も減少した職種の一つです。会計事務所でも無資格作業者・チェック者の仕事は減るかもしれません。

今後は有資格者の仕事が中心になるでしょう。

それでも、今でも大手・中堅の会計事務所は当社を含めて、成長を続けています。

私はマネーフォワード社(「MFクラウド会計」)の顧問ですが、クラウド会計が普及したら、少子高齢化で作業要員が不足していた会計事務所は助かります。

主導的にそれを普及させるのは会計事務所の仕事になります。

ひまな零細事業者以外、その設定を自分で主体的にやりきれません。
クラウド会計は、freeeを含めて「全自動」でも何でもなく、初期設定と一定のメンテナンスが必要です。

また、「税務」については税務ソフトのような専門ソフトを購入するコスト、一定水準で税務の知識を持ち続けるコストより、
税理士という専門家に外注した方がはるかにコストの方が安くなります。

どの産業も、時代とともにその形を変えていきます。
社会的な役割を終えれば消滅する産業もありますが、
コンピューターを上手に使いこなしさえすれば、「税」という国家の根幹に係わる仕事がなくなることはないと思います。

むしろ、単なる作業ではなく、本来の知識や経験が生きる、専門職としての税理士業務で競うことになるのだと思います。

90%以上の企業が税理士のサービスを利用しています。
これは、他の士業と比較して際立って高い比率です。
普通の企業との関係でいえば、おそらく社労士で2割以下、弁護士は数%、行政書士・司法書士はスポット業務中心です。

税理士は、中小企業の社長の身近な相談相手、パートナーになっています。
税理士は、中小企業の知的サービスの根幹であり、プラットホームです。
社会保険労務士、行政書士、弁護士、司法書士といったサービスの入り口でもあります。

税理士は、お客様のお金に関する情報をすべて持っています。お客様との信頼関係をきちんと築いていけば、税理士の将来は明るいと思います。

今後、士業は総合事務所化は進むでしょう。その中で中心になるのは、広い顧客基盤を持った税理士の可能性が高いような気がします。

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私は、総合士業事務所を当初より志向して「TOTAL」という名前を選びました。

税理士法人TOTALは多店舗展開を進めています。

今年、社会保険労務士法人TOTALを設立しました。
行政書士・司法書士も、できれば今年中に法人化したいと思っています。

会計士は3名体制ですが、監査法人を作るのはまだまだ先です。

TOTAL グループでは、総合士業事務所化を推進しており、
サービス業であり、かつ法律の専門家であることを理解し、

~あなた(お客様)と共に歩み、あなたと共に成長したい~

という志を同じく出来る弁護士を募集中です。

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A.2

(1)税理士と経営企画

「税理士」が「経営企画部」に結びつくかというと、いわゆる大企業ならNOだと思います。

経営企画部は、社長の近くで経営計画を作成し、経営資源の割り振り等その実施のためのマネジメントの一部を請け負うので、論理的思考をはじめとする優秀な頭脳、挑戦的(社長は未来に対して創造的・挑戦的です)な思考パターン、献身的な姿勢、長時間労働に耐えられる体力等が必要でしょう。社内業務も精通している必要もあるので、社内で選抜していくのが普通です。結果として大企業の場合は東大をはじめとした高学歴者が多くなります。
彼らは、会計、計数管理の技術を、ツールとして学んでいるのにすぎません。会計技術等があるから選抜されたのではありません。若いうちに選抜されるとジョブローテーションの一部として経理部に在籍されることはあるかもしれません。その際に、税理士資格や会計士資格を取ってしまう方もおられるとは思います。
税理士や会計士資格が評価されるわけではありません。

ベンチャー企業や中小・中堅企業なら、人材の層が薄いので、「税理士」は数字が見れてそこそこ優秀な人材という評価はもらえると思います。
また、投資や資本政策が重要な会社なら、デュー・デリやM&A経験者は評価されるし、場合によっては経営企画→投資先の社長というようなケースもあります。ただ、税理士よりは、公認会計士や戦略コンサルタント出身者の方が有利でしょう。
このタイプと思われるのは、ライブドア全盛期に堀江貴文社長に仕えたM元税理士です。

(2)企業内税理士

税理士事務所にとっては、「経理」は「税務」申告のための前処理になります。

一般企業では、「税務」は、「経理」処理するために必要な知識です。

このため、経理部なら一定の評価はされると思います。中小企業なら即戦力です。
大企業では、BIG4で鍛えられて上場企業固有の経理処理や国際税務を学んでいればアピールできるでしょう。BIG4の出口として上場企業の経理に進む方は多くいます。

A.3
まじめに勉強していたんだなあ という程度の評価だと思います。
企業は、会社によって違いはありますが、新卒に求めるのは論理的思考力やコミュニケーション能力、素直さが中心です。

しいて言えば、せっかくだから、営業よりは経理課に配属しようかという配慮はされるかもしれません。

A.4
私は、1年目は受験専念で5科目受験し、結果は3科目合格でした。26歳くらいでしたが、20歳前後なら1年5科目合格も可能だろうと思ったものです(念のため言いますが、この1年はかなり本気で勉強しました。もっともその後は勉強に身が入らず、時間がかかりましたが)。
実際、1年で3科目簿財消の合格程度なら過去にも身の回りにもそれなりにいます。
もっともmilk様は、国立大学の学生なので、学校の授業に当てなくてはいけない時間次第だと思います。

A.5

税理士は、

地域のベンチャー起業家、経営者、資産家、医師といった
お客様に感謝され、
お客様の成長を一緒に喜べる
やりがいのある仕事です。

自分の心にうそをついて仕事をしたり
無理にセールスする必要もない。
社会的にも「先生」として 一定の評価をしてもらえる。

正しいことを正しくすすめて
お客様に、
「ありがとう」
と感謝される。

私はこの仕事が大好きです。

仕事は楽しいですよ。

職業に貴賤も優劣もありません。
仕事を自慢できるか、自慢したいかはその人の求める価値観次第です。

開成高校時代は、官僚から政治家になろう、国家の役に立とうと思っていました。

学生時代は、司法試験を受けていましたし、そのまま受けていたら弁護士になっていたでしょう。

社会に出て暇な時期にした1年ちょっとの株式投資では数千万円利益を上げれました。続けていたら今いくらくらいの財産になっていたのでしょうか。

(試算したら100億円くらいになると思っていました)
実際には忙しくて、そして意味を感じられなくなってやっていませんが。

税理士は、本業をそこそこにして、株式投資や不動産投資で成功している方も多いです。

少なくとも、私は税理士になったことを後悔はしていません。

「税理士」は私にとって素晴らしい仕事だとは断言できます。

一人でも多くの方に、素晴らしい会計人になってもらいたいと思っています。

A.6

税理士試験は、新卒で入社した会社にうまく合わなかった場合や、そもそも社会に出るのが遅れた場合でも、アラサーくらいまでのスタートで間に合い、働きながらでも勉強が続けられる懐の深い資格です
(この辺が事実上年齢制限のある公認会計士や、受験専念が必須で求められる他の大型資格との違いです)

その税理士試験を学生時代に受験するとしたら

(1)大学受験の失敗のリベンジ
大学受験がうまくいかず、このまま一般就職では、学歴・コミュニケーション能力では逆転できない。

資格を取ることによって社会的評価を上げ、経済的にも成功しようという場合。

ちなみに税理士の学歴は、MARCH・日東駒専卒がボリュームゾーンです。

(2)営業能力や組織適性に欠ける場合

一般企業の文系就職の場合、ジョブローテーションとして若いうちは「営業」にまわされることが多いと思います。そこで一定の結果を出さないと評価されませんし、社内に居場所がなくなることもあり得ます。

組織としてチームで仕事をしますので、スタンドプレーは許されませんし、一匹狼は評価されません。

会計事務所も、もちろん一定のコミュニケーション能力・営業力は必要ですが、専門職のため一般企業に比べればだいぶゆるくなっています。

(3)お客様との長期の信頼関係に魅力を感じる場合

ほとんどの企業は、(建前かもしれませんが)「お客様重視」と言います。

ただ、実際には営利企業である以上、社員は営業ノルマはあるかもしれませんし、短期の成績で常に評価されます。

お客様の利益と会社の利益がぶつかる場面では、会社の利益を押し付けることもあります。
(これを嫌って、地方銀行をはじめとする金融マンや、営業マンが税理士業界に転職するのです)

税理士は、顧問契約というお客様との長期安定契約に基づいて仕事をします。開業から廃業まで30年、又は親子2代にわたってというケースも珍しくありません。
お客さまとは基本的にはベクトルが一致し、お客様の成長は顧問料の増加を通じて会計事務所の利益にもなります。

このため、技術や経験を積んでいくと精神的には楽な仕事と言えます。

学生時代に2~3科目合格していれば、新卒での就職が合わなかった場合に有力な転職の選択肢になります。

この他、地方の学生固有の問題として、

地元に残りたいか、その場合に地域によってはどれだけの受け皿となる産業があるかという問題もあります。
公務員、医師、教師、地銀、建設(公共事業)、農業、観光くらいしかめぼしい産業がない地方もあります。

税理士は、地方を含む日本中にある、安定した仕事です。
もちろん、地方経済の衰退の影響を受けますが、それ以上に地方には若い優秀な税理士が不足しているのもまた事実です。

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そういえば、今月、地方で会計事務所を開きたいというスタッフが入社してくれました。

その他にも、大阪、京都、名古屋、福島、札幌に帰りたいというスタッフがいます。

税理士法人TOTALの場合、業務の標準化が進み、営業の仕組みも存在するので、出店はそんなに難しくないかもしれません。

数年後には地方の本部を立ち上げて彼らを支援したいと思っています。

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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