地方銀行から税理士事務所への転職
2015年07月19日/ 高橋
税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。
税理士試験までいよいよ1か月を切ってきました。
税理士法人TOTALの税理士試験受験生の支援は
(1)試験休み
正社員は6日あります。受検日当日も別途休みです。有給の消化と合わせて7月に入ると休みを計画的に取る受験生が増えてきました。
(2)、専門学校の学費と税理士試験の受験費用を全額負担
1科目のみ20万円までですが
(3)科目手当、資格手当
(4)大学院進学
働きながら大学院進学も可能です。
大学院の学費は原則自費ですが、一部の幹部を選抜して事務所全額負担も行っています。
(5)受験スタッフ
勉強が進んでいない方用には、「受験スタッフ」というパート枠も設けています。
ここまで、資格取得をサポートする税理士法人はあまりないかもしれません。
有資格者と無資格者では見える景色も違います。「責任」と「自覚」が生まれます。
せっかく士業の業界に入ったなら、なんとかして、多くの方に早めに資格を取ってもらいたいと思っています。
(社会保険労務士についても同様のサポートを行っています)
でも、アメばかりではありません。
税理士法人TOTALの給与水準は、受験生時代は残念ながら業界の普通レベルです。
(本当は、学費サポートと休みを金銭換算すると年額50万円近い給与アップに匹敵するはずですが)
学費サポートは、2年連続C判定以下になると翌年は受けられません。
勉強しないと、男性は少し言い訳しないといけなくなって居づらくなるかもしれませんね。
(女性は、家庭と仕事の両立に頑張ってくれています。無理に受験は勧めていません)
今年もたくさんの合格者が出ることを期待しています。
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ラーメン大好き様からのお問合せです。
■年齢 28歳
■性別 男
■資格 高校教員免許(数学)、FP2級
銀行業務検定多数、珠算、税理士未受験
■職歴 地方銀行
■学歴 早慶
■会計事務所経験 なし
■居住地 地方都市
高橋先生 いつもブログを楽しく拝見させていただいています。
私は現在地方銀行に勤めています。個人・法人融資を中心に仕事に携わってきており、最近銀行員としての将来像よりも税理士の方に自分の将来性があるように感じています。その理由としては私はより良い相談相手となるべく、独学で中小企業診断士資格取得の勉強やMBA取得に向けオンラインで大学院に通っています。自己啓発に励む理由については経営者により良いアドバイスをしたい、経営者の意思決定はなぜそのようになるのかロジックで捉えたいといった要因が強くあるからです。しかし、そこに融資が絡んでくるとどうしても、うまくいかないこともあることや、アドバイスをしても経営者からは税理士、会計士に聞いてみるよと言われることが少なくありません。
そこで税理士は普段の会計事務だけではなく、提案・アドバイス等でより身近に企業へのアドバイスができるのではないかと考え、転職を考え始めています。
そこで質問です。
Q.1
私は目的をもてない勉強は苦手ですが、誰かのため、目的が明確化している勉強は時間を惜しまずできる自信があります。しかし、税理士の科目合格もない中で税理士事務所への転職はどうなのかと自問自答しており、今回ご質問をさせていただいた次第です。
Q.2
銀行という安定職を辞めるという不安もあります。銀行での経験も税理士事務所ではどの程度役立つものなのかもご意見伺わせていただければと思っています。
また、余談ですが私の父は元税務署職員であり、定年まで勤め上げました。税理士資格も有していますので、税理士試験の難しさ、大変さもわかっています。自分の中にまだ悩みが消えていない中では銀行を辞めるといっても止められることは間違いないと思い、高橋先生の経験及び考えを少しでもお聞かせいただけれと思います。よろしくお願いします。
A.1
ありがたいことに、「社長」の相談相手は、各種アンケートで「税理士」がダントツの一位になっています。
社長が税理士に求めるのは、「安い顧問料」を抜いて、「適切な提案」という統計もあります。
銀行には見せないような資料も見せてもらえますし、継続的な信頼関係もある、仕事だけでなく家庭・プライベートな相談まで、「実は」という相談を早くにいただける、「税理士」は良い仕事です。
私は、税理士であると同時に「経営者」でもあるので、お客様の経営について一緒に考えます。意見もします。
「先生の意見を参考にしてがんばったらうまくいった(いかなかった)」
「先生に言われて悔しかったからがんばったよ」
税理士の意見がときとしてお客様の業績に影響することさえあります。
私の好きな映画「ショーシャンクの空に」に出ている モーガン・フリーマンは、
「CMに自分が出るとみんなが信頼してその商品を買ってしまうから出ない」
そうです。
お客様に信頼していただけるのはうれしいのですが、税理士である私の言葉を、そのまま(無批判に)受け入れてしまわれるのではないか…
責任はもちろんですが、怖さを感じることもあります。
本業は社長さんが一番知っています。私の話はしょせんは現場を知らない外部の一経営者の意見に過ぎません。きちんと考えていただくようにお話ししています。
いずれにせよ社長の経営相談の相手になれない税理士は、淘汰されていくのかもしれません。
税理士の科目合格もない中で税理士事務所への転職は私は反対です。
税理士試験は、おっしゃる通り大変です。一定以上の学力を持っている方にとっては難関というより、記憶力と速記力の試験で、飽きが来る、努力を続ける気力がなくなるというのが問題です。
勉強と仕事の両立がしやすい税理士事務所は決して多くありません。職場はあくまでも仕事をするところですし、士業の業界は、大企業とは違って中小企業しかありませんから社員教育にお金をかける余裕があるわけではありません。
ゼロ科目での転職では、ラーメン大好き様がいかに学歴・職歴が優れていても選択の余地は多くありません。地方都市ならなおさらです。
おすすめは
(1)税理士試験3科目合格まで1~2年受験に専念する。
3科目合格すれば、官報合格が具体的にイメージがわき、断念の危険はだいぶ減ります。
または
(2)現職で税理士試験を受けて2~3科目合格する
現職がそれほど忙しくなければ可能です。
税理士法人TOTALでは、地方銀行出身の税理士は3名です。そのうち(1)1名は専念して3科目合格後、(2)残り2名は、働きながら科目合格をして、転職してきてくれました。
A.2
銀行での経験は抜群に税理士の仕事に役立ちます。
税理士法人TOTALには銀行出身の税理士は、地方銀行3名、都市銀行1名、信託銀行1名の計5名います。その他にも女性バックオフィススタッフが4名います。
銀行出身者が税理士に向いているのは、
(1)人柄のチェックがすんでいる
銀行は、お金を扱う仕事なので誠実で信頼できる人、お客様ときちんとコミュニケーションが取れる人、計算力があり安定して働ける人を求めます。
お客様が、税理士に求める人物像とほぼ一致します。
(2)融資の経験が生きる
自己資金が不足する起業家にとって融資は、起業できるかどうか、またその内容を決めてしまう大事な事柄になります。
残念ながら、融資の仕組みを学ぶために金融検査マニュアル別冊を読みこんだり、事業計画書の審査ポイントがわかったり、決算書の企業格付けがわかる税理士は多くありません。
銀行の意思決定システム、稟議や支店の権限、スコアリング、制度融資・保証協会との関係について銀行の内側から知っているのは大きな強みです。
特に、営業をしてきた多くの地方銀行出身者は、
お客様が中小企業経営者、資産家、医師であり 税理士のお客様にぴったり一致し、もっとも税理士に向いていると言っていいと思います。
税理士法人TOTALでも、税理士になることを意識して新卒では地方銀行に就職したスタッフもいます。
ラーメン大好き様は、理数系の頭脳で合理的な思考をなさる方のようですね。
これは税理士として先回りして物事を考える上では役に立ちます。ビジネスの基本だと思いますが、意外なことに得意な方は少ないです。
しいて心配な点をさがすとしたら、中小企業の経営は、中小企業診断士試験やMBAで学ぶこととは違って、あまり論理的・合理的でないことがあります。
義理・人情・浪花節の世界です。感情的・情緒的で偶然に左右されると感じられるかもしれません。それもまた人間的な側面なのですが。
銀行出身者は会計業界には多くおられます。経験が生きることはもちろんですが、営業ノルマがなく無理に融資や金融商品を売る必要がなく、お客様とベクトルが一致し、長期的な信頼関係が築けて精神的に楽で感謝されるというのが大きいように思います。
お父様の件は、案ずるよりも産むがやすしかもしれませんよ。
本気で 税理士になりたいのがわかれば、自分と同じ道を息子が歩むのを、心配しつつもうれしく思うような気がします。
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