キャリア相談室

出産・子育てと税理士試験・公認会計士試験

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

税理士法人TOTALは、通年で採用活動をしています。
夏以降の内定者も多数出しています。
いくつかの本部は募集が完了しつつあります。
採用枠が小さい本部もあり申し訳ありません。
その他に、船橋駅前の給与計算事務のスタッフが不足しています(未経験者歓迎)。
もちろん、良い人がいれば、エリアにこだわらず、いつでもお待ちしています。

お早めのご応募をお待ちしています。

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hiyo様からのお問合せです。

■年齢 29歳
■性別 女
■資格 簿記2級
■職歴 インフラ系企業6年勤務
うち経理部3年勤務
(主に予算関係業務担当。決算処理は伝票チェックをした経験があるくらい)
■学歴 旧帝大クラス
■会計事務所経験 なし
■居住地 福岡県
■その他(特殊事情等)
転勤族の夫と同居するため退職し、福岡に転居いたしました。
以前より税理士の仕事に興味があり、再就職のために勉強をしたいと思っておりますが、下記3点について悩んでおり、アドバイスを頂戴できますと幸いです。

Q.1
年齢的に、可能であれば向こう5年くらいの間に出産したいと考えております。計画としては、来年8月の試験に向けて1年間は勉強に専念して簿・財(可能であればもう1科目)合格を目指し、その後会計事務所に勤務しながら残りの科目の合格および妊娠・出産していきたいと考えているのですが、そのようなことは可能でしょうか。
(逆に妊娠・出産の間は受験勉強に専念したほうがよろしいでしょうか)

Q.2
夫が転勤族のため、3から5年周期で転居する可能性があります。
可能であれば夫の転勤に同行しつつ働き続けたいと思っておりますが、税理士資格を取得した場合、そのようなことは可能でしょうか。

Q.3
向こう1年は勉強に専念しようと思っているのですが、その場合税理士試験ではなく公認会計士試験を受けるほうが合格しやすいというアドバイスを知人より受けました。それについてどう思われますでしょうか。
(将来税理士として仕事をしたいなら、税理士試験を受けるべきでしょうか)

ご相談したい内容は以上です。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご意見をいただけますと幸いです。

A.1
可能です。
家事の量がコントロールできるのであれば、
簿記論・財務諸表論に法人税法又は消費税法を加えてもいいかもしれません。
来年夏に妊娠しておられなければ、原則として会計事務所に勤務することをお勧めします。
その場合も残業がほぼない正社員又は時短かパート勤務の方が良いかもしれません。
会計事務所の中には、フレキシブルなところもあると思います。
主婦は、家事がありますし
(全国転勤の旦那様だとおそらく激務ですよね)
子供が生まれると育児も始まります。
試験との両立は大変です。
あわただしすぎると何のために生きているのかわからなくなります。
厳しいところしかなければ、もう1年受験専念でも構いません。

子育てに専念するかどうかは、実際に子供が生まれてから考えてもいいかもしれません。
実際に子供が生まれると見えてくるもの、感じることも違うかもしれません。、
もしかしたら、子供と向き合いすぎて社会からの疎外感で働きたくなるかもしれません。
子供が生まれたら、受験や、仕事は、あまり決めつけすぎず
子育てを楽しみましょう。

A.2
可能です。
会計事務所は、零細事業所が多く、福利厚生が充実しているわけでも、給与が特に高いわけでもありません。
それでも、全国どこにでもある仕事で、一度「会計事務所経験者」になれば、転職は容易です。
零細事業所で社員教育の余裕がなく、業務もあまり標準化されていないので、一通り回せる経験者が重宝されるのです。
大都市のターミナル駅の会計事務所以外は、女性の方が多い事務所も多く、子育てにも理解があります。
税理士資格を取った場合は、それに加えて新規出店したい税理士法人からのパートナー候補としての評価も加わることになります。
また、最近ではクラウド化も進み、税理士法人なら転勤があっても支店登記すれば、どこでも仕事ができます。

=============================
税理士法人TOTALは女性の方が多く、転勤族の奥さまはかなりおられます。
家庭の事情で別の本部に移籍した方も出てきました。
今後は全国転勤への対応も求められそうです。良い機会だから場所によっては転勤に合わせて出店するかもしれません。
=============================

A.3
公認会計士試験は転勤族の奥さまにはお勧めできません。

公認会計士試験はキャパシティの大きさとキレを要求し、税理士試験は記憶力と速記力を要求します。
税理士試験は(全5科目を)1回で合格する人はほぼいませんが、公認会計士試験は若ければ1回でも合格します。
一般的には20代前半で学歴が高い方は、公認会計士の方が早く合格できることが多いでしょう。
また、公認会計士は税理士資格を事実上自動付与されるので税理士がやや格下に見られることも否定できません。
このため、(大学や前職の?)知人の方は公認会計士試験を勧められたのでしょう。

率直に言って高学歴の方が20歳代前半なら私も公認会計士試験を勧めます。
私は、hiyo様の場合は公認会計士試験をお勧めできません。
(1)公認会計士試験の母集団は20歳代が主力
合格者も8割が30歳以下で今から最短で合格しても31歳で2割の少数派になります。
就職は、しばらくは売り手市場で問題ないとは思いますが、地方で転勤族となると採用枠も小さくなります。会計士はピラミッド制ですし、新人は若くないと辛いかもしれません。
ちなみに、税理士は30歳以下の合格者は4分1で、逆に40歳以上が3割以上います。年齢の幅は税理士の方がはるかに大きくなっています。
母集団の差を考慮すると、合格しやすいのも税理士試験だと思います。

(2)出産時期が制限される。
税理士試験は、科目合格制ですし、途中で出産が入っても受験を続けるのに支障はあまりないでしょう。
公認会計士試験は、短期集中型なので、妊婦が合格したという話はお聞きしたことがありません。

「公認会計士試験 妊娠」で検索すると受験をあきらめた方の放置されたブログがいくつか出てきます。
赤ちゃんは授かりものです。あまり出産を先延ばしにするよりも、自然に任せて30代前半の早めに生んだ方が後悔はないように思います。

(3)転勤族の妻が合格後、資格を取るまでの問題
公認会計士試験合格後は、就職先は普通、監査法人に限られます。合格者は若い独身者を念頭に仕組みが作られています。公認会計士試験論文式試験に合格した後、2年間の監査法人での業務補助と、1~3年間の補修所通いが必要です。
修了考査前にご主人が福岡から転勤になったら、そしてそれが4大監査法人がない地方都市だとしたら働く監査法人も、通う補習所もなくなります。数年前まで、公認会計士試験論文式試験合格者が監査法人に採用されず、補修所通いもあきらめるいわゆる「待機合格者問題」がありましたが、それに近い状態になる危険性があります。

(4)転勤族の妻にとって転職にしくい
監査法人に居続ける場合、女性の場合、男性ほど UP or OUT ではなく比較的「女性に優しい」職場だと思います。ただ、転勤族はそのメリットを生かせません。
転職先はメーカー経理が多いと思いますが、こちらも本社への集約とアウトソーシングが進み地方転勤に向きません。

公認会計士という資格は、若者が学生時代から勉強するのが普通で、大企業を対象とする仕事であり、東京に住んで東京で働く上では素晴らしいですが、転勤族の女性には向かないのです。
実は、公認会計士試験は女性合格者がかなり少ない試験で、17%くらいです。
弁護士(22%)や医師(33%)、税理士(27%)よりもだいぶ低くなっています。

監査のバイトがあった時代は、公認会計士の独立は比較的容易でした。
最近は(40代前半以下の方は)、公認会計士出身で税理士として独立するのは楽ではありません。
残念ながら女性ならなおさらです。親、兄弟、夫と一緒に働いたり、親から引き継いだりしていない独立若手女性会計士で一定の規模でやっている方はあまりおられません。
もっとも、hiyo様は転勤族で勤務を念頭に置いていますよね。
勤務「税理士」になる女性公認会計士の方は多くありません。
公認会計士は、大企業に対して「監査」をし、「会計」が中心になります。
税理士は、中小企業に対する「税務」が中心になります。
やる仕事が違うので30代前半のうちに仕事を学ぶのが望ましいのですが、女性の場合、監査法人から税理士法人へ転職は、BIG4を除くとほとんどないのが実情です。
税理士事務所への転職は、無資格の事務職員と同じ仕事をすることになり、キャリアがあまり生きないので給料は確実に下がります。キャリアチェンジは家事・育児等で時間の制約を受ける分、男性以上に難しいのです。
逆に、税理士事務所にとっては、公認会計士の資格があると(実力がなくても)高い給与を期待されるし、プライドが高くて扱いにくい、どうせノウハウ狙いの腰掛けだと思われる等の理由で敬遠して採用しないところもあります。

私の周りでも女性公認会計士の中には、家庭に入って仕事を辞めて会計士登録をやめる方も少なくありません。せっかく優秀で努力なさった方が、仕事の違い、企業文化の違い、処遇、プライド等 理由はあるとは思いますがもったいないですね。

==========================
うーむ、公認会計士試験の転勤族の女性にとってのデメリットを書き過ぎですね。自分でもスラスラ出過ぎてビックリしています。
公認会計士は、ビジネスマンとしても優秀な方が多く、もちろん社会的評価が高い素晴らしい仕事です。

税理士法人TOTALでは、公認会計士を積極的に採用しています。
4名の公認会計士・合格者が在籍してくれていますが全員男性です。貴重なパートナー・本部長やその候補です。
女性公認会計士は一人もおられません。女性公認会計士へのアピールが不足しているのかもしれません。反省しなくてはいけませんね。税理士法人TOTALでは、時短等、子育てに協力いたします。また、マニュアル化や情報の共有を進め、仕事をしやすい環境づくりを心掛けています。
ご応募おまちしています。
==========================

税理士試験は、若くして受からなくてもあきらめなければいつか合格しますし、合格しなくても普通に働き続けることができます。
受験生活が短期間で終わることはないという点を除くと、リスクが低い、つぶしがきく試験と言えるかもしれません。
転勤族の女性にとっては良い仕事でしょう。

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執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL
代表社員税理士

高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国17拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

この記事へのコメント

  • 質問者のhiyoです。
    お忙しいところ、わかりやすく丁寧な回答をいただきまして、大変ありがとうございました。
    前職を退職し今後の働き方について考える日々のなかで様々な不安を抱えておりましたが、回答を読ませていただいて、今後の方向性が見えたように思います。
    まずは来年8月の税理士試験受験に向けて、勉強に励みます。
    本当にありがとうございました。

    2015年6月30日 3:36 PM | hiyo

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