キャリアコラム
「就職と専念、どちらを選ぶべきか」新卒の判断基準
士業キャリア相談室編集長・税理士法人TOTAL浜松事務所所長の古橋です。今後、TOTALグループ代表の高橋とともに税理士関係のご相談に回答したり、税理士キャリアに関わるコラムを記載したりしていきたいと思います。
税理士コラム初回となる今回のテーマは、「就職と専念、どちらを選ぶべきか」です。
税理士を目指すことを決めた。次に考えるのは「会計事務所に就職して働きながら受験勉強をするか」「就職しないで受験に専念するか」。どちらが自分にとって間違いない道なのか、というところでしょう。実際に、士業キャリア相談室にも、多くの質問が投稿されています。
今回のコラムは、科目合格が無い、新卒(第二新卒含む)の方を対象に記載します(未経験・他業界からの転職ケース等は、別に機会があれば記載します)。早く税理士になる、税理士になれる可能性を上げるために、どういう状況・条件だったら専念がいいか、就職がいいか、2026年現在スタンダードと思われる一定の判断基準を示せたらと思います。
【新卒向け】専念すべきか・就職すべきかの判断基準
新卒の場合、判断基準は大きく2つあると考えています。
- 専念しただけの成果を得られるか
- 専念できる環境があるか
の2つです。
そして、成果を得られそうな方には、専念できる環境を整え、専念をお勧めします。その後に会計事務所に就職するのが税理士へのスムーズな道となるでしょう。
では、成果とは具体的に何を指すのでしょうか。そして、成果を得られそうな方とはどういう方でしょうか。
成果は、科目合格を中心とした、受験勉強の進捗です。1〜3年程度の専念期間の具体的な目標は、簿記論、財務諸表論の合格+税法科目1科目の受験(か受験レベルまでの引き上げ)という感覚です。2年なら会計2科目のどちらか合格済+もう1科目は惜敗+税法1科目受験(同上)くらいでしょうか。この状態で働き始めれば、仕事が忙しくて思うように勉強時間が取れなくても、何とか1〜2年頑張れば、「会計2科目+税法1科目合格」を目指せます。3/5科目という過半数を取得しているのですからゴールが見えますし、大学院を修了すれば税法2科目免除で税理士になれます。
成果を得られそうな方について、現実的に記載していきたいと思います。税理士試験は事実上の競争試験ですから、中堅私大から上位私大程度とも言われる他受験生よりよい得点を取らなければなりません。自身と試験内容を冷静に分析して「勝てる」と思えるのであれば、あなたは「成果を得られそうな方」です。
学歴は目安の一つにしてよいと思いますが、勉強が足りなければ最難関とされる大学の方も普通に落ちますし、真剣に勉強をすれば“ある程度は”学歴に関係なく受かる試験です。最終的には、自身の学力、資格予備校が公表する学習時間の目安(個人的にはその倍はかかるのが一般的かと思います)、今後の学習計画、覚悟その他を踏まえ、自分自身で「成果を得られそうなのか」判断するしかありません。
もう1つの判断基準ー専念できる環境があるかーは言葉通りです。多くの大学生は「卒業してからも親に頼るなんて」と思うでしょう。それは健全な感覚だと思います。ただ、合格のために使える手段の1つであることは間違いないのですから、最初から排除しなくてもよいと思います。
専念のメリット・デメリット
成果を得られそうな方には、専念をお勧めしますーと記載した通り、早く税理士になる、税理士になれる可能性を上げるという点において、専念のメリットは大きいです。それは税理士試験の特徴に由来します。
税理士試験の特徴
- 難関とされる国家資格・・・個人差はあるが一定程度の勉強時間は必須
- 暗記と速記が重要・・・一般的に若い時が有利
- 5科目の合格が必要・・・早めに科目合格を積み上げないと挫折しがち
合格しやすいとされる若いうちに専念し、科目合格しておく重要性が分かると思います。
一方で、デメリットは金銭面です。周囲が新卒入社して活躍する中、自分だけ浪人しているという引け目もあるかもしれません。
多くの会計事務所は新卒を重視しませんので、新卒でなくなることのデメリットはさほどありません。ただ、採用する会計事務所側は、入社希望者の真剣さや志望度を試験結果で量ろうとするはずですので、仮に、専念前に立てた目標を達成できなかった場合は、その自己分析や就職に転換した理由を十分に説明する必要があります。会計事務所側は、税理士試験は難関な試験であり、その結果には運の要素も当然に避けられないことを重々承知しています。アピール次第で選考上不利になることを避けることも十分可能でしょう。
就職のメリット・デメリット
ここまで、早く税理士になるという目的を達成するには専念が有利と書いてきました。しかし、そこまで早く税理士にならなくてもいい、という考え方も当然あります。仮に5科目合格まで10年かかったとしても30代です。税理士として十分若手であり、将来性は十分と言えるでしょう。こうした考えに基づけば、新卒で会計事務所に就職することは、決して間違ったことではありません。もちろん、上記の「成果を得られそうな方」にとってもです。
まず、就職することで金銭的にも自立し社会人としての第一歩を踏み出すということは、大学卒業後の進路として一種自然なことです。新卒採用を積極的に行っているのは、比較的大手の会計事務所が多いです。そうしたところに幹部候補(他業界と同様に会計事務所においても新卒は幹部候補です)として入社し、様々な業務に携わること、多様な人脈を獲得することは、その後のキャリアで有利に働くでしょう。
消極的な側面かもしれませんが、専念したのに何も成果を出せなかった、という考えたくもない事態を避けることもできます。
受験勉強の上でも、仕事と勉強をリンクできるというメリットがあります。税理士試験は実務者になるための試験です。当然、仕事で得た知識は受験勉強で役立ちます。毎日仕事で使うわけですから、記憶の定着にもつながります。同僚や先輩社員に不明点を聞ける環境であれば、効率的に学習を進められるでしょう。
受験勉強で得た知識は仕事で使えます。仕事に必要な知識を自ら積極的に学んでいるわけですから、望ましい社会人像の1つとも言えます。仕事がうまくいき、周囲からの評価があがれば、それ自体が受験勉強のモチベーションになるでしょう。
就職することのデメリットは、専念するメリットの裏返しです。
就職先は慎重に選ぶべき
就職先は、その後の受験勉強に大きな影響を及ぼします。慎重に行い、受験勉強を支援してくれる会計事務所を選ぶほうが望ましいでしょう。事務所の選び方については、過去回答「会計事務所の転職(離職率、マニュアル化、新人教育、残業時間)」などを参照してください。
税理士法人TOTALは、2026年8月7日(金)にTACの「就職説明会」(東京 新宿会場)、8月8日(土)に資格の大原「就職フェア」(東京 渋谷会場)とTACの「就職説明会」(大阪会場)にそれぞれ出展いたします。会計業界最大級の就職イベントです。先輩社員も多数参加しますので、興味のある方はぜひTOTALのブースまでお越しください。みなさんのご来訪をお待ちしています。
執筆者

税理士法人TOTAL
古橋 広海
税理士・社会保険労務士。
静岡県浜松市出身。浜松日体高校、茨城大学を経て、エネルギー専門紙記者。企業決算や中央官庁の概算要求・税制改正要望等を取材するうちに、税務会計に興味を持つ。同職中に税理士試験4科目を取得し、平成29年税理士法人TOTALに入社。その後最後の1科目を取得し、税理士登録。同社千葉事務所所長を経て令和7年から浜松事務所所長。
事業主の人事労務関係の相談事にも対応できるよう、社会保険労務士の資格も取得した。
令和7年から士業キャリア相談室(本サイト)の編集長。