営業から会計事務所への転職~税理士試験受験生の減少

2018年07月21日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

8月7日~9日の税理士試験 本番が近づいてきています。

この時期は税理士法人TOTALでも、受験生は試験休み(試験日の他に6日)や年次有休休暇の消化に入ります。

7月から約1か月、オフィスを空けるスタッフも増え、代わりに受験しないスタッフが支えてくれています。

暑い日が続いており、私はかなりバテ気味ですが、
受験生のみなさんには体調管理に気を付けて頑張ってもらいたいと思います。

税理士試験が終われば、税理士業界最大の就職シーズン、熱い夏!がはじまります。
税理士法人TOTALでもみなさんのご応募をお待ちしています。

 

「営業から会計事務所への転職~税理士試験受験生の減少」

 

I様からのご質問です。

■年齢 28歳
■性別 男性
■資格 簿記2級 FP1級
■職歴 生命保険代理店法人営業 転職なし
■学歴 日東駒専よりちょっと下
■会計事務所経験 なし
■居住地 東京
はじめまして。
これから転職するかどうか相談です。

 

まず現状についてですが、大学を卒業してからいまの生命保険代理店にて法人営業を続けております。(6年目)

 

学生の時に税理士試験を受験しましたが、1科目も受からず受験専念はリスクだと考えて法人営業を経験できる今の会社を選びました。

 

ある程度経験を積んだところで、再度挑戦しようと昨年から簿記論を勉強しており、今年受験をします。
いまの会社は営業ではありますが、定時に帰り学校へも通えています。
しかし、もうすぐ30歳になるので未経験の業界へいくなら20代のうちだと聞いているので、転職を検討してます。

 

そこで質問です。
Q.1
科目合格が無い状態で転職すべきか否か、いつ転職すべきか

 

 

Q.2
転職するなら会計事務所、事業会社の経理、会計系のコンサルティングファームなどどんな会社がいいのか

懸念点としては
・もし3回ほどの受験で1科目も受からなかったら諦める→次のキャリアをどうするか
・未経験の場合給料が下がる→営業経験を生かしてコンサルティングファームなどで経験を積んだほうがいいのか、その方がダメだった場合でも経験が生きるのではないか

 

正直いまの仕事は、税理士受験に関わらず、変えたいと思ってます。

あまり考えが上手くまとまらず、分かりづらい内容ですみません。
ご教示頂けますと幸いです。

 

宜しくお願い致します。

 

A.1

アラサーにならんとする年齢や、過去の受験の結果を踏まえると科目合格のない状態で働くのは反対です。

転職時期は、退職は今年の試験後、その後は受験に専念して
再就職は来年夏に2科目合格の目途が立てばその時点で、そうでなければ再来年の試験後にするのをお勧めします。

 

以前は3科目合格後に就職し、その後、働いたり再度受験に専念したりして官報合格(5科目合格)を目指すのが一般的でしたが、

最近は簿記論、財務諸表論に合格したら就職し、働きながら消費税法を受験し、無理そうならミニ税法(国税徴収法等)で3科目をそろえ、働きながら大学院に通学し2科目免除を狙うのが主流です。

昨年の税理士試験では、受験生の3分の2以上(68.6%)、科目合格者に至っては8割近く(77.3%)が、簿記論、財務諸表論、消費税法で占められており、

選択科目である消費税法の受験者数・合格者数は、必須科目であるはずの法人税法と所得税法の合計を上回るという逆転現象も起きています。

 

 

I様は保険代理店の営業を6年続けられたとのこと、素晴らしいですね。

税理士業界は、そもそも営業に自信がなく、資格があればなんとかなると思って入ってくる方が多いですし(私もそうでした)、

営業経験が5年を超える方はかなり少数派です。

最近では地方銀行が行員に金融商品をノルマをかけて売らせているため、入行2年以内の方の転職も女性を中心に税理士法人TOTALでも増えています。

会計事務所業界では、営業出身者は少数のため重宝されます。

その中でも法人営業の経験は会計事務所の外回り(巡回監査)にとっては即戦力です。

 

 

A.2

他の業界と、どちらが良いかを会計事務所経営者の私が言うのは適切ではないし、適任でもないでしょう。他業界のことは私の専門ではない点に留意して下記をお読みください。

(1)事業会社の経理は、
上場会社・上場子会社なら、経理は新卒採用の中から(営業向きではない)地味でまじめなタイプが選ばれて専門職になります。男性は一時的なジョブローテーションのことも多いでしょう。
女性の派遣社員はともかく、男性正社員は中途採用ではあまり募集しないですし、募集する場合の採用基準は、新卒とほぼ同程度のポテンシャル(一般的にはバック業務にはMARCHレベル以上の学歴)か即戦力になれる職務経験や簿記1級くらいを求められることが多いようです。

人手不足の現状では、地方国立大学やMARCHレベルの有資格者・科目持ちの実務経験者は転職が容易ですが、日東駒専以下の科目合格者では苦戦している人も多くなっています。

(日系大企業の人事出身者にお聞きすると、この辺の偏差値での区分けはかなり厳密のようです)

わざわざ勉強して苦労して新卒時に入れた企業以下の企業に入社することになる確率が高いので、一般論としては既卒で上場経理に転職するのは個人的にはお勧めしかねます。

 

 

中小・零細企業は、経理はアウトソースが今後ますます増えるでしょうし、そもそも未経験の男性正社員を雇わないところも多いのではないでしょうか。
もっとも、このタイプは社内に会計・総務のリソースが足りないため、会計事務所経験者にとっては、学歴が足りなかったり、税理士試験が進まなくても転職が容易な企業になります。会社によって当たりはずれはありますが、経理・財務担当役員ひいては実質№2になるケースも見受けられます。会計事務所に入ってからキャリアチェンジをする場合には有力な選択肢になります。

 

 

(2)会計系のコンサルティングファームは幅が広くなっています。
コンサルタントは、人を売る側面が強いので、
大手等でしっかりしているところは、
コミュニケーション能力に加えて、地頭の良さや学歴をもとめています。
外資系などは、日系大手以上に学歴重視と言われています。入社試験で数学的、思考的問題を出すところもあります。

 

逆に、コミュニケーション能力だけで採用している中小・中堅コンサルタント会社もあります。そういうファームでは、営業力が重視されます。ホームページを見れば、熱意、楽しさ、明るさを打ち出していることが多いでしょう。
保険代理店に勤務なさっているのでお分かりいただけると思いますが、
結果を出せば楽しいし、そうでなければ苦しい ノリのいい営業会社のイメージです。給料も営業成績によります。このタイプの会社は営業マンとしては成長できます。弱点は、営業以外の汎用的な技術は磨かれないし、専門的な知識がそれほど増えない点でしょうか。

 

最後に

(3)会計事務所

税理士試験の受験生は、この5年で30%減少し、今年も7.9%減少しました。

人不足で労働市場が売り手市場になると士業は人気がなくなります。ネットの弊害で、情報が一方に偏る傾向があり、各士業は将来性がないのではないかと疑われたりもしています(少なくとも、弁護士と税理士は今や空前の売り手市場なのに)。
実際には、どの仕事もAIやフィンテックを使いこなす側になればいいだけで、作業から解放されて、専門知識やコミュニケーションを生かし、本来業務をしやすくなるでしょう。

若年男性の税理士試験受験生の減少が激しいのでより希少性が高く、もともと売り手の就職市場でもとくに引っ張りだこになっています。

会計事務所業界は、転職希望者を歓迎します。

3回受験して1科目も受からなかったらどうしようか考えるよりは、今度こそ何が何でも合格するのだと工夫や努力をすべきでしょう。

(そこまでやってだめなら資格・専門職に向いていないということです。その場合の転職は営業会社で営業力をさらに磨くのが現実的選択になるのでしょう)

会計事務所は営業ができるというだけで差別化が可能な業界です。売れる税理士を目指してみませんか。

 

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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