税理士試験受験に理解がない会計事務所
2011年12月01日/ 高橋
東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。
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今回のご質問とは関係ありませんが、私が質問で一番困るのは、ご自身の経歴を書かれて、
「私でも採用されますか?」という形式のものです。
それは私よりも、希望する会計事務所に応募してみるしかありませんよね。
それでは、T様よりのお問い合わせです。
内容:
■年齢 27歳
■性別 男性
■資格 なし
■職歴 中堅監査法人でアルバイト半年
■学歴 日東駒専
■会計事務所経験
■居住地 それ以外の地方
大学3年から会計士試験の勉強をはじめ、26歳まで受け続けましたが短答式に合格できず地元の税理士事務所に就職しました。
就職してしばらくは未練があり会計士受験を続けようと考えていましたが、会計士試験が働きながら合格できるような試験ではないことは十分わかっており、税理士事務所に入所し税理士補助業務をしていることから税理士になることを考え始めました。
まずは簿記論・財務諸表論の勉強をしようと思っていましたが、所長は職員に税理士は必要ないらしく実務の実力もないうちに税理士試験を受けるなんて言い出すと解雇される可能性が高いので2年目以降から勉強しはじめたほうがいいと番頭の総務の女性に言われました。私も1年で解雇されたくはないので1年間は我慢してそろそろ受験勉強しようと考えていますが、それでも2年で解雇される可能性もありそうなのでかなり不安です。税理士試験を受験している人は1人もいません。税理士試験を受けることで職場にいずらくなるのも嫌です。
所長は、税理士法人化は考えていません。所長の御子息で後継ぎはいなく御兄弟が税理士開業されておりそちらの御子息の二人のうち1人が数年後に後継ぎとして入所してくる可能性が非常に高く身内でない職員が現在の事務所で税理士として活躍するチャンスはあまりなさそうです。
私は税理士業界で生きていくのなら税理士になりたいと思っています。来年の税理士試験は受験しようと思っておりますし、実務経験と税理士試験の合格科目は3科目くらいになったら将来パートナーになれるような中堅の税理士法人に入所したいと思っております。今のところ独立したいというより尊敬できる代表社員の基で一緒に事務所を大きくしていくようなスタンスが自分の性格からして合っているような気がします。ですから将来的には組織化を推し進めているような職員20・30人ほどの税理士法人に転職したいと思っています。地元の税理士法人より都内の税理士法人が希望です。
Q.1
解雇や職員間の意識のズレなどのリスクがあるこのような現状で来年の税理士試験を受験して事務所内でうまくやっていけるのかどうか不安です。本当は最低3~4年はやって仕事の基礎部分を身につけてから次の事務所に移りたいと思っていますがあと一年受験できないで待つのは苦痛です。私がこれからこの事務所で税理士受験を続けながら数年間やっていけるかどうか高橋先生の意見を伺いたいです。
Q.2
来年受験をするために2年で辞めるということに対して税理士業界ではどのような評価になるでしょうか?
会計事務所への転職で不利になる点はありますか?
A.1
さて、今回も、回答が大変遅くなってしまった件です。T様、申し訳ありませんでした。
公認会計士試験の難易度の、ここ数年の急速な揺り戻し、就職難の結果、税理士業界に移られる方も少しずつ増えています。
公認会計士試験受験生の方は、税理士試験受験生に比べると若い方が多く、勉強も簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法はある程度の知識をお持ちでしょう(勉強の進捗状況によりますが)。
税理士試験受験生の場合、私は、余裕があれば3科目受験経験後くらいの就職が良いと思っています。公認会計士試験の受験生だった方の場合、仕上がり具合によってはT様のように、合格科目がない段階での就職もありうると思います。
来年は何としても税理士試験を受験し、合格しましょう。
公認会計士試験を5年勉強していますので、簿記論・財務諸表論はほぼ合格レベルのはずです。ただ、簿記論あたりはスピードが必要なので、1年でも若い方が有利です。年々、記憶や知識の劣化の面で不利になります。税理士試験固有の論点や、試験委員対策を含めて適切に対応し、来年の合格を目指すべきです。
その際、今の税理士事務所には、試験直前まで受験の事実は伏せていた方が良いと思います。
税理士事務所の所長は、税理士試験の受験に対して2タイプあります。
① 仕事優先
給料を払う以上、仕事が優先が当たり前、試験は、一人前になってから空いている時間でするべき。
② 税理士試験に配慮
(もちろん仕事も大切だけれど、)受験生にレベルの高い良い仕事を、モチベーション高くしてもらうためには、勉強への協力は欠かせない。
どちらが正しいというものではなく、その税理士事務所の方針を理解したうえで受験生が選んでいけばいいと思います(もっともその辺がオープンになっていなかったり、そもそも昨今の就職状況で選ぶ余裕がないのが実情ですが)。
T様の勤務する税理士事務所は①で、このタイプの事務所には、昔ながらの良いお客様を多く抱えるところも多く、給与水準も居心地も会計事務所としては悪くないケースも多く見られます。職員の定着率も良く、年配の方が多く残れます。T様の場合も、税理士試験を受けることを認めてもらえるのなら、あと1~2年勤務して、その後に転職を再度考えても良いかもしれません。
もっとも、そのことを考えてもなお、今の会計事務所で働くこと自体が精神的に苦痛だ、ないし誠意を持って所長に説明して、入所2年たってもなお税理士試験受験を許可されないというなら、税理士試験の「前」後を通じて、会計事務所への転職活動を行うことをお勧めします。
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税理士法人TOTALは、②です。家庭との両立を目指す主婦のスタッフを除くと、極力勉強してもらいたい、可能なら全員有資格者になってもらいたいと思っています。
このため、受験費用な専門学校の学費を負担したり、試験休みを設けたりしています。また、私自身、受験勉強をさぼっていそうなスタッフには「勉強している?」という声がけを日常的に行っています。逆に勉強せずにのんびり働きたい人にはつらいかもしれませんね。
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A. 2
仕事優先の事務所(①)では、受験を優先してまた不満が出ると評価するでしょう。2年というのも微妙に短いと感じるかもしれません。
税理士試験に配慮する事務所(②)なら、辞めた理由が受験の不許可だと聞けば納得するでしょうから評価が下がることはないと思います。
税理士事務所とのミスマッチのために辞められる方がたくさんいるのは残念なことです。
「こんなはずではなかった」と言うことのないように
次の就職活動は(受験がある程度進むまで今の税理士事務所に残ることも含めて)
自分が何をしたいのかを見つめるとともに、その事務所はどういう方針なのか情報を集めて悔いのない判断をしてほしいと思います。
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