会計事務所の就職 と うつ病
2015年08月30日/ 高橋
税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。
税理士法人TOTALの10本部目 池袋本部がオープンしました(地下鉄出口0分!雨でも大丈夫?)
本部長をはじめ、スタッフのみなさん、引越し、お疲れ様でした。
9月からグループ全社では9人の新人が入社してくれました。たくさんの仲間が増えています。
今はガラガラの池袋本部も、いつか、いっぱいになる日が来ることと思います。
ますます、お客様に愛され、お客様のお役に立てるようがんばります。
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T.M様からのお問合せです。
■年齢 30歳
■性別 男性
■資格 簿記論、財務諸表論、全経上級
日商PC検定試験3級
■職歴 スーパーの品出しとお客様対応を1年間、
郵便局での年賀はがきの仕分け作業
■学歴 関関同立文学部
■会計事務所経験 なし
■居住地 関西地方
専門学校で受験専念として3年間在籍し、
今年8月に消費税法と相続税法のそれぞれ二回目の試験を受験しました。
来年は法人税法を受験するために4年目の在籍をし、会計事務所への就職をする予定にしています。
来年の就職活動をする頃には31歳になります。
大学を27歳で卒業し、その春からすぐに専門学校で勉強を始め、今年で3回目の税理士試験を終え、消費税法と相続税法の結果待ちの状態です。
相談したいことは、来年の就職についてです。
大学を27歳で卒業したのですが、大学の卒業が遅れた理由は、留年したということではなく、高校時代にうつ状態(ちなみにうつ病ではありません)になり、学業を続けていけなくなり、中退を余儀なくされました。
17歳の時(一般に高校3年生の時)に大検を取得し、その後療養しながら大学受験を目指し、独学で勉強し、23歳で大学に入学しました。
大学在学中に就職の時期が迫ってきたため、仕事のことを考えた結果、専門性のある仕事を希望していたこと、社会貢献をより実感できる内容の仕事をしたいと考えたこと、自分の能力等を考慮して、一般企業へ就職をせずに、税理士を目指したいと考え、卒業と同時に専門学校で勉強を始めました。
Q.1
このような経歴のため、目的達成のためにやり遂げるという意志力があることには自信を持っています。一方で、就職面接の時に経歴のことを聞かれた際に、大学入学までのブランクについて、ごまかさずに正直に話したいと思っているのですが、正直に話すのが不利になるのか、あるいはごまかすと不利になるのか、アドバイスをお願いいたします。またその他就職の際不利にならないよう気をつける点などがありましたら、教えていただけると幸いです。
Q.2
3回目の受験を終え、自己採点の結果、相続税法の合格可能性が高く、12月の時点で、おそらく3科目取得が有り得る状況です。しかし、仮に不合格の場合、取得科目が二科目、社会人未経験、来年の就職活動の時点で31歳という条件ため、就職が厳しいのではないかと不安を感じています。
どちらにしても、受験専念は来年で終え、来年までの残り一年間で法人税法を合格レベルにまでとにかく引き上げ、就職のためにできるだけのことは何でもやろうと思っています。特に、上記で述べました事情により、社会人経験がないため、この一年でマナー教本を読んで、社会常識やマナーを身につけるといったことを、過去のこちらのTOTAL様の質問に対する解答を参考にさせていただいたことで、私も行おうと思っています。
そこで、これら以外に就職に向けてしておいたほうがいいことその他気をつけるべき点などがありましたら、アドバイスをお願いいたします。
A.1
うつ病は、世代を問わずに発症する病気です。
日本では、10に1人、生涯のうちにうつ病を経験するといわれています。
世界的にみると、16~64歳の労働者に占めるうつ病経験者の割合は、日本10%、アメリカ23%、イギリス27%で、日本は欧米の半分以下という結果もあります。
ただし、これは日本は海外ほど深刻ではないという意味ではなく、欧米と日本では、うつ病を疑われる際の病院への行き方、診断の仕方の差だとみた方が良いかもしれません(日本人は頭痛や食欲不振では精神科には行かないですから)。
日本は韓国等についで自殺率が高い国で、精神疾患が少ないとも、ストレスが少ないとも思えません。
国(厚生労働省)も、精神障害を原因とする労災認定件数の増加を受け、労働安全衛生法を改正して、
1.従業員数50人以上の全ての事業場にストレスチャックを義務化
2.高ストレス状態かつ申出を行った従業員への医師面接
3.医師の意見を聴いて必要に応じた就業上の措置
が求められるようになりました。
会計事務所も、ストレスの少ない仕事ではないので、うつ病やそれに準ずるうつ状態にはなることもあります。専門職で責任のある仕事、対人的コミュニケーションが求められる仕事でありやむをえません。
統合失調症等と異なり、うつ病は治癒可能な病気であり、それ以前のうつ状態だとしたら、ストレスをコントロールすれば、発症を抑えることは出来るはずです。
ただ、何処の職場も成果にうるさくなっており、営業力が強すぎたり、教育の仕組みがなかったり、管理が行き届かない税理士事務所・税理士法人も多く、うつに近い症状が出る方もいます。
このため、残念ながら、うつ状態であったことを正直に言うのは採用では不利になるでしょう。
また、嘘を言ってごまかそうとしても、年配の面接官をごまかすのは、若いT.M様には難しいし、不誠実な対応だとさらに不利になるでしょう。
聞かれたら、真実を話すしかありません。その際には、うつ状態ではあったが病気(うつ病)ではなかったこと、今は健康上特に問題がないことは伝える必要があります。
A.2
税理士事務所・税理士法人の採用のポイントは、
1に人柄(性格やポテンシャル)
2に税理士試験の進捗具合
です。
来年の試験までは、まずは合格目指して一生懸命勉強してください。
相続税法が不合格なら、来年の試験後に「必ず合格しています」と面接で言える成績を取ればいいではないですか。
昔ほど、2科目か3科目かは重視されません。
(採用のラインが3科目から2科目に下がってきています)
働き始めると、「仕事と勉強の両立」は大変です。それ自体がストレスになります。1科目でも合格科目を増やしておきましょう。
お守り代わりに、マナー本や面接本を読むのは止めませんが、入社内定後でもマナーの勉強の機会はあります。試験勉強以外のことはあまり試験前にはする必要がありません。
試験が終わったら、最低限の面接本を読むこと、それ以上に重要なのは、向いている税理士事務所をさがすことです
プレッシャーのきつい事務所、離職率の高い事務所は最初に就職する事務所としてはT.M様には向かないと思います。
T.M様の場合は、多少給料等の条件は劣っても(給料が高いところはその分、負荷も高くなっています)、のんびりスタートをさせてくれる事務所をさがした方が無難でしょう。
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会計事務所の夏の採用シーズンが終わり、若くて勢いのある税理士事務所の経営者のみなさんとお話しする機会がありました。
採用については、事務所によって大きく方針が違います。
・多めに採用して、実際に仕事をさせて合わない人を半分振り落とす事務所、
・入り口で精査して、あまり振り落とさないよう努力する事務所
・とりあえず採用して自然淘汰にまかせる事務所
これもどれが正しいというより、事務所の性格に合わせて経営者が選んでいっています。
うちは、私が採用に初期から携わっているのですが、中堅税理士法人ではかなり珍しいようです。
もっと「経営」をやれ! という意見をいただきますが、
「人」が企業の財産であり、最も重要だと考えています。
昔、私は何度か失敗しました。成長してもらいたいという思いで強いプレッシャーをかけてしまい、辞めていったスタッフもいます。
10年くらい前に1人、うつ病を発症したと思われる20代前半の若者がいて、治療のために親元に帰るように言って辞めていただきました。その後、地方に帰った彼は、病気を治し、仕事をセーブしつつ勉強を続け税理士になり地元の中堅事務所の中核として頑張っておられます。
彼の官報合格を知った時に、ほっとしました。この件ではおおいに反省させられました。
私が、うつ状態をよくわかっていなかったのが問題で、私がしっかりしていれば彼は苦しまずに済んだのかもしれないのです。
失敗を反省していくつかの取り組みをしています。
税理士法人TOTALでは、うつ状態経験者も、それなりに採用しています。
法律に先駆けてストレスチェックテストも行っていますし、問題がある人には管理者に無理をさせないように指示をして、周囲に気をつかわせています。
それでも精神的にきつくなってお辞めになられる方は今もいます
「みんな違って、みんないい」のです。
スタッフ一人一人をよく見て、きちんと段階を踏んで成長してもらうしかなさそうです。
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