税理士とサービス・接客 / 税理士試験の適性

2012年12月22日高橋

東京都千代田区・新宿区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。
現在、公認会計士を募集中です。公認会計士の方には上場会社、上場子会社等の税理士業務はもちろん、本人の適正と希望に応じて、将来の幹部候補としての管理業務、資産税(法律の精読、細かい分析能力)、医療(受け身で上品なコミュニケーション)分野での活躍も期待します。
独立経験者も歓迎します。

 

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それではT様からのお問合せです。

内容
■年齢 33歳
■性別 男
■資格 なし
■職歴 アパレル販売、セールスドライバー、飲食店店長
■学歴 MARCH
■会計事務所経験 なし
■居住地 東京

高橋先生、はじめまして。
いつもこのサイトを拝見させていただいております。
先生の親身で分かりやすいメッセージ、いつも参考にさせていただいております。
今日は自分の境遇を御相談したく、投稿しました。

 

大学を卒業後、大手のアパレルメーカーに総合職として入社しましたが、一年半で退職し、やりたいことが分からずその日暮らしで運送会社で28歳まで働き、その後、少しでも好きを仕事にしたく、スポーツバーに転職し店長まで昇格しましたが、飲食店で自分の人生を終えたくないと、頭がちぎれるほど考え、税理士を死ぬ気で勉強してみようと思い、現在専門学校に通いながら簿・財を勉強しております。
20代で全く勉強をしてこなかったため、自分のやりたいことや長所が分からず、何に努力して良いかすら分からず、漫然と生きてきてしまいました。
 

30代になり、自分は人よりもサービス・接客スキルが人より優れていることが分かりましたが、飲食店のような肉体サービス業では満足のできる人生は送れないとようやく気づき、自分の長所を生かして相談業務のできる税理士になろうと決心しました。
簿記検定は持っておらず、次回の本試験を受験後もし駄目なら、三級・二級を受験しようと考えております。
今は業界と関係のない短時間のアルバイトをしながら勉強をしております。
33歳で今は実家に戻り暮らしておりますが、専念することでさらに、親不孝・みっともなさを感じます。
学校の成績は今のところはなんとか上位10%~20%程度をキープしており、このままやり続ければ簿財は大丈夫だと、担当講師からは一応言われております。
今度の本試験が一回目の挑戦で、三回受験して何も合格できなければあきらめようと考えております。

 

Q.1
かなり人生を遠回りして、32歳から簿記の勉強を一から開始した私のような人間は、常識的に考えて、税理士は夢物語でしょうか?

 

Q.2
接客・サービスに自信があって、相談業務をやりたくて30代から試験勉強を始めた税理士になった方はいらっしゃるのでしょうか?

 

Q.3
私のような境遇でしたらやはり専念して、簿財が取れるか、適性があるか見極めたほうが良いでしょうか?

 

Q.4
高橋先生が思う、試験に合格できる人、適性のある人、勉強を続けても良い人はどのようなタイプの人間でしょうか?

先生、よろしくお願いいたします。

 

A.1
税理士は職業柄、色々な産業の給与水準、労働時間を知ることができますが、Tさんの経験した運送業、飲食業界は、そのなかでも労働時間が長く、労働環境が厳しい方に属すると思います。
その割には、独立して成功しないとリターンが期待しにくいし、、独立の成功率も高いとは言えない(指折り廃業率が高い)ですね。
ただ、飲食の場合は、経営が上手でブランド化できれば多店舗化・チェーン店化は容易だとも言えますが。
税理士業界は、労働時間が普通で(最大手クラス、若手主宰の会計事務所はきついです)、ノルマもほぼなく、給与も普通の、ミドルリスク・ミドルリターンの安定した業種でしょう。

税理士試験は、学生時代開始、新卒中心の公認会計士試験と違って、挫折組、遠回り組が多い試験です。
本年の税理士試験の結果を見ても、官報合格者のうち
36歳~40歳が27.4%、41歳以上が25%で、実に30代後半以上過半数を占めます。
科目受験者でも20代前半は30%くらいにすぎません。
平均取得年数の長さを考えても20代後半スタートで普通、30代スタートも決して珍しくないと言えると思います。
 

A.2
税理士を目指す人には、サービス・接客が苦手なタイプもいますが、
実は、人と会うことが好き、サービス・接客が好きという方もかなり多いです。

税理士法人TOTALでも、元職は、IT関係、経理、監査法人・会計事務所出身(プロパーを含む)を除くと、証券営業、生保営業、リース営業、地銀営業、議員秘書、建築営業、不動産営業、広告営業、電話営業、小売販売、セールスドライバーと、あれ?驚くほどにほとんど営業職で、接客・サービスをやってきた人たちばかりです。
元営業マンで、押し込み営業、お客様の都合より会社の都合を優先する営業の限界を感じて、
お客様に納得して良いものを売りたい、お客様のためになる仕事をしたいという感じて転職される方が多いのかもしれません。

 

元営業マンの半分くらいは、30前後で勉強を始めていますが、そのうち、税理士になった人、これから税理士になりそうな人もたくさんいます。
(ちなみに、税理士法人TOTALは、男性は税理士になれそうな人しか採用しません)

 

なお、会計事務所もサービス業なので、専門知識と並んでサービス・接客が重要なのは言うまでもありません。

 

A.3
私は、環境が許すなら、最初1~2年は専念した方が良いと思います。
スタートが33歳で早いとは言えないこと、事務職経験がなく、採用上やや不利だと思われることを考えるとなおさらです。
簿記論、財務諸表論の合格に加えて、法人税法又は消費税法の勉強をしていると(税法は合格していなくても採用されるケースも多い)採用の可能性が大きくなります。
 

親不孝、みっともないと感じておられるようですが、親の経済状況が許すなら、1年でも早く、社会の役に立つ税理士になることが最大の親孝行ではないでしょうか。
もう十分苦労はしてきていると思います。利用できるものは親でも利用する、甘えられるなら甘えるのも親孝行。

 

私自身、体調不良もあり、新卒後20代後半まで定職にも就かず家でプラプラしたり勉強したりで、独立してからもしばらく親に頼りきりでした。
どれだけ親に心配をかけたか、いくらお金を使わせたかわかりません。
それでも親からは、最近、一人前になったことをしきりに喜ばれます。
(もう事業を大きくしないで良いよ、のんびりしようよと言われますが)
人の親になってわかりますが、親とは子供の幸せを何よりも願ってくれる有り難いものだと思います。

 

A.4
税理士試験は、細かい記憶力とスピードが一番重要な試験です。地頭の良さはそれほど必要とされません。

 

だから、若ければ、適性なんてほとんど関係ありません。商業高校で簿記を勉強して、大学に行かずに専門学校で真面目に勉強すれば20歳過ぎには普通の人でも合格するでしょう。
大学に入ってすぐに勉強を開始すれば、素直さ、真面目さがあれば、20代後半には合格すると思います。

 

ただ、記憶力もスピードも年齢とともに衰えます。素直な気持ちも社会に長くいると序々に失われていきます。
20代後半以降で税理士試験を開始して合格できる人は、
ある程度の基礎学力(日東駒専レベル)があることを前提に、最も重要なのは日々の努力をあきらめずに愚直なまでに行えることだと思います。
 

税理士試験は短期で終わらせようと思うとスタートダッシュが重要です。それでも多くの場合、長丁場になります。
終わりの見えないストレスで、心身ともに健康を害する人も少なからずいます。
T様が死ぬ気で勉強するのは素晴らしいことですが、そこまでの気持ちは長くは続きませんし、体も持ちません。

 

仕事柄、採用面接を大量にしています。早慶はもとより、東大卒でも、合格しそうにない人を見てきました。
彼らと合格していく人の違いは、素直な気持ちで、細かいことにも気を使い、根気強く、体調を整えて勉強をし続けられるかどうかだと思います。

 

税理士試験は頭の良い人が受かる試験ではありません。
そのため、単純暗記のくだらない試験だという人がいます。しかし、実務も作業を繰り返し繰り返し行って体で覚えるのです。
実務家登用試験としては実によくできています。
細かい知識が覚えられなかったり気力が萎えるのを、試験制度のせいにする人は合格しません。言い訳が多い甘い人は税理士試験(特に税法)に向きません。

 

努力をして、あきらめなかった人だけがいつか受かる試験です。

 

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

ご返信いただき、本当にありがとうございました。
何度も本文読ませていただきました。
自分の境遇を吐露したことは税理士を志してから
初めてであり、高橋先生の懐深いメッセージに
心が救われたような気持ちになりました。
今現在は、当然一人で過ごす時間がほとんどのため、
不安や焦燥感、孤独感に襲われていました。
私も税理士になったら、先生のように利他の精神を忘れず、
人の気持ちを理解できる人間、人の役に立つ税理士になろうと
改めて強く思いました。
先生から頂戴したメッセージをこれからの勉強の励みにして、
諦めず素直な気持ちで頑張っていこうと思います。
先生、ありがとうございました。
このご恩は、いつか必ずお返ししたいと思います。
それでは、失礼いたします。

2012年12月27日 8:40 PM | T

将来、税理士希望の大学生です。私は今、理系の学部の2回生なのですが、大学生活を過ごすうちに税理士になりたいと思うようになりました。しかし、税理士に必要な経済学等は全くの素人で、転学の機会も逃してしまいました。出来れば就職した後に税理士の資格の勉強を始めたいと思っているのですが、この場合、資格を持っていなくても税理士に関われるような職場に就職することはできるでしょうか?また、就職したあとも勉強を受け(または独学)て、国家試験に望むことは無謀なのでしょうか?お答えしてもらえると助かります。

2013年1月21日 9:06 PM | M

M様 
税理士の高橋です。
お問い合わせありがとうございます。
WEBである程度正確な返事を書こうと思うと一定の情報が必要です。
本文中にもある、新規お問い合わせページよりご記入いただけると幸いです。
http://www.total-tax.com/otoiawase.html
また、過去記事の
「国立大学理系学生の会計事務所への就職と受験専念」
http://www.total-tax.com/2012/05/post-75.html
も参考にしてみてください。
よろしくお願いします。

2013年2月17日 3:26 PM | 税理士 高橋寿克

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