税理士と司法書士

2015年01月18日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

 

返事が遅くなって申し訳ありません。

情けない話ですが、私は毎年1月に風邪をひきます。
普段は、ハードワークで緊張しているので、体調が持つのですが、年末年始に気を緩めるので風邪をひき、そのまましばらく治りません。

一応、病院には行くのですが、不摂生なので…。

 

  
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匿名サラリーマン様からのお問合せです。
■年齢 34歳
■性別 男
■資格 行政書士、宅建、簿記検定1級合格 
    過去に会計士受験経験あり(不合格)
■職歴 メーカー事務職9年(転職経験なし)
    経理2年半、総務5年、CSR関係2年程度
■学歴 早慶文系学部卒
■会計事務所経験 なし
■居住地 東京23区内

 

高橋先生、こんにちは。

 

いつもためになるブログを楽しく拝見させて頂いております。
早速ですが、自身の経歴から失礼します。
20代前半まで会計士受験をしておりましたが、挫折。
その後、有難い事に大手メーカー事務職として就職して9年となりますが、
その間、自身の会社が吸収合併、その後の会社が硬直的で閉塞感のある社風であるため、そういった組織への適性に不安を感じております。
 そこで、過去に会計士を目指したこともあり、専門職へのやりがい、憧れがあり、現在、司法書士か税理士を目指そうか迷っております。

 

 

ただ、両資格を自身の調べた限りでは、下記の抽象的な感度しか得られませんでした。

 【司法書士と税理士】
・試験期間:司法書士は1発勝負であり、税理士よりも短期で済む可能性が高い。
・独立、一人前になるための就業期間:これも司法書士の方が独立に至るまで税理士よりも短期間で済む。
・事業規模:一般的に税理士の方が大きくしやすいと感じる。
・雇用者の待遇:事業規模と関連して税理士の方が多額になりやすい。
・業務の性質:各資格の独占業務から、そこに付加価値を与える事を考えた場合、税理士の方がより高い価値(経営、財務、資産コンサル等)を与えやすいのでは?と感じました。

司法書士も現在は、登記業務から派生して様々な業務が可能ですが、司法書士業務が公益性がより強く、それがコンサル業務の足かせになる面があるのではないかとも懸念しております。
ただ、司法書士自体は街の法律家として、誰かを助ける事ができるやりがいもあり、どちらを目指そうか結論が出せません。

 

また自身の適性として数値関係は苦手ではないものの、感覚は鋭くないと懸念しております。
税理士業務は、過去の経理経験から、理論よりもさらに数値感覚が鋭くないと務まららないとも思料しております。

 

Q.
あくまで最後は、自分が何がやりたいかで決めるべきですが、各資格を選ばれた方の経験等や私の経歴からの適性等の意見を頂けましたら幸いに存じます。

 長文失礼いたしました。よろしくお願いいたします。

 

 A.

大企業でも安泰はなく、合併や再編で自分の力と関係がなく職場環境が大きく変わる時代で大変ですね。お疲れ様です。

 

もっとも、士業もいつの間にか、組織化が進み、税理士法人TOTALでも、会計事務所の吸収合併を3回も行っています。今も、新たな継承先を求めています。
(幅広く、いろいろな会計事務所さんをお待ちしています。
引き継いでもらってもいいとお考えの税理士先生、お気軽にお問い合わせください。
国際税務が得意な事務所だと最高です。マニアックなのでおられないですよね)

 

会計事務所の吸収合併の場合、吸収された側の会計事務所のスタッフがほとんど残らないといった事例もたくさんあります。合併が成功するかどうかは、吸収された側の人間をいかに生かすことができるかがカギでしょう。
(最初から拠点とお客様だけが欲しくてスタッフはいらないという戦略の大手会計事務所さんもありますが)
税理士法人TOTALの場合、合流されたのは3事務所 計27名で、現在までおやめになった方は2名なので かなり残ってくれて助かっています。

M&Aの場合、どうしても吸収された側の社員に、企業文化・システムの違いなどから精神的な負荷がかかり、モチベーションも下がりやすくなります。被害者意識を持つ人も出てきます。
ただ、通常は、より大きくて力のある企業に吸収されるので、選択肢も増えるし、くすぶっていた人などは新しい環境でより生きることもあるはずです。過去を懐かしんで振り返るより、新しい文化に合わせる努力が求められます。
 逆に、経営者としての私は、吸収される側の事務所の良い点をどう生かして人、技術、文化を取り入れていくかを心がけています。

 

匿名サラリーマン様の場合も、現職でより良い仕事を目指される道もあるとは思いますが、当サイトの趣旨からこの記事ではあえて割愛いたします。

 

私は税理士で、妻は司法書士をやっています。
実は私は、独立前後の暇な時期に司法書士試験の勉強をしたことがあります。 
根性なしですぐに挫折しましたが。

 

 匿名サラリーマン様の両資格の分析はかなり正確な気がします。 細かいですが、いくつか補足

 

 (1)「街の法律家」
弁護士の人数は、司法書士の人数より多いにもかかわらず、弁護士は大都市に偏在する傾向があるのに対して、司法書士は登記の専門家としての側面から、法務局・支所・出張所所在地を中心に各地域におられて活躍しています。

一定金額以下の裁判活動等、「街の法律家」という側面は都内では小さく、郊外や地方でより生きます。

成年後見人等の地域密着型の仕事も司法書士の方が税理士よりやっています。

 

 

(2) 事業規模
最終的な事業規模は、マーケットサイズから考えて、税理士の方が大きいと思います。ただ、司法書士もそうはいっても300名級の事務所もありますし、実は有資格者を採用しやすく、拠点を増やすことが容易です。

私は2人目の税理士を採用するのに7~8年を要しましたが、妻はそれよりはだいぶ早く2人目、3人目の司法書士を採用しています。

 

海軍にたとえて言うなら、

<税理士>
駆逐艦 → 巡洋艦 → 戦艦 と 一つの船を大きくする大艦巨砲主義が多い
(BIG4を含む大手はほとんど東京の本部に数百人を抱えています)
1拠点に大きな信用力をまとめて、資産税や国際課税、上場関連等の高付加価値業務を受託した方が利益を上げやすいからでしょう。
かなり大きな会計事務所も拠点は実質1か所だったりするのが際立った特徴です。

参照)「税理士事務所・税理士法人ランキング

 

<司法書士>
拡大するに当たっては、駆逐艦を多数保有し、イージス艦がコントロールする艦隊の構成を目指していることが多い。

 

 

適性ですが、

<税理士>
(特定の)お客様に好かれるかどうかです。
お客様のためにどこまで深くかかわって、どこまで尽くして、どこまで深く信頼していただけるか。
そのためには、叩き上げた数値的感性とサービス精神が必要です。

 

<司法書士>
誠実な人柄で、いかに多くの人から信頼してもらえるかです。
安定した確実な事務処理能力と論理的思考力(リーガルマインド)が必要です。
過剰なサービス精神は、不動産業者さんに振り回されたり地面師にだまされて懲戒を食らいかねないなど、むしろ危険です。ある種の潔癖さも求められます。

 

専門家として求められる、(1)専門知識・技術 と (2)コミュニケーション能力 のうち

税理士  : (1)専門知識・技術 < (2)コミュニケーション能力 
司法書士 : (1)専門知識・技術 > (2)コミュニケーション能力 
です。

 

意見をとのことなので、
 妻(司法書士)は、「迷うようなら司法書士」とのことでした。
司法書士の方が、年齢のハンデがありません。40歳スタートでも問題ありません。妻の友人には40代合格、その後独立も多いです。むしろ若すぎると信用を得るのが難しかったりします。

 

===================
現在、司法書士事務所TOTALは、司法書士有資格者を募集中です。
仕事は安定して増え続けてています。金融機関、安定した不動産会社さん、個人相続、そして税理士法人TOTALからの仕事が多く、まずはしばらく船橋駅前オフィスで学んでもらって、もしかしたら将来、希望があれば他の拠点(新宿、横浜、千葉、大宮等)に移ってもらうなんてこともあるかもしれません。
===================

 

 

  私は、そうですね、はっきりとした根拠はないのですが、文書を読んでいてなんとなく、司法書士の方かなあという気もします。あくまでもなんとなくです。

 

ここまで書いておいてなんですが、他人の意見は参考程度にした方が良いでしょう。
私は就職活動の際の「適性検査」で、向かない仕事 №2が「会計事務所職員」と分析結果がでました。
それを知ってもなお私を採用してくださったM先生(「恩師の死」)には感謝しきれません。
その診断で一番の適職とされたのが「研究者の研究管理者」でした。
会計事務職員が、作業を繰り返し飽きずに正確にこなすのが重要なら、飽きっぽくて雑な私は向いていなかったと思います。
自分には何が向いているかを考え、自分なりの税理士像を目指してきました。
税法を条文からきちんと極め、経営を科学する税理士を目指し、そしてそんな税理士を育てていく…。
今、私は税理士が「天職」だと思っています。

 

どちらにするかは、もちろん匿名サラリーマン様が何がやりたいかで決めるべきです。ご自身でじっくりお考えください。

 

 

 

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また、このサイトもありがたいことに皆様のご質問をいただき、事例が増えてきました。 ご質問の前に、同様な質問が無いかご確認いただけると幸いです。

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

高橋先生
 年始で体調の優れない中、丁寧なご回答を頂きまして
ありがとうございます。
 おかげ様で両資格と業務性質について理解を深める事ができきました。直ぐには結論を出せるものではありませんが
何をやりたいかを明確にするうえでも、よい指針を頂戴でき感謝しております。
ありがとうございました。
末尾で恐縮かつ僭越でもありますが、お身体ご自愛ください。
 相談者「匿名サラリーマン」より。

2015年1月18日 5:10 PM | 匿名サラリーマン

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