キャリアコラム
行政書士の専門分野と士業のネットワーク

行政書士の専門分野は非常に多岐にわたり、業務範囲は1万種以上とも言われています。大きく分類すると以下のような3種が独占業務とされています。
官公署に提出する書類の作成
- 建設業、飲食業、運送業など、事業を始めるために必要な許認可の申請
- ビザや永住権など、外国人の方が日本で暮らすための入国管理関連の手続き
- 一般法人設立のための定款作成
- NPO法人、医療法人、宗教法人などの認可法人設立のための手続き
権利義務に関する書類の作成
- 契約書、示談書、内容証明郵便などの作成
- 遺言書、遺産分割協議書など相続に関する書類の作成
事実証明に関する書類の作成
- 会計帳簿や貸借対照表などの会計書類の作成
- 議事録の作成
もちろん、独占業務以外にも行政書士が携わる仕事はたくさんあります。さあ、ルーキーの皆さん、これから何を専門分野にされますか?
これだけやれることがたくさんあると、どの方向に進んで良いのか分からなくなってしまいますね。そこで、法人向け・個人向けに整理して、行政書士の専門分野を簡単にですが解説していきたいと思います。
BtoB 法人に特化した業務
企業の設立から運営に関わる様々な手続きのサポートが可能です。経営者が本業に専念できる環境を整え、専門家として多角的な関わり方をしていく事ができます。
1)会社(一般法人)設立
行政書士は会社設立における定款の作成と公証役場での認証手続きの代行ができますから、設立登記の申請を行う司法書士と連携すれば、ワンストップサービスの提供が可能になります。
2)特殊法人設立
1)の一般法人とは違い、認可を伴う法人(NPOや医療法人など)の設立やその定款変更などに関する手続きで、専門性が高く周辺知識も必要になります。
3)許可申請
宅建免許、建設業、運送業、飲食業、古物商許可等、企業が特定の事業を始める為に必要な許可申請に関する書類の作成や提出代理を行います。
4)補助金申請
創業時や新規事業開始時に利用できる、国や自治体の補助金申請の手続きサポート、書類作成を行います。補助金に似たもので助成金がありますが、こちらは社会保険労務士の独占業務ですのでお間違えにならない様にしてくださいね。
5)会計書類作成
会計書類の作成は、税理士や会計士に限らず、行政書士にも可能な業務です。簿記の知識があれば尚良いでしょう。ただし、税務書類の作成は税理士の独占業務ですので注意が必要です。
6)契約書や議事録の作成
これは単独で獲得するのは難しいと思われますが、前述の1~4の業務を受託していれば、関連して作成の相談を受ける事もあるでしょう。
BtoC 個人のお客様の業務
7)遺言書作成
複雑な法律の要件を満たす必要がありますので、専門的な知識が必要になります。自筆証書遺言の作成サポートの他、公正証書遺言の証人として立ち会う事も可能です。
8)相続関係
遺産分割協議書の作成や、相続人の調査、預貯金や不動産などの財産調査などを行う事ができます。
9)在留資格
外国人が日本で生活・就労するためのビザの申請を代行します。国際結婚における配偶者ビザ、留学から就職への在留資格変更など、専門性が高いので特化型で行うメリットも大きいようです。
10)帰化申請
外国人が日本国籍を取得する為の手続きのサポートです。9)の在留資格と併せて専門としている行政書士が多く、複雑ですが収益性が高いのが特徴です。
11)アポスティーユ
聞きなれない言葉かも知れませんが、日本の公文書に対する外務省の証明などのことで、大変煩雑なステップを踏む必要があるため、国際的な手続きを専門に取り扱う行政書士として活躍できる場でもあります。
12)自動車関連業務
車庫証明の申請代行、自動車の名義変更や住所変更等の手続きです。個人に限らず、法人でも車両を所有していれば手続きは必要です。
どの業務を選ぶべきか
あなたが、コツコツ型でルーティンワークを好むのであれば、「1.会社(一般法人)設立」「5.会計書類作成」「12.自動車関連業務」などの業務が向いているでしょう。ただし単価が安く収益性が低いため、これらに特化する場合は継続的に集客することができないと利益に繋がらないというデメリットがあります。
あなたが困難な課題でも挑戦する要素を持っているのであれば、「2.特殊法人設立」「3.許可申請」「4.補助金申請」などの業務で経験を積むのが向いているかも知れません。難易度が高い程報酬は高くなりますが、広く深い知識と技術を身につける必要があります。
他士業との連携
他にも、まだまだ多くの行政書士業務がありますが、行政書士業務の殆どが単発であるため、弁護士や税理士のような顧問契約による安定した収益にならないという事も心配事のひとつです。
そこで必要になってくるのが、他士業との連携です。
例えば、どなたかが亡くなり、相続が発生したとしましょう。
これだけで、行政書士が遺産分割協議書の作成や財産調査、税理士が相続税申告、不動産を持っていれば司法書士が所有者変更の登記をします。
更にその亡くなった方が法人の代表者だったとすれば、法人の代表者変更登記(司法書士)、税務署などへの変更届(税理士)、許可を持っていれば役員変更手続き(行政書士)なども発生します。
これらを行政書士が単独で受託するのは大変困難なことであり、そのうえ、継続的に受託する為には税理士や司法書士とのネットワークがなければ更に難しいでしょう(前述7.8の業務)。
相続案件に関わらず、お客様は大概、複数の課題を同時に解決できる総合的なサポートを求めています。しかし、どの士業が何の専門分野を担っているかまではあまりご存じないのが普通です。行政書士が他士業と連携し、多角的な視点からアドバイスできれば、顧客の満足度を高め、信頼関係を深める事に繋がります。
また、周辺知識を学ぶことで、複雑な問題に対してもアプローチできるようになります。お客様は複数の専門家を探す手間が省け、自身も関連業務の知識を深め、業務の専門性を高める機会を得られます。
総合士業事務所であるTOTALでは、様々な士業とのつながりでワンストップサービスを提供しています。行政書士法人TOTALに興味のある方はこちらの採用情報もぜひご覧ください。皆様のご応募をお待ちしております。
執筆者
行政書士法人TOTAL
秋山 友樹子
行政書士。元マリンコントラクター勤務。主に許可申請を行う。
依頼者が新しいステージに進むためのサポートに尽力する。