税理士試験4科目持ち、会計事務所経験者の転職

2012年04月12日高橋

東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。

確定申告は終わり、3月決算5月申告を控え、スタッフも頑張ってくれています。

 

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M 様からのお問合せです。
内容:
■年 齢 38歳
■性 別 男性
■資 格 簿記論・財務諸表論・消費税法・法人税法合格
相続税法受験2年目
■職 歴 店長2年、経理2年 その他 4年
小規模会計事務所6年(顧問先担当)
■学 歴 地方国立大卒
■居住地 大阪
■その他、特殊事情 既婚、子供なし 年収380万円

 

現在個人の会計事務所(従業員数10名)に勤務しています。

職場自体に不満は無いのですが、社会保険未完備などの待遇の低さ、事務所レベルの低さ(現在、公認会計士出身の所長以外に有資格者はいません)から転職を視野に入れています。

 

志向としては、法人税や相続税の知識を活かした多彩な業務を経験できる職場へ転職したいと考えています。現在のところまだ独立志向は少なく、勤務税理士としてより経験を積んでいきたいと考えています。

 

そこで問題になるのが年収です。家族もちなので、より高い年収を得たいです。ただ先ごろ会計事務所専門の人材バンクに問い合わせたところ、私の年収相場は400万円くらいとのことでした。

 

Q.1

① 今すぐ転職して少しでも待遇が良く、業務レベルの高い職場へ移る

② 税理士試験の残り以1科目を合格し、税理士資格を取得した上で転職活動する

どちらが良いでしょうか

Q.2

私の経歴で税理士資格有だと年収500万円くらいは望めるものでしょうか

 

会計事務所全体としては、お客様が中小企業であること、競争が厳しくなっていることから構造的に売上が減少しています。

このため、求人数が減っており、買い手市場の傾向が続いていました。

専門学校の求人誌を見ると、リーマンショック前に比べて、募集会計事務所数が半分以下になりました。

このため、他の業界同様の極端な就職難がしばらく続いています。

また、価格下落に伴って、一人当たりの付加価値が減り、給与水準も下がる傾向にあります。社会全体の平均給与が412万円(平成22年)、中央値に至っては300万円台半ばまで下落しているので、やむを得ない面はありますが。

 

ただ、税理士業界固有の問題として、2005~2008年頃の公認会計士バブルで、公認会計士試験に大量に若手を取られたため、税理士業界に試験勉強が進んだ優秀な人材がほとんど入ってきていません。公認会計士・公認会計士論文式試験合格者の税理士事務所への就職、公認会計士試験受験生の税理士業界への転身もほとんど進んでいません。

 

このため、このあと数年後から、実務経験者や科目合格者、税理士有資格者の取り合いが起きる可能性があります。

 

ここ数年の就職難でどうしても求職者は弱気になりますが、そろそろ底が見えて反転が始まろうとしています。

税理士業界も、(税理士法人TOTALを含めて)今も10~20%の事務所は売上が増えています。実は、「最近は人がいない」「特別優秀な人でなくて良い。普通の人で良いのだけど」とぼやいている中堅の税理士事務所の所長も多いのです。

コミュニケーション能力があり、実務経験か知識が豊富な方は、伸びている会計事務所では是非とも欲しい人材なのです。

 

A.1

(1)今の会計事務所が暇で、勉強時間が確保できるなら

ここまで来たら、出来れば今年合格するつもりで、相続税は合格しましょう。

もし合格の手ごたえがあれば、試験後すぐに転職活動をしましょう。合格発表を待たずに、早めに動くのがお勧めです。

もし、合格の手ごたえがなければ、もう1年だけ今の職場で必死で勉強しましょう。環境を変えるリスクをとる場面ではないと思います。

 

(2)今の会計事務所が忙しく、勉強時間が確保できないなら

6~7月に履歴書を送って早めに転職活動をしましょう。場合によっては、もっと早めに退職して8月再就職でもかまいません。

 

 

A.2

一般論で言うなら、経験6年、4科目持ちの会計事務所職員の平均は、社会保険加入で400万円台前半~450万円だと思います。

人材バンクは、転職を決めて手数料をもらうというビジネスモデル(人材紹介ビジネス)なので、成約しやすくするために求職者には多少低めの数字を提示したのかもしれません。

現状の社会保険なしの年収380万円という数字は、社会保険加入なら340万円ですから、いかにも安いと思います。

ただし、給与の高い安いは、基本的にはその方の生み出す付加価値(一人別売上)に左右されます。

 

社会保険加入なら、担当制でほぼ自分で完結するなら、給与は売上の平均30%弱~35%くらいです(きちんとした分業制なら20~25%)。

 

多くの会計事務所では、給与は2年目以降、年功序列の要素が少ない実力主義となります。
外回り(税理士業界では「巡回監査」ということが多いです。)担当者は、社会保険完備の会計事務所・税理士法人で、自分の売上の20%~35%くらいを給与としてもらいます。
社会保険未加入の会計事務所(M様はこれですね)で、売上の35~40%弱が平均的です。

比率が低いと感じるかもしれませんが、社会保険(15%くらい会計事務所負担があります)、通勤手当、福利厚生、間接要員、新人養成、退職補充コストを考えると、これでも労働分配率・総人件費率は50~60%くらいになり、かなり労働分配率が高い産業です。

 

この比率は、外回り担当者がどこからどこまで業務をしていたか、言いかえると管理者や作業補助者がどれくらい手伝っていたか、

社会保険、税理士試験受験費用等の法定福利、福利厚生(専門学校の学費等)がどれくらい充実しているかによって変わります。

この水準を

大きく上回っていたら給与のもらいすぎ(先生は泣いています)。

大きく下回っていたら先生が搾取しすぎです。

実際には、組織への定性的な貢献、忠誠心、縁の下の力持ちだったか、スタンドプレーヤーだったか等も加味して、もう少し幅を持たせて25%~40%弱で給与を決めることが多いでしょう。

 

M様の売上が一人完結型で1000万円を大きく超えているなら給与は低いかな。

 

 

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追記)

M様の個人売上は1500万円だそうです。社保なしの分配率25%(社保込みなら23%相当)は残念ながらかなり低いと思います。

ちなみに私は、最初の勤務先は(15年も前ですが)、辞める年は売上2000万円弱、給与400万円の、20%強でした(独身だったし、仕事も楽しく、当時なにも不満はありませんでしたが)。

年功序列の給与体系で、古参スタッフが多いと、中堅・若手が低い分配率になります

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個人会計事務所は、社会保険の加入義務はありませんが(税理士法人は加入義務はあります)、家族持ちに社会保険未加入はつらいですね。

 

一般論で言うなら、経験7年税理士の給与は 450万円~で500万円位が転職市場の中央値だと思います。もと様の場合、資産税や医療、コンサル等の特別な高付加価値業務をやっていませんので500万円は望めるとは思いますが、大きく超えることはないと思います。

会計事務所経験者の転職の場合、金額はやってきた仕事の中身次第です。税理士有資格者を採用するときは、具体的に何をしてきたか、何ができるかをチェックされると思います。

 

また、入所後の給与水準は、言うまでもなく、その後の仕事の成果によります。

 

まずは、試験勉強を夏まで頑張って30代のうちに転職することをお勧めします。

 

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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