キャリア相談室

大手・中堅税理士法人の特徴

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

平成27年3月
TOTALグループは、社会保険労務士法人NEXTを加えて、
TOTAL NEXTグループ 
へと生まれ変わりました。

総合的に、そしてその次へ
お客様により良いサービスを提供できるよう精進してまいります。
皆様、今までも、そしてこれからも
ご指導ご鞭撻のほど よろしくお願いします。

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ななせまる様からのお問合せです。

■年齢 25歳
■性別 男
■資格 簿記論、財務諸表論及び法人税法
■職歴 なし
■学歴 MARCH
■会計事務所経験 アルバイトで約2.5年程度
■居住地 東京

いつも大変参考にしております。

就職先の選び方について、ぜひ先生にご相談にのっていただきたくメールいたしました。

私は大学在学中に自分自身の卒業後の進路を考えたときに、どうゆう方向に進んでいくかが全く決まらず、ほとんどうつ状態になるまで思い悩みました。その原因は、あまりにも自分に特筆べき能力がないことにあり、社会にでてやっていけるのだろうか、という点にありました。

そんな状況が卒業直前まで延々と続いたのですが、たまたま知り合った税理士の先生に、「税理士を目指したらどうだろう」と誘われました。

大変恥ずかしいことではありますが、当時は税理士という職業自体知りませんでしたし、簿記の知識も0でした。ただ、能力がほしいと願ってやまなかった私にとって、税理士という職業はとても魅力的に感じたので、税理士を目指すことを決めました。

あのときの自分は、なにをあんなに悩んでいたのか不思議に思いますが、結果的に良い選択をできたといまでは思っています。

現在、勉強は順調に進んでおり、一昨年に簿財、昨年に法人を、それぞれ一発で合格できました。今年、うまくいけば官報合格ができるので、本格的に就職を考えているのですが、その方向性が定まりません。

勤務している会計事務所で、法人税の申告書の作成など会計事務所に関する業務を手広く経験させてもらえるので、大変勉強になっています。また、所長はとても穏やかな人で、職場の環境はとても良く、まだ若い事務所なので規模は小さいですが、お客も毎月良いペースで増えていると思います。

その所長からもお誘いがあり、このままこの事務所で正社員として働くことも考えていました。

しかし、私にとって今一番大事だと思えることは、自分自身の成長にあると考えており、税務に関する能力を伸すためにはもう少し規模の大きいところに行く必要があるのではないかと考えています。

きつくてもなんでもいいから、とりあえずの最大手の4大法人!と安易に考えていたのですが、縦割り業務で専門性が強いので、つぶしが効かない、独立する人がほぼいない、対外とのやりとりがないなどの情報があり、将来的に独立も視野にいれているので、どうなのかなーという感じです。

また外回りの経験も少しありますが、会計事務所の仕事で一番おもしろいと感じていたので、それがないのもちょっとなーと思います。

国内の大手、中堅税理士法人や税理士事務所は、実情がどうなっているのか、いまいち情報が手に入らないため、困っています。

なので現状は、色々デメリットありつつも、一番経験が積めそうな四大法人を目指すのが良いのかな、と考えている状況です。

Q.1
自分自身の能力を高めたいと考えた場合、どういった税理士法人又は事務所がよいのでしょうか(ハードな環境でもかまいません。)。

Q.2
国内の大手、中堅税理士法人と、規模の小さい税理士事務所とでは、業務の内容が大きく違うのでしょうか。

Q.3
働くうえで体力は必要不可欠だと感じているので、ジムに通ったり、実務解釈を読んで税法の勉強をするなど、少しでも自分の価値をあげておこうと色々努力をしているのですが、この業界では受験勉強以外にどうゆうことをしている面接者が評価されますか。

A.1

ななせまる様のBIG4の分析は良い点も悪い点も正しい気がします。
能力を高めたい、ハードな環境でも構わないというなら、教育と成長という点ではBIG4を一番に考えるのもありでしょう。

4大税理士法人(BIG4)とは」参照

BIG4は、

外資系企業の日本子会社上場企業の子会社SPC等が主要なクライアント(顧客)。また、外資系企業の社員の給与計算等も行う。 クライアントが、決算書まで作成するため、申告書の別表調整が多く、決算期は特定時期に集中し、期間的余裕がないため、その時期の仕事はかなりきつい。繁忙期(1~5月前半)は連日のように終電まで働き、タクシー帰りも珍しくない。

また、外資系企業の日本子会社関連や国際税務(海外取引に係る税務)などの部署は、英語、語学力は必須。 なお、上場企業本体は、自社内の経理部門が申告書の作成と申告・納税まで行っているので、4大税理士法人はあまり関与しません。
法人税については、(税理士法人TOTALのような普通の会計事務所では、中小企業は月次監査が当たり前ですが、)外資系企業や上場企業の子会社を担当する場合は、決算書がすでにできあがっていて、大量の税務調整を行って申告書を作成するのがメインです。

非上場の中小企業や個人事業者のクライアントはほとんどないので、町の税理士として独立するには向かないでしょう(公認会計士を除く)。

大きな企業、国際的な企業、他では得られない専門的な業務、そして高い給料。
BIG4は魅力的です。
ただ、それゆえに、他の会計事務所とのギャップは大きく、独立してもその知識の使い道はあまりないとも言えます。

独立をどれくらい本気で考えているかどうかということでしょう。BIG4の場合、出口が、社内での出世競争に加えて、クライアント企業他の上場企業への転職になります。

======================
税理士法人内の出世は、公認会計士と競うことになります。
基本的には UP or OUT
(組織のピラミッド構造を維持するため、ランクごとに一定年限までに出世できないと退職勧奨される)
BIG4を含めて監査法人系の税理士法人では、税理士の出世は楽ではないでしょう。
====================

(中堅以上の監査法人系列の税理士法人も多少似たような傾向はあると思います)

独立の可能性が半分くらいはあるなら、BIG4の経験だけではうまくいかないと思います。

もし、BIG4に行って、それでもなお独立したいなら、普通の会計事務所に3年程度勤務する必要があると思います。
幸い、今の会計事務所は良い事務所のようなのでそこでもいいし、それ以外でもいいでしょう。

A.2
BIG4以外の大手税理士法人は、3つに分かれます。

(1)最大手2税理士法人

金融機関から紹介のスポット案件が新規の主力になります。
(全国、特に地域の拠点都市に支店があるのが特徴です)
都市銀行、有力地方銀行の指定会計事務所になると、資産税案件が紹介されます。

うち、1社は下記 (3)②の側面もあります。

ここくらいまでは、きつさの点ではあまりお勧めしにくいのですが、
若くて成長意欲もあるので、本当にきつくても大丈夫ですよね。

(2)戦略的に特化した税理士法人
高付加価値の資産税、SPC、医療系、国際業務、コンサル…、こういった業務の一つ(場合によっては2つ)だけで8割を超え、それ以外はほぼないという極端な構成になっています。

このタイプかどうかは税理士業界の方に聞いてみるか、「営業(集客)」用のホームページを見るとわかることが多いです
(大手だと「採用」用に別のホームページを持っていることが多いですが、残念ながらあまり参考にはなりません。)

普通の会計事務所を経験したあと、何かの専門性を持ちたい場合にはいいかもしれません。

ただし、何故これらが高付加価値で大型化できたかというと、信用力が必要で中小事務所では獲得しにくいお客様、独立時にはあまり役に立たない業務を抱えているとも言えます(中堅以上になってから差別化に使っていくには有効です)。
その中でも特に、SPCは単純で飽きるし、公認会計士でないと取れない仕事なので個人的にはおすすめしにくいです。
SPCはかなり少数の税理士法人しか手掛けていないので検索して出てきたら疑っていてください。

=====================
税理士法人TOTALには、BIG4、最大手税理士法人、その他大手税理士法人にかつて在籍していた方にも多数、入社していただいています。

最大手なのに事業承継対策の単品商売しかしていない
忙しすぎる
子育てに理解がない
給与が(時給換算すると)安い
〇○業務がつまらなかった
一般の法人をやってみたかった
など、理由は様々です。

逆に、当社からBIG4や大手税理士法人に移られていった方もおられます。

大手税理士法人は成長を続け、税理士業界の寡占化が進みつつあり、大手税理士法人間の人の移動も増えています。
=====================

(3)業種特化 以外の中堅・大手税理士法人

①一般法人専門

薄利多売型で、かつ一般法人の記帳代行又は巡回監査の単品商売
この場合は数が多いだけで、業務の内容は規模の小さい税理士事務所と変わりません。
もちろん、オペレーション等は洗練されていることが多くなります。

②中堅以上の顧客も多く、資産税、医療等などをまんべんなく抑えられている総合型税理士法人
これらの仕事は、規模と信用があって初めて依頼される事案も多いので、規模の小さい税理士事務所ではあまりありませんし、あっても所長等特定の方がやることになります。
一般的な法人業務から始まって、適性や希望に応じてジョブローテーションを組むことも可能になります。

=====================
実際、税理士法人TOTALでも、従業員100人規模あたりから、資産税の紹介が金融機関や建設会社から目立って増えてきました。

うちの場合、私の父はかなりの資産家(実は私もそれなりの相続を受けている一般的な意味で言う「資産家」です)で従来から金融機関やハウスメーカーとの取引がありましたし、単位農協の№2です(この3月で定年退職です)。

医療系も今年だけで20件以上のクリニックの開院を支援します(全国有数です)。
国際税務も、誰もが知っている超大企業から、BIG4の肩代わりを依頼されました。
さらに優秀なスタッフが増えてきてくれてたいへん恵まれていると思っています。
=====================

A.3
会計事務所の経営者がよく口にするのは、

「(ぜいたくは言わない)普通の人が欲しい」

です。

「普通」とは、①お客様とコミュニケーションが取れて、②業務をこなしてくれることです。

特別なことをするより、受験生のうちは、税理士試験の勉強してくれれば十分です。

面接はコミュニケーションスキルとポテンシャルを見るだけです。

細かいテクニックよりは、人としての器を大きい方を評価します。

仕事は現場でいくらでも覚えられます。

しいて言えば、個人的には、税理士試験が終わったら

きちんと毎日、日本経済新聞を読んだり、ニュースを見てほしいと思います。

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インターネットで顔が見えない方に適切な回答をするために、 質問の書式にご協力いただけると幸いです。 情報が不足する場合には回答できないことがあることはご留意ください。

また、このサイトもありがたいことに皆様のご質問をいただき、事例が増えてきました。 ご質問の前に、同様な質問が無いかご確認いただけると幸いです。

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執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL
代表社員税理士

高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国17拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

この記事へのコメント

  • ご丁寧に、メールを頂きありがとうございます。

    自分の知らない業界の様々なことを知れたので、進路を考える上で、大変参考になりました。

    また、高橋先生のおっしゃる通り、あまり余計なことはせず、本年で官報合格をできるように勉強に力を入れようと思います。

    この度は、 私の質問に貴重なお時間を割いて頂きまして、重ね重ねありがとうございました。

    2015年3月28日 8:16 PM | ななせまる

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