キャリアコラム

社会保険労務士は激務?残業時間の実態と「働きすぎ」を回避する職場の選び方

社会保険労務士(社労士)という資格に興味を持ったとき、真っ先に気になる一つが「実際の働き方」ではないでしょうか。「独占業務があって安定している」というポジティブな声の一方で、「繁忙期は帰れない」「給与計算のプレッシャーがすごい」といった「ブラックな環境」を連想させる噂も耳にします。

果たして、社労士の仕事は本当に激務なのでしょうか?本記事では、現役の業界事情を踏まえ、残業時間の実態や業務の負担となる要因、そして「ブラックな環境」を回避するための見極め方を詳しく解説します。

【時期別】社労士の残業時間とスケジュール

社労士の仕事が激務かどうかを議論する際、最も重要なのが「時期による変動」です。社労士には、法律で定められた明確な期限が存在するため、特定の時期に業務が集中する構造になっています。

通常期(8月〜3月と5月):比較的穏やかな日常

この時期の平均的な残業時間は、10〜20時間程度という事務所が多いです。主な業務は、毎月の給与計算、入退社に伴う社会保険・雇用保険の手続き、顧問先からの労務相談です。これらはある程度ルーチン化されているため、突発的なトラブルがない限り、スケジュールは安定しています。

繁忙期(4月と6月〜7月):社労士が最も忙しい季節

社労士の「忙しい」というイメージの8割は、この期間に凝縮されています。この時期、残業時間は30時間を超える事務所も多く、人手不足の事務所では60~80時間程度になるケースもあります。

  • 4月:入退社ラッシュ 新卒採用や年度替わりの離職に伴い、保険手続きの件数が爆発的に増加します。
  • 6月〜7月:年度更新と算定基礎届 「労働保険の年度更新」と「社会保険の算定基礎届(定時決定)」という、社労士の二大イベントが重なります。全顧問先の全従業員の賃金を集計し、正確に申告しなければならないため、作業量はピークに達します。

「ブラック」と言われる3つの主な要因

単に残業時間が長いだけでなく、社労士の仕事を「きつい」と感じさせる要因には、特有の精神的プレッシャーがあります。

①1円のミスも許されない正確性

社労士業務のなかには給与計算が含まれます。 給与計算において「1円のミス」は、従業員の信頼を損なうだけでなく、残業代未払いなどの法的リスクに直結します。この「常に正解でなければならない」というプレッシャーが、神経をすり減らす要因となります。

②クライアントワーク特有の宿命

社労士はサービス業でもあります。 多くの顧問先を抱える事務所では、複数の企業から同時に「至急」の相談が入ることもあります。「解雇トラブルが起きた」「労働基準監督署の調査が入った」といった緊急事態には、自分のスケジュールを度外視して対応せざるを得ません。経営者と直接対峙するため、高いコミュニケーション能力や精神的なタフさが求められます。

③終わりのない学習負担

社労士試験に合格してからも、勉強は終わりません。 労働法や社会保険諸法令は頻繁に改正されます。常に最新の知識を持っていなければ、クライアントに適切なアドバイスができません。通常の業務とは別に、法改正の資料を読み込み、実務への影響を分析する時間は、実質的な労働負担といえるでしょう。

激務になりやすい職場・なりにくい職場の特徴

同じ「社労士」という肩書きでも、働く環境によって激務度は天と地ほど差があります。入社してから後悔しないために、以下のポイントで見極める必要があります。

IT環境:アナログか、デジタルか

最も分かりやすい指標が「ITへの投資」です。 いまだに紙の書類を郵送し、FAXでやり取りし、エクセルで手計算している事務所は、物理的な作業時間が膨大になります。一方で、「freee」や「マネーフォワード」などのクラウドソフトをフル活用し、申請業務についても電子申請を標準化している事務所は、移動時間や転記ミスが減るため、残業時間が短くなります。

教育体制と組織構造

「激務」に陥る隠れた要因が、教育体制の不在です。 未経験者に「背中を見て覚えろ」と丸投げする事務所では、業務が属人化しやすく、トラブル時に一人で抱え込むことになります。一方、ホワイトな事務所はマニュアルの整備や、複数名で顧問先をフォローする体制が整っています。標準化された教育環境があれば、無駄な試行錯誤や差し戻しが減り、結果として労働時間の短縮につながります。

まとめ:社労士は「コントロール次第」でホワイトに働ける

結論として、社労士の仕事には「確かに激務になる要素はあるが、それは環境とやり方次第で回避できる」という実態があります。

繁忙期という避けられない波はありますが、それ以外の時期は比較的コントロールが利きやすく、専門職として自律的に働ける魅力があります。正しく職場を選べば、高い専門性を発揮しながら、プライベートも大切にできる「理想的な専門職ライフ」を送ることは十分に可能です。


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執筆者

河瀬 務

社会保険労務士法人TOTAL

河瀬 務

特定社会保険労務士・税理士・相続アドバイザー。
大阪出身。智弁学園和歌山高校卒業、東京大学法学部中退。
会計事務所勤務後に平成30年税理士法人TOTAL入社、翌31年同社大阪事務所所長となる。

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