税理士と海外業務

2013年04月27日高橋

東京都千代田区・新宿区と千葉県船橋市の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

 

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Y様からのお問合せです。
内容
■年齢:40歳
■性別:男
■資格:証券アナリスト(税理士試験は経験なし)
■職歴:銀行に17年間
■学歴:早慶一橋(経済学部)
■会計事務所経験:なし
■居住地:海外
■その他、特殊事情:なし

 

初めまして。
現在、銀行にて海外駐在中です。
日本に居た頃は毎晩夜中まで働いておりましたが、ここ海外では日本よりは自己啓発の時間があります(とはいっても平日一日2~3時間、週末は土日各5時間が限界でしょうか)。
10年後を目指し、コンサルティングとして独立することを夢見ており、比較的時間のある今がそのラストチャンスかと考え、税理士試験を受験するかどうか迷っております。
イメージとしては「7年以内に合格、その後税理士事務所で3年修行、その後独立」です。
具体的には中小企業への財務・財務面での経営コンサルティング全般、特に海外進出を検討する中小企業を助けたいと思っております。また英語とスペイン語が得意なので、それを活かすことが出来たらと考えております。
一方、税理士試験に仮に7年以内で合格(そこまで集中力が継続することを想定)しても、その後、雇用してくれる事務所があるのか、また海外経験や語学能力が税理士事務所で求められる能力なのかわかりません。
私のキャリアは銀行一筋ですが、営業経験は極めて浅く、市場部門(デリバティブ)での経験が長いです。
従って「営業力」等はあまり売りには出来ないと思います。
非常に努力されて税理士になった皆様を前に大変失礼な質問と認識しておりますが、上記を元に率直なご意見を頂戴出来ましたら幸甚でございます。

 

A.
率直なご意見とのことですので、恐縮ですがストレートに書かせていただきます。
残念ですが、海外進出を助けたり、英語とスペイン語を生かすなら税理士ではないと思います。
海外経験や語学能力はほとんど評価されません。
税理士は、日本国内の税法を学んで、日本国内の税務申告・税務相談を受けるための資格です。
東南アジアの一部では税理士資格もあるようですが、会計士と比べてマイナーです。
海外進出に税理士を使う人はほとんどいないと思います。
TOTALのお客様でも海外進出はそれなりにありますが、現地法人は現地の別の会計士にお願いしています。
国内の法人の申告には書類に輸出入や投資について英語が出ることはあっても、定型だったり翻訳してもらったりするのであまり英語ができないと困るという感じにはなりません。
(言い方を変えると、語学はあまりアドバンテージにはなりません)
日本人も、日本企業も、海外進出は盛んですが、それを支えるのは、
大手なら、BIG4(監査法人)系の会計事務所
中小なら、独立系の会計士でしょう。
日本の税理士(非会計士)で国際業務をやるとしたら、BIG4系の税理士法人の経験や人脈を生かして、日本国内で日系企業の海外進出をサポートする仕事になります。
いかにY様が優秀でも、BIG4は47歳の未経験税理士を受け入れないような気がします。
(事例がないので判断できませんが)
国際会計業務は、本来、公認会計士の仕事ですが、昨今の監査法人の就職難を考えると、
タイミングが上手く合わない限り40代では就職は難しいと思います。
英語を生かせる仕事があるとしたら、英文で監査対応資料等を作成しているケースでしょうか。
(スペイン語は申し訳ありませんがイメージがわきません)
たまに、外国の大企業から、英文会計のレポート作成を求められることがあります。
Y様は、学歴も職歴も立派ですし、文章の気の使い方を見ても非常に優秀な方だと思います。
また、日本企業の海外進出は増えることはあっても減ることはなさそうです。
お客様で、50代、60代でもコンサルティングで成功している方は数多くおられます。
その方々は、勤務時代の経験・技術を確実に生かしている方ばかりです。マイペースで楽しそうに仕事をしておりうらやましかったりします。
彼らには特に資格はありません。
税理士資格よりも、例えば証券アナリスト資格と銀行業務を生かして投資業務に進出する等、今している仕事に関連して、独立してもできるものを磨いていく方がコンサルタントとして成功する可能性があるような気がします。
また、英語やスペイン語を抜きにして、自己啓発の一環として税理士資格を取って、普通に将来税理士業務をすることはあり得ます。
普通の税理士事務所への雇用は、銀行で長く勤務したという能力の高さを評価され、有資格者なら何とかなるような気がしますし、ダメでも銀行業務で実務経験の証明をしてもらえば即独立も可能です。
税理士法人TOTALのパートナー沓掛税理士は42歳未経験で入社してきましたし、
(ダラダラと受験をした私と違い、保険会社で通常の国内業務をこなして一線を走りながら税理士資格を取った彼はすごいと思っています)
過去には50代で税理士法人TOTALに入社してきて、今、他の税理士法人の代表社員をしている元スタッフもおります。
ビジネスセンスがあれば(なければ磨けば)、50歳前後からでも、60歳手前からでも成功している税理士は結構います。
コンサルティングでの独立には、都市銀行で通用するゼネラリストとしてのポテンシャルの高さを、何らかのスペシャリストとしての形に変えることが求められると思います。

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

お世話になっております。
コメントを拝見させて頂きました。
税理士業務に大変無知な私に、大変誠実かつ丁寧なご回答を頂戴し、痛み入ります。
今ある能力を活かすという観点からは、非常に難関である税理士試験に敢えて挑むのは得策ではないというのが読後の印象です。
自分に何が出来るのか、万が一税理士業務に携わることが可能な場合、自分の夢が本当に実現するのか、今一度冷静に考えてみようと思います。
略儀ながら御礼まで。

2013年4月30日 11:37 AM | Y

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