転職時における前税理士事務所の評価

2015年05月05日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

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ぽんた様からのお問合せです。

■年齢 22歳
■性別 男
■資格 簿記2級
■職歴 なし
■学歴 早慶上智
■会計事務所経験 なし
■居住地 首都圏

はじめまして。
現在、新卒として就職活動中の大学生です。
就職活動を進める中で、色々考え、税理士資格を目指したいと考えるようになりました。

しかし、税理士資格を持っておりません。

BIG4などの大きな事務所ですと、仮に採用されても補助に終わってしまいのではと思い、中小規模の事務所が良いかと考えております。

 

給料は安くとも中小規模の事務所に入り、仕事をしながら何科目か資格を取得し、取得後に給料の良い大手の事務所に転職したいと思っております。

Q.1
転職するにあたり、前職の事務所の規模や知名度は重要でしょうか。

一般企業だと、中小企業から大手企業は難しいと聞いています。

 

Q.2
先生の以前のブログで、事務所ごとの特徴の解説を読ませていただきましたが、転職を考えている場合、譲れない条件はあるでしょうか。

 

新卒での入社先は大切だと耳にし、慎重になっております。

ご回答頂けると有難いです。

どうかよろしくお願い致します。

 

A.1

転職するにあたり、前職の事務所の規模や知名度はほとんど関係ありません。

だって、税理士事務所はトップでも500人前後の中小企業ですから、大騒ぎするほどの規模も知名度もありません。

実際に前職の職歴の何を見るのかというと、その方の実際にやってきたことです。

記帳代行、年末調整、内訳書作成、所得税・法人税申告書作成、お客様訪問、
お客様の規模(零細、中小、中堅、上場子会社、上場)
譲渡所得、相続税申告、国際税務、医療関係、給与計算業務…、

お客様訪問を直接している数は何社か、
お客様訪問をしないで、後ろで処理した件数は何社か
システムは何か(弥生、JDL、TKC、EPSON、ミロク、達人、魔法陣、MFクラウド、freee、crew 等)

これにより、その方の経験や能力、入社後の教育コストがわかります。

(1)BIG4への転職
普通の会計事務所での経験はあまり高く評価されません。
記帳代行は少ないし、零細・中小企業もほとんどありません。
国際税務や、上場関連、SPC等に業務が偏っているからです。
このため、資格試験や学歴によるポテンシャルが重視されるのです。

(2)一般の税理士事務所への転職
一般の会計事務所で評価が低いのは、逆にSPC関連、国際税務、派遣業務主体の会計事務所などになります。

(あそこはSPC主体、あそこはテレアポ派遣などというのは受験生はあまり知りませんが、業界的にはむしろそこそこ有名だったりします。固有名詞を出すとご迷惑がかかるので、ここでは詳細は書きません)

これらは、ごく一部の会計事務所でしか扱っていないからです。

このため、BIG4以外でこれらの特定業務主体の会計事務所への就職は新卒ではお勧めできません。

 

医療関係や資産税関連は、やったことがあれば、その部門が強いか強化したい中堅以上の税理士法人ではプラス評価になります。
(零細事務所や、若手主体の事務所ではそもそも医療や資産税の業務量が少ないのでプラス評価はされません)

 

意見が分かれるのがTKC会計事務所です。教育機能をシステムに埋め込むという考え方を取っているため、新人教育コストが下がるのは良い点ですが、他のシステムと考え方や使い勝手が違い、親和性が下がるという欠点があります。
このため、TKC事務所で育った人は、TKCシステムの事務所に転職することが多くみられます。
(TKCは情報量が多く、痒い所に手が届くので、税理士法人TOTALはTKC会員ですがほとんど使っていません。TKCさん、ごめんなさい)

 

教育がしにくい零細・中小事務所ほど、経験者優遇になります。
中堅税理士法人だと、元の事務所での仕事と、その方の年齢やポテンシャルなどを総合判断します。

 

税理士試験の合格のためには、勉強時間の確保と頭の切り替えが重要になります。
受験が進んでいない場合は、家の近くの、比較的きつくない事務所で働くのはありうる選択だと思います。

=====================
税理士法人TOTALでは、前職が所長とその方だけという個人零細事務所勤務だった方から、BIG4・最大手出身者まで幅広くおられます。
仕事内容をていねいに聞いて、その方の科目状況、年齢、ポテンシャルを加味して採用しています。
医療関係、資産税関係は急速に伸びてきていますし、国際税務も増えてきており今後強化する予定です。
(SPC関連はやる予定がないので、申し訳ありませんが、単なる記帳代行としての評価になります)

科目が進んでいない未経験者も受験スタッフ等で受け入れています。
=====================

 A.2

ぽんた様
ご質問の意図を読み違っていたらごめんなさい。
下記にフォローをいただければ追記いたします。

(1)会計事務所からの譲れない条件 
その事務所が必要としている人物像に合っているかどうかだと思います。
組織ですからその目的の範囲内に入らないと採用しません。
普遍的なものはないかもしれません。

・受験勉強しない人は(向上心がないので)採用しない事務所、
・受験勉強する人は(仕事に身が入らないので)採用しない事務所

・所長・代表者より年齢が高い人は採用しない事務所(若手の所長ならよくみられます)
・新卒や20代前半は採用しない事務所(社会人教育が大変だから)

 

コンプライアンス優先か、お客様の要望優先か、
既婚者優先、独身者優先などなど、  もうその他、色々あります。

====================
税理士法人TOTALでは、従来は男性は原則として受験生か有資格者を採用しています。最近では例外の方もいます。
女性は、そういったことは一切求めません
(受験と家庭と仕事の両立は大変すぎます)。
年齢的にも新卒から50代まで幅広く採用しています。
====================

(2)働く人の譲れない条件
これも、人によって異なると思います。 例えば、

家からの通勤時間(片道30~40分を超えると生活の質が変わる)
実労働時間(必要な勉強時間を確保できるか)
給与水準

試験に対する応援(学費負担や休みの配慮)
合格したら登録させてくれるか (事務所負担か本人負担か)
担当制か、チーム制か
担当を持たせてくれるか、バックオフィスのみか
業務の幅(一般法人のみか、医療や資産税等はあるか)
お客様の規模(零細のみか、中堅以上もあるか)
教育体制(自由か、マンパワーか、ルールか)
転勤の有無
営業等をやらせてくれるか、やりたくないか
所長の人柄
上司の人柄

どんなライフプランを描くか、どれを望ましいと考えるか優先順位をつけるべき問題だと思います。

 

BIG4を除くと、新卒をていねいに育てられる事務所は限られます。
税理士業界は新卒での採用が比較的少ない業界です。
それでも、就職市場は売り手市場のため、当社を含めて新卒採用を始めるところも最近は増えてきました。
変な くせ がつき過ぎると直すのに時間がかかります。このため、新卒で教育がしっかりしている事務所(中堅以上で教育ができる事務所や、小さくてもベテランがいておだやかに教育ができる事務所等)に入れた方が良いと思いますが、一般の就職に比べれば、新卒でどこに入ったかはそこまで重要ではありません。
どの職場に勤務しても、仕事と勉強の両立を意識しながら成長してほしいと思います。
しばらくして自分と合わないな、自分のステップアップの機会が来たなと思えば転職して問題ありません。

 

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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