40代半ば税理士有資格者の金融機関から会計事務所への転職

2019年06月02日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

 

「40代半ば税理士有資格者の金融機関から会計事務所への転職」

 

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ひこにゃん様からのご質問です。

■年齢 43歳
■性別 男性
■資格 税理士官報合格(簿記論・財務諸表論・消費税法・所得税法・相続税法)
■職歴 信用金庫で勤続20年
20年の内訳は、営業担当は2年。本部7年勤務及び営業店の内勤11年。現在、支店の融資役席。
■学歴 地方の公立大学卒
■会計事務所経験 なし
■居住地 近畿圏

色々、調べていて、このホームページにたどりつきました。
信用金庫に勤めながら十数年でようやく、税理士試験に合格しました。受験のきっかけは、当時、営業が苦手で、このまま信金で仕事を続けられるかどうか不安をもったためです。
簿記・財表は2年で合格したのですが、税法で時間がかかってしましました。いつしか、合格することだけが目的になっていた気がします。そのため、受験生活の間、転職を考えたこともほとんどありません。そして、合格し、税理士として社内では、資格を活かした仕事がないということに気が付きました(実際、合格しても仕事内容は変化していません)。一方、予備校・青税の合格祝賀会に参加して税理士の先生と話しをするなかで、税理士として仕事をしたいという思いが出てきました。転職活動として、HPで調べて履歴書を送ったところ、実務経験なしでも内定は頂けています。そこで質問です。

 

Q.1
現在の年収は、700万円前半ですが、提示される想定年収は400万円です。正直言って、この水準では生活は苦く、貯金を取り崩すことになります(妻・子供1人)。実務未経験では、これくらいが相場なのでしょうか?将来の収入の伸びしろは、あるのでしょうか?この業界に飛び込むかどうか悩んでいます。

 

Q.2

経験を積むなら、小規模な10名未満の事務所か、50名程度の税理士法人かどちらがいいのでしょうか?どちらからも内定を頂いています。小規模事務所の先生は、ミッチリ教えるとのこと。

よろしくお願いします。

 

A.1

先日、金融庁の大幹部で金融行政をグランドデザインする方とお話しする機会がありました。

地方の金融機関の経営者の危機感の無さを嘆いておられました。

その直後に、 金融庁から地域金融機関に財務健全性の確保を求める「早期警戒制度」の改正案が公表されました。
日本銀行のマイナス金利政策・世界的な金融緩和で金融機関の収益環境が悪化しています。将来的にもFinTechの分野はITベンチャー企業に勝てないでしょう。体力の弱い地方金融機関の経営陣の交代・統廃合は避けられそうにありません。地方銀行や信用金庫の存在価値は何かという問題が突き付けられています。
ただ、突出した行動をとっていたスルガ銀行や西武信金が脇の甘さで問題になる状況で、それでは果たしてどうやって生き残るのか かなり難しい状況です。

 

会計事務所には最近、地方金融機関から営業ノルマを嫌った女性の転職者が増えています。安定した地域密着の転勤がない事務系の仕事として選んでいただいているようです。

 

ただ、男性の40代での地方金融機関からの転職はまだ多くありません。

 

会計事務所の場合、大企業ではないので給与の相場はあってないようなものです。
個人的には年収400万円ならこのタイミングでの転職には私は反対です。
勤続20年になると給与はそれなりに高くなっており、また、家庭もちょうどこれからがお金がかかる時期のはずです。転職に失敗すると家庭崩壊の危険性もあります。

 

400万円という金額は、会計事務所未経験の有資格者の相場としては普通かもしれません。短期的に一担当者としては大きな成果を出すことは難しいでしょうから(金融機関なら20代から30代前半でやるような仕事になります)。

ただ、一つの金融機関に勤めたきちんとした社会人経験がある点を加味すると若干安いような気もします。金融機関出身者は、採用の段階で選別され、組織適性が高く、責任感もあり、事務処理能力もある方が多いように思います。

 

もしひこにゃん様が40代で転職するなら、先に税理士登録ができる状態にして(金融機関勤務者は会社にかけあえば実務要件を満たす就労証明が出ることが多いはずです)パートナー候補として転職することをお勧めします。その場合は、金融機関出身者であることも営業上プラス評価になるので相場は500万円~800万円くらいになるはずです。

税理士登録ができても400万円でしか採用されないとしたら営業力・管理能力については期待しないというのが採用する所長の評価のはずです。

その場合は、独立する気が強いのでなければ、残念ですが子供が成人してお金がかからなくなるか、役職定年で給与が下がるか、不幸にしてお勤めの信用金庫の経営が傾くまでは転職しない方が良いかもしれません。

 

将来の収入の伸びしろは、プレイヤー(担当者)ならその担当売り上げに依存します。その会計事務所が営業力があって集客が順調な場合はひこにゃん様の処理が速く正確ならその分給料は上がっていきます。ただ、富裕層向けの資産税、M&A、国際業務、医療等の高付加価値業務でなければ現職の水準に戻るまでに時間がかかるでしょう。

営業なら営業成績、管理者なら自分の管理する店舗や部門の成績で給与は決まっていきます。会計事務所は中小企業なので固定的な賃金テーブルはなく、結果を出せるかどうかで伸びしろが決まるのです。

 

A.2

どちらかを選ぶなら、基本は今伸びている事務所の方が望ましいでしょう。衰退する企業の悲哀は仕事柄よくご存知のはずです。

 

小さな事務所は独立希望者に人気がありますが、小規模な10名未満の事務所が60代以上の先生なら反対です。高齢化によって廃業・事務所売却の危険性が高いし、高齢の零細事務所なら時代に恵まれ客層が良かったとしても、業務水準は低く学ぶべきものも少ないからです。なお、後継者含みの転職は期待しない方が良いと思います。最近では会計事務所の売却が普通になっており、待たされた挙句にはしごを外されたら人生を誤まります。

 

他方、40代で子供がおられる金融機関出身者に400万円という値付けは50名程度の税理士法人としてはちょっと安い気がします。薄利多売で高付加価値業務ができていないとしたら大幅な昇給は難しいかもしれません。

 

繰り返しになりますが、個人的には税理士登録をできる状態にして、どちらでもないきちんと評価してくれる税理士事務所に転職するのがお勧めです。

転職した後にうまくいかなければ独立も視野に入れる必要があります。若い時ほどは営業に苦手意識はなくなっていますよね。
預金に余裕があれば別ですが、子育て中での新規開業は、いざとなれば奥様がきちんとフルタイムで働ける状況かどうかが大きく影響します。夫婦で転職に関する意識合わせはしておいた方が良いでしょう。

 

サンクコストに囚われず、家庭環境や自分の適性をよく考えて悔いがない選択をしてくださいね。

厳しいことを書きましたが、税理士は登録できれば50代でも60代でも需要があり、転職ができる仕事です。また、70代でも現役の方は普通にいます。
税理士資格を取ったことはどこかで生きることでしょう。

 

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税理士法人TOTALでは、40代の妻子持ち 会計事務所未経験の金融機関出身者をパートナーとして採用した際にはそれなりの金額の年収を保証しました。

最近では会計事務所経験が浅い60代の有資格者を採用して、事務所の管理者をやっていただいています。しっかりした企業で上級管理職を経験している方は優秀ですね。

~みんなちがって、みんないい~

過去を否定するのではなく、お一人お一人の過去を生かした採用・人事を行っていきたいと思っています。

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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