会計事務所規模別特徴
2014年03月12日/ 高橋
税理士事務所・税理士法人の選び方について まとめてみました。 もちろん、類型化できない例もたくさんあります。 あくまで私見ということで参考程度に。
1.零細事務所(スタッフ7人くらいまで)
(1)給与水準等が低く、社会保険未加入の場合
結果として、どうしても他で採用されなかった
未経験者を採用することが多いです。
人材のレベルがあまり高いとは言えません。
とりあえず経験をつみたいという人向き。
(2)所長がが45歳以下
営業しなければならないのでほとんど所長は不在になります。
人を採用した経験がほとんど無く、管理・教育を期待しても難しいでしょう。
若い会計事務所未経験者はこのタイプの事務所に入ることも多く、会計業界に失望することも多いのは残念です。
良い点は、所長との距離は近いので、優秀な税理士なら成長を共有できます。
そうでない場合は、3年待たずに会計事務所の移籍を考えることになります。
離職率はどうしても高くなりがちです(「会計事務所・税理士事務所の離職率」についてはこちら)。
(3)所長が50歳以上で社会保険完備
業務水準はあまり期待できませんが、まったりのんびり仕事をしたいという人には向きます。3年程度仕事と受験の両立をしたい場合には良いですが、廃業・縮小リスクがあるので、30代半ばまでには他の会計事務所に転職しましょう
2.中小事務所(スタッフ8人以上30人以下)
(あまり科目数が多いと、独立・お客様を持って行くのを警戒されることもありますが)
「経験者」か勉強が進んだ人を求めます。
(1)所長が45歳以下
独立を目指す税理士受験生には人気になるのですが、教育・管理の仕組みが整っていないため人使いが荒いことも多くなります。
3年以上会計事務所に勤務している人の数と平均在籍年数を聞いてみましょう。
「離職率」が高いようなら要注意です。
資料を与えられて、具体的な指示なしに申告書を組まされ、担当を持たされ、言われていないことを間違えても理不尽にも連日怒られて…。
インターネットでかかれる悪口の典型はこのクラスの事務所に多いです。
やる気、柔軟性とストレス耐性がある人以外は近づかない方が無難かもしれません。
(2)所長が50歳以上
ゆっくりでも自分のペースで仕事をしたい人向きです。
お局さんに気に入られれば、じっくり教育もしてもらえるでしょう。
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私は、このタイプの会計事務所で育ちました。柳川一美先生は、当時、県内有数の所得を計上しておられました。
地に足のついた生きた会計技術を教えてもらったことはその後の財産になっています。
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ただし、長年の経験に基づく仕事のため
組織的な動きや、効率的な仕事の仕方を学ぶことは少ないかもしれません。
3.地方の中堅・大型事務所や、都内の一部中堅事務所(スタッフ31人以上)
新卒や会計事務所「未」経験者を採用します。
プロパーの方が定着率・組織に対する忠誠心が高く
教育の効果が高いからです。
組織的な教育や標準化をしようとしています。
一通りのことを効率的に学びたい人に向きます。
このクラスは、業務水準と人のレベル、給与水準のバランスがよく、
比較的人気が高いので、入所するのには
ある程度の人物的魅力と税理士試験科目合格を求められます。
受験や家庭との両立支援タイプか
仕事最優先体育会系か
労働条件は、事務所によって差が激しいです。
ご自身が求めるものと一致しているかよく確認しましょう。
4.専門特化事務所
「経験者」や2科目以上合格者を求めます。
仕事がきつくて勉強する時間がないし、
離職率が高いので、全くの新人を教育するのは割に合わないからです。
・専門的な分野に特化したい人
・特殊分野を扱いたい人
・給料は高い方が良い人
(専門特化は利益率が高くなります)
に向きます。
なお、専門特化型事務所のうち
医療や資産税は税理士でも開業後も出来ますが
REIT(不動産投資信託)
SPC(特定目的会社)
IPO(新規公開株式)
は公認会計士しか営業しにくいので独立希望がある場合は要注意です。
実は、これらの会計事務所は、求人広告が非常に上手なことが多いです。
マーケティングセンスがあるのでしょう。
総合事務所、大きな税理士、オールラウンドプレーヤーなど耳障りの良いキャッチフレーズが並びます。
実際には単一業務がほぼ100%という悪質な広告のケースも見られます。
給料はやや高いですが、単純入力業務で仕事もつまらないため、離職率が高いので、人の補充が追いつかず、残業が多く激務でさらに離職が増えるなど、問題があるケースも見られます。
キャッチフレーズが本当かどうか見極めることが重要です。
5.大手・準大手事務所(100人級以上)
辻・本郷、山田&パートナーズ、古田土会計、ベンチャーサポート、TOTAL等
最近は、会計業界で働く方も大手志向が強くなってきました。
仕事がきつくて勉強する時間がないところも多く、離職率が高いところが多くなりがちです。
もちろん、例外もあります。また、最近では大手・準大手の会計事務所も残業を減らす努力を始めています。
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税理士法人TOTALもついに大手・準大手のカテゴリーになってきました。
うちは受験・家庭と仕事の両立を支援しています。
このため労働時間は普通で無理な残業は少ないです。
ただし、家庭環境が落ち着いた非受験生には
ぜひ、仕事優先で給料があがるようがんばってもらいたいと思います。
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大手・準大手は大きく2つに分かれます。
(1)「経験者」や2科目以上合格者を求める事務所。
激務のところが多く、勉強との両立は難しいため、全くの新人を教育するのは割に合いません。
また、大きな案件も多いのであまり未熟なスタッフではリスクもあります。
・税理士にしては大きめな案件を扱いたい人
・きついくらいの方がいい。仕事を徹底して覚えたい人
・給料は高い方が良い人
に向きます。
このタイプがお勧めなのは、税理士有資格者や大学院免除者です。
なお、組織が大きい分、専門化が進んでいます。
オールラウンダーを目指す人にはややつらいですが
スペシャリストを目指すには良いと思います。
(2)理念経営、熱さ、体育会系のノリで勉強してない人を求める事務所。
成長率の高い会計事務所の中には、未経験者歓迎、税理士科目・学歴不問というところがあります。税理士試験と仕事の両立は大変です。どうしても仕事に割ける時間に限界があります。それでは成長率が高い事務所は困ります。そこで、税理士試験の勉強をせずに、仕事のみしてくれる人が欲しくなります。会社の理念を信じて、受験勉強をおろそかにして仕事に集中し、無資格のまま長く辞めない人が望ましいのです。
このタイプの会計事務所の見分け方は簡単で、税理士数が事務所規模に比して少なくなります。
税理士事務所別の登録税理士数は、日税連のHPで確認できます。
「税理士 検索」でページを出して
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch0.asp
「条件を指定して検索したい場合」の「税理士」を選択
https://www.zeirishikensaku.jp/sch/zs_sch3.asp
「事務所名」に就職希望会計事務所を入れればすべて出てきます。
(ここでは登録していないいわゆる「税理士有資格者」は検索できません)
税理士一人で職員10人超は見れないので
税理士有資格者が社員数の10分の1以下になると規模の割に業務水準は低くなります。
営業力が強く、業務水準が低い事務所は
所長・代表社員と営業を行う(業務を見る余裕がない)店長クラス以外、税理士がほとんどいないことがあります。
税理士の登録年月日も出ていますので、キャリアの想像はしやすいでしょう。
最近では、従業員100人を超える準大手でもこのタイプが目立ってきました。
税理士になる気がないなら、悪い選択ではありません。給与は業界平均よりは高く、頑張った分は評価されます。
ただ、税理士試験は、暗記とスピードが重要な試験です。若さが一番の武器です。今より若い瞬間はありません。
税理士受験生にはおすすめできません。有資格者になってから応募しても間に合います。
(1)(2)の中には、平均して10時くらいまで帰れないなど
(終電目指して仕事をして、繁忙期は泊まり込みで「不夜城」と呼ばれている事務所もあります)
体育会系のノリのところも多く、
優秀なスタッフでも試験との両立は難しいところもあります。
ただし、「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という言葉もあるので悪いこととも言えません。
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私も大好きな本郷孔洋先生ご自身が、3~5年でスタッフが一巡するという話を以前なさっていました(最近は存じ上げませんが)。
(ユーモアを交えて楽しいお話です)
「1人辞めたら2人採れ」という話は経営的には正しい思いますが
心臓が強くない私には無理そうです。
税理士法人TOTALは、価値観が共有できるスタッフを出来るだけ育てようというスタイルです。
本郷孔洋先生のセミナー参加の話は
→ 「日本の会計人!辻・本郷税理士法人 本郷孔洋先生」
税理士法人TOTALのスタッフでも
税理士試験4科目の者と社会保険労務士が
激務の大手・準大手(辻・本郷さん以外です)に転職しました。
うちに3年いてステップアップと考えたようですが、残念ながら2人とも1年持ちませんでした。
(原因は、
・受験との両立が労働時間が長いので難しかった。
・本人いわく宗教的体質が合わなかった
と聞いています)
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6.4大税理士法人(BIG4)
20代の税理士有資格者、科目合格者を求めます。
労働時間が長くゆっくり受験勉強する時間はありません。
クライアントとの関係で高学歴者、英語力は評価されます。
・英語力を生かしたい方
・将来、独立よりは上場企業勤務も考えている方
・給料はできるだけ高い方が良い人
・若くて学歴に自信がある人
に向きます。
BIG4とは世界的な4大会計事務所です。
BIG4とは世界的な4大会計事務所(カッコ内は監査法人名)です。
・EY税理士法人(新日本)
・デロイトトーマツ税理士法人(トーマツ)
・KPMG税理士法人(あずさ)
・税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC新た)
顧客は外資系や上場企業が中心です。
しっかりした教育をしてもらえますし、給与は平均して高くなります。
他方、税理士法人内の出世は、公認会計士と競うことになり、生存競争は厳しくなります。基本的には UP or OUT、組織のピラミッド構造を維持するためにランクごとに一定年限までに出世できないと退職勧奨される危険性があります。
BIG4のトップ4人のうち3人が公認会計士であり
(もう一人は外資系金融機関、BIG4を渡り歩いた海外経験者)、
監査法人系の税理士法人では税理士の出世は残念ながら楽ではないでしょう。
より詳しくはこちらをどうぞ
「4大税理士法人(BIG4)とは」
7.都内の大手派遣系会計事務所
新卒や会計事務所「未」経験者を採用します。
給与が低く、技術教育が不足して、
経験者の定着が見込みにくいからでしょう。
・とりあえず就職したい。
・税理士にはこだわらない(派遣や経理職で良い)
という人に向きます。
お勧めは、個人的には、税理士受験の勉強が進んでいれば
3.スタートが無難だと思います。
受験がこれからという税理士受験生は 2.のうち45歳以上の先生の落ち着いた事務所かな。
体育会系、宗教的なところ(労働時間の長さを正当化するには、考えずにある種の快楽を生み出せるのは都合がいいとも言えます)、終電、タクシー、始発、泊まり込みの会計事務所も実際にあります。
科目合格が進んでいない税理士受験生は、労働時間や離職率の確認をしないとあとあと後悔することになりかねません。
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ちなみに、税理士法人TOTALは
2年以上の会計事務所経験者か
未経験者でポテンシャルが高い人を求めています。
経験がない場合、新しいルールに対応できる人でないときついからです。
最初から正社員を希望する受験生は、税理士試験2科目合格くらいが一つの目安です。
事務希望者・まずはサポートスタッフでもいいという者は簿記3級程度でも問題ありません(将来的に正社員への転身は可能です)。
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「危険な税理士事務所の見分け方・こんな会計事務所は選んではいけない」
上記はあくまで私見です。ステレオタイプに分類できるほど単純ではありませんし例外もあります。
それに、最近では会計事務所業界も人不足で、労働環境や労働条件について改善を進める事務所経営者も増えてきています。
きびしいこともたくさん書きましたが、働く前から否定的になりすぎても前に進めません。会計事務所は、経営そのものに直接関与できるやりがいがある面白い職場です。
受験や家庭との両立、給料、仕事の種類、独立のための経験など、あなたが求めるもの・優先するものは何かをよく考えて悔いのないようにぜひ就職活動を進めてみてください。
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