地方出身者の修行場所(会計事務所編)
2010年05月12日/ 高橋
東京都と千葉県の税理士法人TOTALの税理士 高橋寿克です。
W様からのお問合せです。
内容:
■年齢 21歳
■性別 男
■資格 税理士試験(財務諸表論合格・簿記論A)、簿記2級
■職歴 なし
■学歴 旧帝大
■会計事務所経験 なし
■居住地 仙台
■その他 今年8月、試験後に就職活動をする予定。
Q.こんにちは。私は今就職をどこですべきか迷っています。
私は故郷が新潟で、現在仙台市で1人暮らしをしています。この就職を期に新潟に帰るか、仙台に残るか、または東京へ出るかで迷っているのです。
私の理想とする形は、東京や仙台の事務所でしっかり修業を積んで、新潟に帰って自分の事務所を建てる、というものです。しかし、独立する際には、お世話になった先生から仕事をいただいて独立するのが一般的なようですから、この考えの実現は難しいのではと思いました。
それから新潟には戻りたいと思う一方で、都会に出て様々なものを経験したいという気持ちもあって、いくら考えても答えがでてきません。
私はどのようにしたらよいでしょうか。
とくに、「東京か仙台で修業を積み、新潟に帰って開業」が可能かどうかをお聞きしたいです。
A.
昔は、勤務先で長年、丁稚奉公をして、資格を取ったら独立に際して「のれん分け」をしてくれるという話があったようですね。
現在では、日本経済自体が縮小しており、会計事務所のお客様も絶対数が減少傾向にあります。のれん分けは、かなりレアケースになってきていえるといえるでしょう。最近の独立した税理士の話を聞くと、のれん分けは、現状では5人に1人くらいしか、ないと思った方が良いでしょう。地方経済ほど疲弊が激しいので、のれん分けヶ多いとは思えません。税理士法人TOTALは、ノウハウは徹底してお教えしますが、原則としてのれん分けは認めていません。
税理士受験生は勘違いしますが、顧客開拓をスタッフがしたとしても、そのためのツールや信頼は、その事務所のものを使っていますし、顧客獲得に関する評価も(明示・黙示の差はあれ多少は)給料に反映されているはずです。そもそも無資格時代に、勝手に営業したら税理士法違反です。このことが分からなくて、独立に際してトラブルになることが多く見られます。
私は11年前に独立しましたが、当時でも、のれん分けは一般的ではありませんでした。ちなみに、私は5年勤務しましたが、のれん分けは1件でした。その当時はそれでも、ものすごく所長に感謝しました。
開業後しばらくは、お客様はほとんどいませんでしたが、そのことが営業を覚える上で、又、自分の事務所のスタイルを確立する上で非常に役に立ったと思っています。お客様である起業家と話が通じやすいのも、このときの経験があるからです。それに若かったので、仕事がなくても苦労とは思いませんでした。
「のれん分け」を期待するようなら、独立はしないで勤務のままでいる方が向いているかもしれません。のれん分けは、あてにするより「あればラッキー」くらいの姿勢がいいと思います。
新潟・仙台の事情は正確にはわかりませんので、一般的な地方都市と、首都圏の違いで書きたいと思います。
結論から言うと、地方での独立を前提にするなら、都心にアクセスが容易で技術差が少ない郊外か、都心でも普通の中小企業向け業務をやっている事務所がお勧めです。
東京と地方都市ではマーケットの質も量も違います。東京なら、業種特化が可能ですし、強みになります。ノウハウの蓄積が容易なので高付加価値・効率化ができ、むしろ中堅以上の税理士法人はある程度の業種特化は進んでいます。医科・歯科特化はもとより、資産税・飲食・芸能界・SPC・上場企業などなど。
地方都市では、上場企業を若手税理士に頼む人などいませんし、マーケットサイズが小さすぎて業種特化は成功するのは困難ですし時間がかかりすぎます。独立当初は特に、何でも受けるくらいの覚悟が必要になります。
技術レベルは、事案が色々あり、情報がたくさん入ってくる首都圏を中心とした事務所の方が高く出来るでしょう。税理士法人TOTALには、ある遠方のお客様がいるのですが、それは、「○○県ではこの事案をこなせる税理士がいない」というお客様からの、たってのお願いがあったからです。実際にその方の申告書を見たときに、そのレベルの低さにかなりショックを受けたものです。
「東京か仙台で修業を積み、新潟に帰って開業が可能か」と聞かれれば、私の答えは「YES」です。他の産業で、都市部で修行して地方に店を持つのと同じです。その地域で修行してそこで独立するよりは、大変かもしれませんが、登れる山は高くなる可能性があります。
W様の場合、新潟の、技術レベルの高い事務所があれば、それも良いのかもしれません。しかし、受験環境や技術を考えると東京に出てくるという選択もあると思います。首都圏の税理士事務所が全て良いというつもりはありません。よくホームページを見て、面接等で税理士とお話して自分に合った会計事務所をさがして見てください。
参照) 「会計事務所の規模別・種類別の特徴」
税理士法人TOTALでも、地方から出てきて、いつか地方に帰って独立したいと考えているスタッフもいます(ただし、「引越し」を伴う方の採用は、船橋本部しか現状では受け付けていません)。業務の標準化や緊密な意思疎通・信頼関係が可能なら将来は地方支店の出店もありうると思っています。
※なお、ご質問はここをクリックしてください。
また、このサイトもありがたいことに皆様のご質問をいただき、事例が増えてきました。
ご質問の前に、同様な質問が無いかご確認いただけると幸いです。
「過去記事の検索」はこちらです。
コメントは管理者の承認後に反映されます