地方公務員 アラフォーの税理士事務所への就職
2023年01月29日/ 高橋
税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。
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SN様からのご質問です。
■性別 男性
■資格 簿記2級
現在、簿記1級・全経上級勉強中
■職歴 地方公務員、事務職、14年勤務
■学歴 旧帝大大学院卒(理系)
■会計事務所経験 なし
■居住地 地方都市
■その他(特殊事情等)
高橋先生はじめまして。自分の将来について悩み、税理士試験や転
いつも税理士試験や税理士業界の実情を踏まえたアドバイスをいた
将来について悩んでいるのですが、身近に相談できる人がいないた
自分の状況・考えを記載していたら、長文になってしまいました。
【税理士を希望する理由等】
30代後半になり子供が生まれたことをきっかけに自分の人生を考
税理士は、目に見えるお客様のために仕事ができるところと、一緒
家庭のことも考え、このまま現職でいることも考えましたが、自分
【今後の予定】
39歳、令和5年前半までに簿記1級・全経上級いずれかを取得
40歳〜42歳、3年間で3科目(簿財消の予定)合格を目指す。
43歳、3科目合格の状態で会計事務所へ転職
44歳〜50歳、会計事務所で仕事を覚えつつ、法人税とミニ税法
51歳〜53歳、独立開業
※勉強時間は平日・休日ともに1日当たり1.5時間程度は確保で
※大学院免除はお金がかかるため、考えていません。年収を下げる
【会計事務所の規模等】
転職先は、独立後に役立つ経験を多く積みたいと考えているため、
また、事務所への利益貢献をしてから独立したいと思っていますの
【家庭の状況】
妻、子2人(0歳と3歳)
妻はフルタイム勤務(現在は育休中)
【現職での状況】
庁内の内部管理部門で予算等の調整業務が多かったです。省庁への
現職でも係長職として部下を数名持ち、管理の難しさを感じている
また、年収は600万円程度です。
以上、自分の状況・考えを長々とさせていただきましたが、具体的
Q.1
転職の時期について
未経験での転職ですので、家庭・周囲を納得させるためと、転職先
Q.2
以前の質問・回答の中で、金融機関出身の40歳の方に、〝従業員
Q.3
自分の市場価値を考えてみましたが、現状では会計事務所で活かせ
その他には職場内の異動で中小企業支援や医療系等の所属に行けれ
以上、3点よろしくお願いします。
税理士試験の勉強も開始できていない状態で自分の想定の話を長々
高橋先生のご厚意に甘えてしまって申し訳ありませんが、アドバイ
A.1
正社員として雇ってもらえるとかどうかは SN 様がどこまで生活とのバランスで希望年収を下げることを許容できるかによると思います。夫婦共働きで妻の協力が得られるなら大きな問題ではないかもしれません。
転職のタイミングですがもう少し早くても良いように思います。簿記1級又は全経上級のいずれかは不要だと思います。以前は理系の方は特に税理士試験の受験資格が簿記1級等が必要とされたことがありますが、税理士法の改正で現在ではもう簿記論、財務諸表論については受験資格は特に必要とされていません。かなり23年度の税理士試験の受験資格は大幅に緩和されました(令和4年度税制改正に伴う税理士の一部改正)。下記を参考に再度確認してみてください。
すぐにでも簿記論と財務諸表論を同時に受験することをお勧めします。この二科目は相互に関連することも多く同時に受験する方が効率的に知識を吸収することが可能です。社会科学系の科目を一つでも履修していれば、翌年にはそこに消費税法等を追加して受験することが可能でしょう。税理士試験は暗記力が物を言う場面もあるのでできるだけ早い段階で、合格を目指すことが望ましいと思います。税法科目がほぼ合格水準に達したとしたらその年の夏にでも合格の結果を待たずに転職活動をすることをお勧めします。
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以前は高卒の方や理系出身者は、簿記1級を目指したり、放送大学等で法学・経済学を履修する必要がありました。税理士受験生が減ってきたため、不合理な制度を廃止したのでしょう。受験生の増加に期待したいと思います。
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中小の会計事務所が金融機関出身者を敬遠する傾向があるという話は、①希望年収とのミスマッチや②会計事務所の標準化が甘いと起きる事象だと思います。
40代になるとそれまでの職歴で一定の給与をもらっており、家庭の事情やプライドによって、あまり希望給与を下げづらくなっている人も多いでしょう。会計事務所は超過利潤が多い業界ではないので、中小会計事務所は、未経験者には実力に応じてしか給与は支払いにくいでしょう(中堅以上の会計事務所の場合、人に若干の戦略的な投資をすることもあります)。
公務員は、法令に基づく行政を行うことが求められるので、かなりきっちりと標準化がなされています。中小会計事務所は一般的には標準化が中途半端なことも多いので、そこで所長から見ると扱いづらいと思う人もいるような気がします。
もっとも、これは規模に関わらない面もあるし、会計事務所、税理士法人によって違うのかもしれません。
A.3
A.2でも書いたように 地方公務員の業務は、 前例主義に基づき法令をきちんと調べて間違いがない行政を行うことが求められます。 税理士も租税法律主義に基づき法令をきちんと読む力が本来は重要なのですが、その能力は税理士試験の勉強ではあまり重視されないので、税理士事務所ではそれができるスタッフは決して多いとは言えません。税理士業務をする上で特にコンプライアンスにうるさい中堅以上の税理士法人では強みになると思います。
実際、税理士法人TOTALでは元公務員のスタッフもおられますが、皆さん長文の条文を読む力がしっかりしています。公務員だと当たり前だと感じるスキルだと思いますが、これは、SN様ご自身が気がついていない強みなのかもしれません。 もちろんご自身が気づいておられるように書類をきちんと作成できるということも強みになります。
中小企業支援や医療系等に所属できれば確かに価値があると思います。それ以外でしいて言うならば SN 様が将来やりたい業務に近い人と交わる可能性が高い部門でしょう。また財務や徴収・徴税(特に住民税、事業税、固定資産税等)に関わる部門もいいかもしれません。ただ、希望をしてもその通りに人事が進むかどうかわからないのでそれにこだわりすぎる必要はないでしょう。 どんな仕事でも目の前の仕事に一生懸命取り組んで より効率的に付加価値を上げられるかどうかを考えることは、将来の税理士業務をする上できっと役に立つでしょう。
実は公務員出身者で一番問題となるのは、そもそも税理士に求められるのが税金の適切な申告ではなく、お客様に寄り添っていかにお客様の成長を手助けできるかという点だと思います。発想自体をかなり転換しなくてはいけないのですが、公務員の方は当初は戸惑うことも多いでしょう。 お客様の仕事そのもの・その構造をきちんと理解する必要があります。そのためには日常からアンテナをきちんと張り巡らせて新聞やニュースを見る等、情報収集に励む必要があるのです。仕事自体は、お客様にも直接感謝される場面も多くかなり面白いし、モチベーションも高い状態を続けられるでしょう。
それゆえに税理士試験との両立に悩むことになります。仕事をきちんとするということはその分だけ試験に頭脳・時間を余らせることが難しくなるのでその場合には最終的には大学院に進むことも再考することもあるかもしれません。
もちろん、それまでにある程度結果を残していれば、その会計事務所で負担してもらうこともあり得ると思います。それが無理であれば転職も視野に入れる必要が出てきます。最初からそれが可能である事務所を選べればそれに越したことはないでしょう。SN 様のお近くにそういう事務所があることを祈念いたします。
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私は、仕事が面白く 好き過ぎて、最後にどうしても仕事と受験の両立ができなかったので、会計事務所を辞めて受験に専念することとなりました。
このため、税理士法人TOTALでは、一定の人には税理士法人で学費負担をして大学院進学を進めることが多くなっています。
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高橋先生
業務ご多忙の中、ご返信いただきありがとうございました。
質問への回答以上に、税理士になった後や現職での仕事の取り組み方など、具体的なアドバイスをいただきました。大変参考になります。何度も読み返し、自分の将来について再考させていただきました。今後もたまに読み返したいと思います。
ご返信の中で、なるべく早く転職をした方が良いというご指摘をいただきました。税理士試験は暗記力が物をいう場合もあるのでできるだけ早くということでしたが、転職はどのような理由からか念のため確認させてください。
当方の案は43歳で転職のところ、高橋先生にご提案いただいた案ですと、40歳又は41歳の夏には転職活動をすることができます。不要なステップ(簿記1級又は全経上級)はなくすのはごもっともだと思いますが、3科目目(消費税法)の合格を待つよりも3科目目(消費税法)が合格水準であれば、受験後の夏にすぐにでも転職活動をした方が良いということは、どのような理由からでしょうか。
年齢による転職の困難さを少しでも軽減するため、税務・会計のプロフェッショナルになるためになるべく早く会計事務所で経験を詰むため、などに思い至りましたが、高橋先生が懸念されたことはどのようなことなのかをもう少し教えていただけませんでしょうか。
細かな点で恐縮ですが、念のため確認させてください。
2023年1月31日 12:17 PM | SN