税理士と会社経営(副業)

2015年03月08日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

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妊娠や出産を理由とした職場の嫌がらせ
「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」に悩む女性への支援に取り組む
マタハラNet の創設者小酒部さやかさんが、アメリカ国務省の
「世界の勇気ある女性賞」に日本人女性として初めて選ばれたそうです。

 

妊娠によって、本人の生産性が下がるだけでなく補充者を用意する必要があり、会社には経済的な損失が発生します。もちろんまわりのスタッフも負荷が上がります。難しいですが、少子高齢化を止めるため、日本の明るい将来を築くために越えるべき課題です。

 

実際には損得ではないのかもしれません。
何より、子供はかわいいし、子育ては人生を2度楽しめます。
知らないうちに親を人として育ててくれますし。

 

 
今週、スタッフから妊娠の報告をいただきました。
おめでとうございます!

 

税理士法人TOTALは、20代~30代のスタッフがたくさんいます。このため、出産が続きます。
これまで育休取得者だけでも30人近くになります。

 

まわりのスタッフも慣れたもので、みんなで助け合っています。

 

最近では、子供を産むため、子育てするために税理士法人TOTALに入ってきてくれる女性もいます。
そういえば、バスで駅からの保育園送迎を行うなど子育て支援を強化している流山市が、子育て世代の増加が全国2位(1位は東京都中央区)だそうです。
税理士法人TOTALもただいま人口増加中です。

 

H様よりのお問い合わせです。

■年齢 30
■性別 男
■資格 なし
■職歴 ガソリンスタンド勤務(6)
■学歴 地方国立大学(経済学部)
■会計事務所経験 なし
■居住地 地方

はじめまして。

ご多用のところ恐縮ですが質問させていただきます。

 

現在生まれ故郷の地元でガソリンスタンド店員として働いております。父が営業するガソリンスタンドで将来は会社を継ぐつもりです。田舎で1店舗しか持っていない地域に根ざした会社なのですが、過疎化による人口減等により売上は年々減少傾向にあります。

 

今のところ黒字を維持しているので、即座に会社が傾くほどの経営難に陥っているわけではありませんが、将来的にはわかりません。

 

最近将来への危機感と士業への憧れから税理士を目指したいと考えるようになりました。父にこの事を相談したところ以下のことを指摘されました。

・税理士になれた場合、ガソリンスタンドの経営はどうするのか。
・他のことに力を注ぐより目の前の家業に全力で取組むことが筋ではないか。
・そもそも難関資格である税理士に受かるポテンシャルがあるのか。

等、かなり耳の痛いことを言われました。興味もないガソリンスタンドの家業からただ逃げたいがために税理士の道を志すのではと。正直に言うとその気持ちがなくはありません。
資格選択に税理士を選んだ理由も「社労士や行政書士、中小企業相談士等より難関だが(難関の方がより実用的という個人的なイメージがあるが実態は把握してない)科目合格性を採用しているので社会人でも受験しやすく、独立開業も夢ではない」という体の良い謳い文句に煽られたところがあると思います。
私は要領が良い方ではないので「絶対に税理士になってやる!」という気持ちなくして税理士試験に受かるとは思えません。

父に指摘された事が心に引っかかり本当に税理士を目指して良いのか迷っています。例え税理士になれたとしてもガソリンスタンドの経営を同時に行えられるのかも気がかりです。

 

Q.
そこで質問なのですが税理士の方の中には税理士業のほかに何か別の会社を営んでいる方はいらっしゃいますか?

 

A.

「税理士の就職に関するご質問」ではありませんが、広く税理士の仕事を知っていただくための参考になると思いますので答えさせていただきます。

 

 

 税理士業の他に、別な会社を営んでいる人は結構います。

 

(1)本業付随・派生型

オーソドックスなのが、システム会社、コンサルティング、不動産会社、保険代理店、経理代行、給与計算、人材育成、学校経営…。
最近では、WEB制作、ライセンスビジネスもあります。
これらは、本業に付随している業務を別会社化して発展させたものです。

 

TKCの創業者 飯塚毅先生は税理士です。
発展会計の吉岡先生、マイコモンの佐藤先生(名南経営)、財務維新の行本先生等、システム系はたくさんおられます。

 

菱村先生の「日本経営」は従業員1000人を超え、もはや会計事務所というより、コンサルティングを中心とした事業会社です。
コンサルなら、NBCの野呂先生等個性的な方が並んでいます。
(重鎮が多くすごい迫力です)

 

税理士だからコンサルティングができるわけではありません。税理士資格だけでは、単に税金の計算ができるにすぎません。
正社員すら雇っていない、あるいは、従業員数人の会計事務所の所長が、
従業員数十人の社長に営業や労務問題についてコンサルするのはおかしな話です。

 

ただ、税理士は、クライアント企業の生の情報がリアルタイムに上がってくる特殊な仕事です。経営者と本音で話し合うことができ、商売の秘密に接する機会も多くなります。お客様の経営の重大な意思決定に関わることも日常的に行われています。税理士は経営に関するノウハウを吸収しやすく、経営者になったり、経営者の参謀になるのに向いています。
数十人規模の会計事務所を作った税理士なら、コンサルを行ったり、さらに自分自身も経営者として勝負できるようになったりします。

 

私も、決算打ち合わせや役員・幹部会、あるいはお気軽に携帯で、お客様の経営に関して マーケティング、セールス、設備投資、採用、労務、標準化等、色々なご相談をいただいたり、お話をさせていただいたりします。

 

 

(2)事業再生・事業承継・投資案件

税理士業務をしていると、不振なお客様の事業再生や、高齢のお客様の事業承継をお手伝いすることがあります。その際に、他に適任がいなかったり、経営手腕を見込まれると税理士が代わりに経営することがあります。
また、デューデリ等を行って、ファンドと親しくなると、(たとえば、飲食や、製造業など)税理士の仕事と全く関係ない分野で「プロ経営者」として経営自体を頼まれることもあります。

税理士は専門知識や技術があるため、社会的な信用があるのです。

 

 

テレビ会社、レストラン、ライブハウスの経営者(地方税理士会の会長)、上場企業の雇われ社長など、有名な税理士もおられます。

そういえば、堀江貴文社長(ホリエモン)を支えた最盛期の livedoor の№2は税理士の方でした。

 

 私は、何社か経営していますが本業と関係があるものばかりです。
うち1社はお客様から引き継がせていただきました。
将来は、本業と関係ない会社も経営してみたいし、本格的な経営者育成もしてみたいですね。

 

 私自身は、東京に近くいまだに人口が増加している船橋市に住んでおり、中学、高校、大学と都内で過ごし、地方の過疎とは縁遠いところにいます。

 

両親は30年近く市内で売上トップの農家でした。働き者で有名なのに、不肖の息子(私)は、体力も根性もなくて、後を継いでいません。
両親は、『農家は儲からなくなる』『時代に負ける』とわかっていたのか、それとも私に適性がないと見抜いていたのか、「農家を継いでくれ」とは一度も言いませんでした。

 

地方の衰退は、ゆるやかに、そして確実に続くでしょう。
安倍政権が地方創生を叫んでも、残念ながら何も変わらないのでしょう。
歴史の流れに逆らうことはできませんし、いままでも歴代の内閣や官僚が努力しなかったわけではないのですから。

 

このあと30年、同じことが続く産業は珍しいでしょう。
地方の衰退、燃費の向上、ガソリン車に代わる車の開発と、ガソリンスタンドを取り巻く環境は残念ながら厳しいかもしれません。

 

税理士だって会計ソフトの普及・発達や中小企業の減少等、不安材料を挙げたらきりがありません。
(日本中どこでも企業はあるし、社長の相談相手として最も信頼されているのは税理士なので、会ってたまには実際に顔を合わせて話したいという人間の本能を考えると、ITが発達した時代でも生き残れるとは思っていますが)

 

 

そもそも、人口減少が進む以上、ほとんどの産業は衰退の可能性が高いのです。

ただ、手書きの書類がワープロ、そしてパソコン、音声認識になっても、仕事がなくなるわけではありません。
経営者は、時代に合わせて生き残って勝っていくようにしなくてはいけません。場合によっては地方を捨てたり、本業を変える日が来るのかもしれません。
 税理士とガソリンスタンドの経営を同時に行うことは可能でしょう。
ただ、どんな経営をするかが問題になるのです。

 

 

ガソリンスタンド経営に専念した方が良いのか、税理士との2足のわらじにしてリスクヘッジした方が良いのか。
H様のお父さんが、自分の事業を継いでほしいという執着で言っているのか、H様の適性を把握してアドバイスしているのかはわかりません。そのお父様の意見が正しいかどうかは、もっとわかりません。お父様の時代とこれからの30年は同じ時代ではないのですから。

 

私も、税理士になる前は税理士の知り合いはいませんでしたし、税理士の仕事を知っていたわけではありません。地元でのんびり生きていくのに適当な資格だろうという程度の認識でした。

今は税理士になって本当によかったと思っています。

 

30代スタートで他の仕事を後継者としてしながらだと税理士試験は楽ではないでしょう。

どうすればいいのかはじっくりご自身で考えて決めるしかありません。
もし、税理士を目指すのであれば、一生懸命勉強してください。

 

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

丁寧なご回答、大変参考になりました。
まだ、難関資格である税理士を目指す決意はもてませんが、
今後の自分の将来について真剣に考える良い機会となりました。
一言お礼申し上げたくメールさせていただきます。
本当にありがとうございました。

2015年3月8日 8:16 PM | H

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