税理士試験と会計事務所転職時期(地方公務員)

2010年10月27日高橋

東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

 

ご質問はこちらをクリックしてください。

 

S様からのお問い合せです。
内容
■年齢 29歳
■性別 男性
■資格 簿記論、財務諸表論 合格 日商簿記1級
 本年法人税法、国税徴収法を受験 現在所得税を勉強中
■職歴 民間営業職2年、現在地方公務員4年目
■学歴 地方大卒
■会計事務所経験 なし
■居住地 甲信越

 

初めまして
いつもタメになるコラムをありがとうございます。特に就職質問に関しては、一つ一つ自分の身に置き換え、手に汗握り読ませてもらっております。
 税理士試験初受験は2年前です。今年は、法人税は少し厳しく、国税徴収法は合格ラインより上にいるかな、という手ごたえです。
このような状況を踏まえ、
 (1)税法科目の合格優先
 来年6月末で退職し、そのまま8月の試験まで勉強し(今年の結果により法人・所得・国徴の中から2科目ないし1科目)、すぐさま8月中に会計事務所への就職活動
 (2)会計事務所への就職優先
 本年12月の結果が出しだい、税法の合格科目があってもなくとも、退職しそのまま会計事務所への就職活動で悩んでおります。

 

(1)の場合、勉強優先する代わりに30歳に到達してからの就職活動になり、年齢での印象が多少悪くなるかもと考えます。

また、(2)の場合20代のうちに就職活動する反面、来年の試験は就職後の仕事に対する「慣れ」がないため、十分な準備は難しくなるでしょう。
 現職が公務員で会計事務所での経験もないため、面接等で厳しい状態になることは覚悟済みで、採用されるまでは県内、首都圏も視野に入れて活動していく気持ちです(会計の分野で生きると決めていますので、意思を強くもって行動する予定です)。

 

Q.
今年の試験結果次第で微調整をしますが、現時点で(1)と(2)の案を見比べた場合、先生ならどのように行動するか、ご意見いただければ幸いです。

 

追伸:税理士の業務をこなしながらこのようなHPの運営、大変かと思います。自分自身でも趣味のHPを持っておりますが、一つ一つのネタを更新することは自分の生活時間を犠牲にして行うことなので、大変さが伝わります。ただ、会計事務所への転職を考える人たちにとっては、斬新でかつ役に立つHPだと思いますので、これからも頑張ってください。

 

A.
地方公務員という安定した職種を捨てて、会計業界に来る強い意志がおありとのことですよね。

 

科目選択が、法人税法・所得税法・国税徴収法というのは比較的珍しいと思いますが
必須選択を何とか一つ早めに決まりをつけて、最後はミニ税法に振り替えても良いという意図でしょうか。

 

税理士試験の場合、個人差はありますが
法人税が最難関で、次いで所得税又は相続税 離れて消費税 小差でその他税法
さらに離れて簿財という難易度です。

 

私なら受験結果によって、選択を機動的に考えます。
a.法人税法・国税徴収法2科目合格の場合
 (2)の就職を選びます。仕事を覚えるのに5年近くかかりますし(税理士法人TOTALでは2年で覚えてもらうのが目標ですが)、その間に働きながらでも1科目ならなんとかなるからです。
この場合、状況によっては早めに所得税受験をあきらめてボリュームの少ない週一科目に変更することも視野に入れます。

 

b.国税徴収法のみ合格の場合
 (1)の試験専念を選びます。法人税法と所得税法を同時に受けるのはきついですが、やりきればどちらか一つ受かる可能性は高いと思います。この2科目はどこかで一度本気で詰めないと合格しません。
その後は残った科目が所得税なら、そのまま官報合格を目指します。法人税法が残った場合、法人税法の成績次第で、週一科目への変更も視野に入れます。

 

c.法人税法のみ合格の場合(このパターンは可能性は低いかもしれませんが)
 (1)の試験専念を選びます。国税徴収法と所得税法の受験なら専念すればどちらかは受かる可能性は高いでしょう。ラスト一つなら仕事と受験の両立のモチベーションが上がります。

 

d.不幸にして両方ダメな場合
 人生をかけて絶対に何が何でも税理士になると言うなら(1)受験専念、
そうでないなら、現職にとどまって受験を続けます。
 地方公務員の仕事は、セクションにもよるでしょうが身分を安定させて、時間の自由が利いて
仕事と受験の両立が可能です。もう一年間税理士試験の適性確認を兼ねて在籍しても良いかもしれません。
 (2)の就職はあまりピンときません。税法合格者と簿財だけの者では採用される会計事務所の範囲に差があるし、
 仕事との両立に失敗すると官報まで行けなくなる危険性があります。
 (地方特有ののんびりした、勉強しやすい定時に帰れる50代の先生の会計事務所を家の近くで見つけられれば別です。この時期、6時前に事務所の電気が消えていればそこに履歴書を出してもかまいません)

 

会計事務所の採用は、公務員や大企業と違って、(BIG4等を除けば)若さは絶対ではありません。
 税理士法人TOTALの場合でも、現在在籍している男性社員のうち、
 会計事務所未経験者は10名いますが、そのうちの6名が30代入社です。
 入社時の平均年齢は31歳になります。
 (業界の平均よりは高いと思います。これは、男性は税理士になれそうな方しか採用しないという当社の方針によるところもあります)
S様の場合、あと1~2年だけ比較的自由度が高い選択ができると思います。

 

 悔いがない選択を!

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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