地方の中堅税理士事務所から相続税専門事務所への転職

2019年01月07日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

「地方の中堅税理士事務所から相続税専門事務所への転職」

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向い様からのご質問です。
■年齢 38歳
■性別 男性
■資格 税理士試験官報合格(簿財所消国)
■職歴 町の税理士事務所勤務1年
■学歴 東北大中退
■会計事務所経験 10人ほどの町の税理士事務所で1年勤務中
■居住地 東北
お世話様です、以前一度8月に相談させていただいたものです。

あの後今年の税理士試験の発表があり、無事に官報合格していました。
それは非常にうれしいことなのですが、どうも事務所の所長(60歳くらい)から、あまり使い物にならないような印象を受けているようで気になっています。

といいますのも、勤務してから約1年が経過したのですが(それ以前に会計事務所での勤務経験なし)まだ他の人との同行であったりがメインで、会計事務所にあるまじく?暇な時間が多いのです・・
もちろんその時間にはいろいろ調べ物をしたりはしているのですが

自分の気持ち的にもこれでお給料をもらうのはどうなの?という思いが強いです。

もともとうちの事務所は比較的他の人も余裕があり(担当が1人当たり15社前後)残業はほぼ無いのですが、
このままここにいてもなかなか覚えられないのではと危惧しています。

今は法人税と相続税の勉強を行っているのですが、その関係から相続についてやってみたい気持ちがあり、
相続を専門にやっている税理士法人などへの転職も考え始めました

そこで質問としましては

Q.
官報合格したとはいえ実務経験1年で、40手前の男の場合
転職はある程度スムーズにいくものなのでしょうか?
もちろん経験はないので税理士並みのお給料が欲しいという気持ちはなく、とにかく今は忙しくてもいいのでしっかり教えてもらえて、数をこなせる事務所がいいのかな、と自分では思っています。

A.

税理士試験の合格、おめでとうございます。

今回の税理士試験の合格者はちょうど38歳くらいが平均的でしょう。

参照 平成30年度(第68回)税理士試験結果

スタートがやや遅かっただけにその後の頑張りは素晴らしいですね。

ますます、仕事を覚えたいという意欲が強まっていることと思います。

それだけにフラストレーションはたまりますね。

官報合格者、40手前、会計事務所経験1年の方の転職は、

一般的にはスムーズにいくと思います。

ただ、東北の場合は仙台とそれ以外で事情が異なる可能性があります。

東北の中心、仙台は会計事務所も多く、自分に合った会計事務所をいくつか選んで受けてみればいいと思います。

仙台以外の多くの東北の都市は、官報合格者を雇える税理士事務所はあまり多くないように思います。生産性が低く高い給料が払えないので有資格者を雇いにくいところや、独立に伴うお客様の持ち逃げを警戒する中小税理士事務所も多いでしょう。

首都圏では、私が業界に入った25年前でも一人当たり20~25社が標準でしたが、今では一人当たり担当件数は30社は普通で、製販分離が進むと最大70社くらいになろうとしています(税理士法人TOTALでも50社以上担当するスタッフが出始めています)。

私は全国の会計事務所の所長同士の勉強会に出席することもあるのですが、率直に言って首都圏・関西、特に東京・大阪は競争が激しく、東北を含む多くの地方はだいぶゆっくりしているなあと感じます。

おそらく、向い様が勤務している税理士事務所は、所長が60歳くらいという年齢からして地方の中堅事務所(この規模は大都市圏では「小規模事務所」ですが、地方では「中堅事務所」と言っていいでしょう)で成長がゆっくり又はゆるやかに衰退が始まっていて、昔からの単価が高いお客様も多いのでしょう。このため一人15社平均で暇な人ばかりでも回っています。いわゆる担当制だと、新人は先輩が辞めないとほとんど仕事がありません。

地方や郊外の所長が50代後半以上の税理士事務所に多く見られるこのタイプの事務所は、残業が少なく暇なのに給料は普通にもらえて、昔からいる高齢スタッフや受験生には言うことがない「良い事務所」なのかもしれません。

欠点は、若手に成長の機会や新しい技術を学ぶ機会が少ないこと、将来は衰退してリストラ・廃業する可能性が高いことです。

相続専門の税理士法人への転職を考えているとのことですが、

残念ですが、パイが大きな3大都市圏を除くと、相続税専門のようなカテゴリーキラーは、銀行とタイアップし資本や技術に勝る中央の大手税理士法人の支店やインタ-ネットに強い(地場を含む)中堅や大手の税理士法人に敵わない可能性が高く、相続税専門で新規に個人が独立して勝負するのはなかなか難しいでしょう。

最近の銀行や一部税理士法人の相続・事業承継に絞ったテレビCMを見ると、競争は激化し、寡占は進むと思います。

金融機関等のルートを使う富裕層と、インターネットで取り込むプチ資産家をターゲットに競争が激化し、価格は急速に下がっていくでしょう。

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税理士法人TOTALも、相続税は技術開発を進めて生産性を向上させるべく強化している最中です。かなり多くのお客様に選んでいただけるようになりました。

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独立を考えているなら出来れば、地方ではどうしても開業当初は法人を中心とした総合型にならざるを得ないので、ある程度、法人税もできる方が望ましいと思います。

前回の質問の際は仕訳や申告書作成で悩まれておられましたが

(参照「税理士事務所の新人の仕事の覚え方」)

1年の勤務を経てその件はおおむね解決したということよろしいのでしょうか。

もちろん、相続税中心の税理士事務所で一時的に相続税の技術を磨くのや勤務を続けて高給を目指すのは否定しません。

忙しくてもいいのでしっかり教えてもらえて、数をこなせる事務所がいいとのことですが、その場合は、仙台か、場合によっては首都圏へ出てこないと向い様が目指すような事務所はあまりないかもしれません。

なお、大手税理士法人の支店は、忙しくて数はこなせるところが多いと思いますが、しっかり教えてくれるか、標準化できているかどうかは税理士事務所・税理士法人によります。意外と大手でも標準化できていない税理士法人もあるのが実情です。

(個別の情報は記載を控えます)

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税理士事務所の経営は難しいですね。

暇だと『成長できない』と辞められてしまいますし、

忙しいと『ブラック事務所』と言われます。

一部の大手税理士法人は本当に残業が多くて、

忙しいとわかっていて入社してもやはり離職率が高かったりします。

税理士法人TOTALも地方から、前職では暇だった官報合格者を採用したことがあります。新規顧客がない税理士事務所だったため、彼はそれなりの経験者なのに6社しか担当していませんでした。そこでの5年の経験より、うちでの1年の方が仕事を覚えて成長してくれました。

パートナとして新規出店を担ってもらう予定です。

そう言えば、東北出身の受験生だった元スタッフは、その後税理士になって東北に帰り、今は地元のために働いています。

税理士法人TOTALでは、このあとゆっくり全国展開を進める予定です。10年がかりぐらいで、大阪(神戸、京都)、名古屋、福岡、仙台、札幌、那覇くらいを想定しています。じっくり首都圏で仕事を覚えて、いつか地元に帰りたいという方のご応募を歓迎いたします。

今年の春、大阪に出店します。

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

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