経理経験と会計事務所経験

2010年09月13日高橋

東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

 

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M様からのお問い合せです。
内容
■年齢 33歳
■性別 男性
■資格 日商簿記1級 税理士(簿・財・消 合格)本年 法・事 を受験
■職歴 機械製造業(一部上場)、経理・経営企画に10年 転職歴 なし
■学歴 地方国立
■会計事務所経験 なし
■居住地 関西圏
■その他、職歴について
     経理では、原価計算業務、財務諸表の一部作成、会議資料作成等の管理会計業務
     経営企画では、IR関連業務、社内プロジェクトの運営を主に行っておりました

 

私は、前職を退職し、1年半税理士受験に専念いたしました。その間、2回受験(前回3科目、今回2科目)しております。
(働きながら受験をしましたが、結果が出なかったこと、その他諸事情から前職を退職し受験に専念しておりました)
 本年受験した法人税法と事業税がボーダーラインを超え、また、ホームページ上で受験専念の期間は2年程度と拝見し会計事務所への就職活動を開始したところですが、下記の疑問点が生じております。
貴重なお時間をいただき恐縮ですが、先生のご意見を賜りたくお願いいたします。

 

Q.
1.求人票等の「会計事務所での実務経験」について
これまで、企業の経理部で原価計算を中心として管理会計や財務諸表の作成実務に携わってきました(税務申告の経験はありません)が採用側から見て、
 (1)一般企業での経理実務と会計事務所での実務経験は明らかに異なるのでしょうか。
 (2)経理実務は営業等他の職種からの転職に比較しどの程度の評価なのでしょうか。

 

2.事務所の形態について
私は町のお医者さんのように、広く全般的に業務ができる税理士を目指しています。
ところで、会計事務所には、5科目合格者が所長の税理士事務所、国税OBが所長の税理士事務所、公認会計士が所長の事務所等がありますが、
 (1)それぞれの事務所はどのような特徴があるのでしょうか。
 (2)また、私の目指す税理士像に適した経験を積む上で、どれか適当な事務所というものはあるのでしょうか。

 

3.給与について
私が就職にあたり最も重視している要素は、しっかりと業務を経験できることです。 
しかし、現実的には、生活をしていかなければなりませんし、給与も重要な要素のひとつと考えておりますが、自分の中で基準がなく困っております。
 1.にてお伺いした件に関係すると思いますが、記載した私のプロフィールのみで判断した場合、概ねどの程度の給与が妥当なのでしょうか。
 先生のご回答をひとつの基準としたいと考えております。

 

A.
文面からも聡明で、合理的に仕事が出来るという感じを受けます。試験もわずか2年で官報レベルまでこれるのは正直、すばらしいと思います。覚悟を決めて勉強なさったことでしょう。

 

1(1)経理実務と会計事務所での実務経験は異なると言う評価です。
   上場企業ほど、中小企業は会計基準は複雑ではありません。
   あくまでも、会計よりも税務、1年間の作業の流れを体験していることを実務としては評価します。
   作業には頭脳の優秀さより、経験と効率が優先します。

 

 (2)経理実務経験は
   事務作業が苦手ではないということ、会計も標準的には出来るだろうということが評価されます。

 

2.事務所の形態について
 (1)人によって差があります。ややステレオタイプで類型化すると
   ・5科目合格者:税務の知識は55歳以上でなければ最もあります。
            節税の基本的な流れ、中小・零細企業との付き合い方を学べます。
  ・国税OB    :若くして独立した人を除き、良く言えば正論、
                           悪く言えばサービス業としての自覚に欠けます。
            知識・技術は出身部署によって異なります。
  ・公認会計士 :税務の知識は最も低くなります。
           その分、大企業関連等、特殊な仕も経験できます。

 

(2)町のお医者さんを目指すなら、文句無く5科目合格者の税理士事務所です。
  町医者に求められるのは、相手の立場を親身に聞く姿勢やサービス精神です。
  また、大企業関連・特殊業務は基本的に普通の税理士にはなかなか来ません。

 

3.給与について
  通常なら300万円~400万円前半でしょう。
 実は、初年度はどんなに優秀でも、知識を獲得するのに時間がかかります。
 税理士業務は職人として覚えるだけで、普通で5年はかかります。
 (税理士法人TOTALはそれを教育システムと標準化で2~3年で出来るようにするのが目標ですが)
 専門業務のため、入社初年度の生産性は税理士の通常業務をやると、残念ながら低いでしょう。
 また、M様の場合、5科目合格目前で、独立前の腰掛けという評価もされるため
 長く育てようと思わない税理士もいると思います。

 

 初年度の実力は300万円台前半くらいと予測されます。
 その分しか給与を払わない事務所なら年収300万円です。
 通常は、家族構成や、将来の成長も見込んで多少甘く評価するはずなので350万円くらいだと思います。
 400万円以上で評価するとしたら、将来のパートナーや後継者候補として処遇する場合か
 IR関係の経験を買う公認会計士の事務所でしょう。
 (ちょっと前なら、中堅の税理士法人で普通にそれくらい払うところもありましたが)

 

 会計事務所は担当制のところが多いので、2年目以降は仕事が出来れば、
 昇給スピードが速いところも多くなります。
 上場企業と違って、、ミスしないことよりも、作業効率を求められます。

 

 ちなみに税理士法人TOTALの場合で、採用するとしたら、面接で人物を評価して、350万円~380万円スタートでしょう。
 2年目以降は、その人の仕事の質と量で評価することになります。

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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