キャリア相談室

大学3年生「最速で税理士になりたい」

ご質問いただいた内容

相談者

■お名前 ちぎ
■年齢 20代前半
■性別 女性
■学歴 地方国立大学

相談内容

現在大学3年生で就職活動と並行しながら税理士試験勉強をしているところです。大学4年時の試験で簿財消の3科目合格を目指して勉強しています。税理士に最速でなることを重視しているのですが、新卒時に税理士事務所に就職するか、税理士補佐アルバイトをしながら勉強に専念するか迷っています。

回答

士業キャリア相談室編集長・税理士法人TOTAL浜松事務所所長の古橋です。

ちぎさん、ご質問いただきありがとうございます。就職活動と並行しての試験勉強、大変ですよね。

就職氷河期と言われた20年程前まで、税理士を目指す学生は、学生のうちに、もしくは卒業後に専念して、科目合格を揃えるのが定番でした。大手税理士法人の多く、そうでなくても条件のよい求人は、簿記論+財務諸表論合格を、できれば法人税合格をも条件としており、入社希望者に比して採用枠が少ない”買い手市場”が成り立っていました。

今の状況は全く違います。改めて、大手資格予備校の就職情報誌(昨年版)を調べてみました。いわゆるBIG4税理士法人でも資格不問のところがありましたし、全体を見ても2科目必須にしているところはそう多くありません。さらに、多くの会計事務所が受験生応援策を打ち出すようになっています。過去と比べれば、働きながら試験勉強を継続する環境は整備されています。

とはいえ、時代が変わっても、会計業界で働くことは大変です。担当する顧問先の決算期はそれぞれ異なっていますので、毎月申告=明確な期限があります。専門家として扱われ、ミスが許されないのではないかというプレッシャーもあります。数字を扱うという特性上、そのミスが顧問先にもつまびらかになりますし、、、。

私は他業界からの転職組で、ある程度は覚悟していたつもりですが、最初はその大変さに驚きました。入社して半年程度は試験勉強は全くしておりません。その時間を、仕事のための勉強に切り替えました。給与計算の方法とか、会計事務所のスタッフとしては事実上必須ですが、税理士試験とは関係ないですしね、、、。入社後1年は試験勉強できないつもりで入社したので、感覚としては早く復帰できたと思います。

だから、入社前にある程度科目合格しておくのは、特に早く税理士になりたい場合、税理士になれる可能性を少しでも上げておきたい場合は有効だと今でも思います。単純に、その後の必要合格数が減るだけではありません。暗記、速記も重要な試験なので、若いうちが有利とされますし、仕事がある=やるべきことがあるということは、勉強しない言い訳にもなるので、とかく働いてからの受験期間は長くなりがちです。

ここまでが前置きで、ここからちぎさんの質問に回答していきたいと思います。就職先は会計業界と決めているようですから、行っている就職活動とは、会計事務所のことを調べたり自己分析を練り直したりといったところでしょうか。もし、大手資格予備校が8月試験後と12月合格発表後に東京、大阪、名古屋で行う就職説明会に参加したことが無かったら、ぜひ一度は顔を出してみることをお勧めします。情報収集に来ただけと言って問題ありません。先輩社員や事務所代表者と直接話せば、パンフレットやHPだけでは分からない実際の雰囲気、実態もある程度分かります。交通費をかける価値はあると思います。

質問文からの推察なので間違っているかもしれませんが、税理士試験そのものについても調べが進んでいるのではないでしょうか。3科目同時の受験は、比較的時間に余裕がある学生でも大変ですよね。だから学習範囲が一部共通の簿財をベースに(スタートは単純に簿財からという点もあるでしょうが)、ミニ税法である消費税法をプラスしている。消費税法を選んだのは、就職後役立つからという点もあるのでしょうね。専念を選択肢に挙げるくらいですから、前置きで書いた早めに科目合格を積み増す有意性も、聞いたことがあるか、調べたことがあるのだと思います。その上で「税理士に最速でなることを重視している」と、価値判断をしています。ちぎさんは、どちらかというと専念を優先したいのかなと読めました。

その上で「迷っています」と記載している。その迷いとは、次のような心理から生まれるものでしょうか?

  1. 就職するのは何科目合格した後の方がよいのか
  2. 専念して許されるのは何年が限度か
  3. 専念しても思うように受からなかったら「”新卒カード”で条件のよい会計事務所に入った方がよかった」と後悔しないか
  4. 専念の金銭的負担をどう賄うか、賄ってもらえるか

私が思う回答を書きます。

1.就職するのは何科目合格した後の方がよいのか

3科目合格を目標として、2科目合格+残り1科目が合格一歩手前水準までくれば就職していいと思います。合格一歩手前であれば、その1科目は働き始めて勉強時間が減っても、なんとか取り切れる可能性が高いと思います。

3科目合格は大きな節目になります。過半数をとったこと、レベルが高い税法試験で勝てたことが大きな実績ですし自信にもなります。大学院免除を選択肢に入れられるのであれば、実質税理士が確約されたことにもつながりますから、大きな安心感が得られます。

逆に、ちぎさんの年齢を踏まえると、5科目取得するまで専念する必要は無いと思います。受験1年目3科目、2年目2科目といったスピード合格の場合は別ですが。長年かけて5科目取得した方が採用面接に来たら、採用側は『実務で活躍したい』という意欲よりも、『勉強すること自体』が目的になっていないかな?と、少し慎重に見てしまうかもしれません。会計事務所によっては、未経験者に5科目取得の資格手当を与えることに抵抗感がある、他スタッフとのバランスをどう保っていいのか分からない、(税理士登録の要件となる)2年経過したらすぐに辞めそうという懸念を抱く――というところもありそうです。

2.専念して許されるのは何年が限度か

もちろん短い方がいいですが、2〜3年はこの業界では珍しくない範疇です。若い方がそれ以上時間をかけていた場合は、他に本当にやりたいことがある(あった)のではないか、勉強を継続できないのではないか=変わらないとこれからも合格は厳しいのではないか、アルバイトが忙しかった?(両親その他の援助は無かった?単純に優先順位付けがうまくいかなかった?)などが頭に浮かびますので、採用面接等で確認したいところです(これらが悪い、採用で不利と言っているわけではありません)。

3.専念しても思うように受からなかったら「”新卒カード”で条件のよい会計事務所に入った方がよかった」と後悔しないか

会計業界に新卒カードはほぼ関係ありませんので、この心配はある意味不要かと思います。

4.専念の金銭的負担をどう賄うか、賄ってもらえるか

家庭により大きく異なるところかと思います。試験勉強上はもちろん、アルバイトもしない方がよいです。ただし、生活費はともかく、予備校代まで負担させるのは心苦しいと思うかもしれません。そうした場合、事前に貯金しておくなど取れる対策は取っておきたいものです。援助の多寡=親の愛情の多寡ではありませんが、多くの親は、子どもが真面目に計画的に何か行動に移したいと訴えてきたときには、親なりに助けたいと思うものです。率直に話し合うことが何より大事だと思います。

なお、アルバイト先は会計事務所でなくても構わないと思います。それよりも、試験勉強に支障が出ないことを優先して選んでください。

 

税理士試験を突破するのに一番大事なことは、適切な勉強を継続することです。まずは目の前の勉強に集中して、本試験まで全力を尽くしてください!


税理士法人TOTALは、今年も8月の税理士試験後に開催されるTACの「就職説明会」(東京・大阪)、資格の大原「就職フェア」(東京)にそれぞれ出展いたします。

会計業界最大級の就職イベントです。先輩社員も多数参加しますので、興味のある方はぜひTOTALのブースまでお越しください。みなさんのご来訪をお待ちしています。


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執筆者

古橋 広海

税理士法人TOTAL

古橋 広海

税理士・社会保険労務士。
静岡県浜松市出身。浜松日体高校、茨城大学を経て、エネルギー専門紙記者。企業決算や中央官庁の概算要求・税制改正要望等を取材するうちに、税務会計に興味を持つ。同職中に税理士試験4科目を取得し、平成29年税理士法人TOTALに入社。その後最後の1科目を取得し、税理士登録。同社千葉事務所所長を経て令和7年から浜松事務所所長。
事業主の人事労務関係の相談事にも対応できるよう、社会保険労務士の資格も取得した。
令和7年から士業キャリア相談室(本サイト)の編集長。

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