コミュニケーションが得意でない男性の税理士事務所への就職と会計事務所の人手不足

2018年09月29日高橋

税理士事務所就職相談室の税理士 高橋寿克です。

「コミュニケーションが得意でない男性の税理士事務所への就職と会計事務所の人手不足」

税理士法人TOTALでは、地方から若者の採用を行っています。受験歴や職歴よりもポテンシャルを重視した一般企業型の採用です。ご応募お待ちしています。

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タマネギ様からのご質問です。
■年齢 30歳(又は31歳)
■性別 男性
■資格 簿記論、財務諸表論、消費税法
■職歴 業種:会計事務所8ヶ月
■学歴 一浪してMARCH(事故で一年間休学)
■会計事務所経験 所長が60代の零細事務所
■居住地 東京

高橋先生

ご無沙汰しております。
質問させて頂いたタマネギです。

(参照:前回の記事は「税理士事務所への就職と転職エージェントの利用」)

その後、税理士会の求人サイトから応募して、所長が60代の零細事務所に採用され、正社員として9月から働いております。

5年以上のキャリアがある前任者(4科目合格者)が辞め、その欠員補充として入りました。前任者は、どうやら業務量が多過ぎて回りきらなくなって辞めてしまった様です。前の資料を見る限り、仕事が出来る人で、丁寧で誠実な仕事をしていたことが読み取れます。その方が辞めたので、現時点で事務所は回っていません。所長も仕事を丸投げだったため、顧問先について把握しきれてない現状です。勤怠管理についてもあやふやで、全て所員任せです。
事務所の雰囲気は静かで業務に集中でき、じっくり考えながら自分のペースでできる反面、引き継ぎもなく月次・年次業務を与えられたため手間取っています。

入所1週間目で既に終電まで残業をしたのですが、意思疎通が上手く出来ていなかったため、「勝手に帰った」と言われました。年間のスケジュールをいただいたのですが、担当が40〜50社近くあり、果たしてやっていけるのか不安です。仕事ができた前任者でさえ、朝帰り(始発帰り)が当たり前だったと聞きます。

所員構成としては、私と所長以外はアルバイトの女性が2名です。人手が足りていません。人手不足は深刻で、求人を出しても応募がない、「若い奴がいない」そうです。私は経験が足りないため、2〜3年は忙しくなるのを覚悟で入所したのですが、想定外だったので心が揺らいでいます。労働環境が良くなる見通しはありません。

Q.
給料は高くはないですが、私の経歴から考えたら安くもないため、判断に迷っています。既に業務が回っていないこともあり、繁忙期に対する不安から辞めるべきか否かを悩んでおります。安易に辞めるという言葉は使いたくないのですが、不安になるような事態が日に日に起こっているため、そう考えざるを得なくなりました。それとも、辛抱強く勤めて、結果を出して、きちんとキャリアを積んでから転職した方がよろしいのでしょうか?

自分には覚悟が足りないと常々自覚していますが、その覚悟とは命を削ることなのでしょうか?

長々と大変失礼いたしました。
ご返事いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

A.

すぐに今の職場をやめましょう。

閑散期に入社1週間で終電、当たり前に朝帰りの会計事務所は危険です。

パワハラの次は、ブラック残業ですか。

ついていないですね。

前回、2~3年でも激務の事務所はタマネギ様の場合は避けた方が良いと書いたのですが、
他には決まらなかったのでしょうか。

ご自身で自覚(前回記事「私はもともとコミュニケーションが得意でなく、それが原因で人からよく誤解されてきました。なおかつ、打たれ弱く悩みやすい性格なので引きこもりがちです。」)なさっているように、
コミュニケーション能力の低さ、メンタルの弱さを考えると、残念ですが現職で繁忙期に入ったときに状況が好転するイメージがわきません。

人間は、長時間残業や長時間の強いストレスにはそもそも壊れやすいものです。

命を削ってまでやらなくてはならない仕事はありません。

最近の若者が理不尽な状況に慣れていないことに加えて、

コンピューター・ITの普及で人間の仕事に遊びの部分がなくなり、ていねいさ・誠実さよりも成果や速さを求められ、よりメンタル不調が起こりやすい状況なのかもしれません。

一度メンタル不調になると再発しやすいともいわれています。

労働者の健康を考えて、労働基準法が改正されて19年4月以降は今以上に残業規制が厳しくなる予定です。

ところで、会計業界そのものがブラックなのでしょうか?

私の答えは NO!です。

もちろん、ブラックな会計事務所もありますが、率直に言って他の業界と同じくらいの比率です。ホワイトの事務所ももちろんあります。

むしろ社会保険労務士、司法書士、行政書士あたりの他の文系士業に比べれば、給与と労働時間のバランスはいい方です
(TOTALグループは他士業もあるので大体の状況はわかります)。

それでは何故、タマネギ様はブラックな事務所が続いたのでしょうか。

一つは、ホワイト事務所は人不足の今でも一定の応募者があるため、タマネギ様は選ばれにくいという面があります。

会計入力の自動化が始まっており、作業は人間がやらなくなっていきます。その結果、人間にはコミュニケーション能力が今まで以上に求められるのです。

同様に事業会社の経理もコミュニケーション能力が低いと採用されません。
ちなみに「女性」は作業者として働けるのでコミュニケーション能力が低くても会計事務所の場合は採用されやすいです。

もう一つは、MARCH卒・3科目持ち正社員のタマネギ様には採用する側はそれなりの給料を払っているので、その分 タマネギ様に多くを期待することになります。

仕事が遅かったり、意思疎通がうまくいかないと、初めの新設の若い会計事務所のように所長は『使えないな』と辞めさせるプレッシャーをかけたり

2番目の高齢の先生の会計事務所のように多くのお客様を担当させたりするのです。

それにしても製販一致で40~50社は多いですね。今だと製販一致なら20社スタートくらいが普通でしょう。

それだけ東京の人手不足は深刻なのでしょう。

他の産業に負けないように生産性を上げないといけませんね。

最近では、しっかりした税理士法人では、製販分離で40~50社はそれほど難しくはありません。

どの業界も30人以上のスタッフがいないと事業と言えるレベルの経営は難しいでしょう。会計事務所は、中小零細事務所が多いのが特徴です。30人以下の事務所が個人商店で生産性が低いのはやむを得ません。
少人数では一人の職掌の範囲は広く、専門人財(100人以上の法人でないと難しい)は育成できず分業制は取れません。社内にしっかりした教育システムもないでしょう。名ばかりの製販分離では生産性が上がりません。
仕事と受験勉強の両立も、代替要員が確保できる規模でないと機能しません。

100名を超えるような大規模な税理士法人では生産性革命が起きており、法人・相続とも価格破壊は進んでいます。零細会計事務所ではついていくのは大変で、会計事務所業界も寡占化が進んでいます。
働く側としては、小規模会計事務所に期待しすぎても難しいでしょう。

今後、タマネギ様はどうしたらいいのでしょうか。

私の答えは2つです。

理想は、仕事と勉強が両立できる中規模以上のホワイト事務所で官報を目指す。今度は残業時間の確認は面接時にしてみてくださいね。

ただ、残念ですが、職歴(短期で2回退職、社会人経験が浅い)、学歴(留年)、コミュニケーション能力で、ホワイト事務所での正社員としての採用はもしかしたら難しいのかもしれません。

2番目の選択は、家の近くのきびしくない会計事務所の正社員か、ホワイト会計事務所のパートで働きながら税理士試験合格を目指す。

前回も書きましたが、入力要員、税務補助不足に悩んでいる東京の会計事務所はたくさんあります。時給1000円~でもいいならさすがに決まるはずです。
金銭的に余裕があれば、大学院に進学しながらパートで働いてもいいでしょう。

いずれにせよ12月までには次の職場を決めましょう。

コミュニケーションは、経験を積めば徐々に上手になります。落ち着いた事務所でコミュニケーション能力を磨いて、いつの日かすばらしい税理士になれるように頑張ってください。

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税理士法人TOTALでも、たまたま、直近でタマネギ様に似たタイプの方をパートで採用しました。

30代後半、MARCH下位レベル卒、ゼロ科目(受験歴は長い)、職歴は3か所の会計事務所の短期アルバイトのみ。

コミュニケーション能力がやや不足しているためか、まともな会計事務所に採用されず、残業・パワハラ(で業界では有名な事務所です)・給料未払い!と典型的なブラック会計事務所が続いたそうです。

あれ、タマネギ様に思いっきり負けている。

税理士法人TOTALは、税理士事務所としては珍しく 学歴をホームページに載せているため、優秀な人しか採用していない、ハードルが高いと思っている方もおられるようですが、高卒・専門学校卒の方も多いですし、実は採用の基準は一般的な優秀さでは必ずしもありません。

税理士法人TOTALが今必要としている人材か(今回の彼は素直な良い方ですよ)、
きちんと少なくとも数年は残って結果を残してくれるか
を実際には重視しています。

むしろ組織適性がない『優秀』な方は、いわゆる 「人罪」 になるので採用していません。

また、税理士法人TOTALは、試験との両立を目指すため、受験スタッフという制度も設けています。試験前に休みやすくなるのが特徴です。

くわしくは当社ホームページの 採用ページ をご覧ください。

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また、このサイトもありがたいことに皆様のご質問をいただき、事例が増えてきました。 ご質問の前に、同様な質問が無いかご確認いただけると幸いです。

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この記事の執筆者

高橋 寿克

税理士法人TOTAL 代表社員税理士 高橋 寿克

千葉県船橋市生まれ。農家の12代目。税理士・行政書士・CFP®・医業経営コンサルタント。
開成高校、早稲田大学政治経済学部卒。
1999年 高橋寿克税理士事務所を開設。現在は全国16拠点に拡大したTOTAL Groupの代表として、税理士法人をはじめ、司法書士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人を擁する。
徹底した業務の標準化やクラウドシステム(マネーフォワード、freee)活用で業務効率化を推進。「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」を理念に日本一の総合士業事務所を目指している。

TOTALグループでは一年を通して採用活動を行っています

この記事へのコメント

高橋先生
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早速のご返事ありがとうございます。
誠実なご回答に感謝しております。
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本日、退職の旨伝えました。
ただ、唖然としたのは「後継者が決まるまでいてくれ」、「年内はいてくれ」、「引継ぎをしてくれ」と言われたことです。正直、図々しいなと思いました。きっと本人に悪気は無いのでしょう。ただ、時代感覚があまりにもズレているだけなんだと思います。所長の発言を聞いていると、所長の中では未だに税理士業は殿様商売のようです。高橋先生や大手税理法人の方々が仰っている、「如何にして生産性を高めるか」、「如何にして高付加価値なサービスを作るか」等の価値観とは正反対な気がします。
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そもそも、今の事務所は、勉強との両立を認めてくれるということで内定を受諾したのです。それが、1週間目で終電残業、休日出勤を言い渡されました。期限のある仕事であり、かつ、期待されているのだと渋々承諾しましたが、後になってオカシイと思いました。約束を反故にされたこと、時代感覚が遅れ過ぎていることなどから、一度は退職を決意し申し出ました。ただ、引き止めに会い、初めて必要されていると思ったため残留したのです。その後は、授業のある日は比較的早くに帰してくれるようになりましたが、状況が良くなったのはそれくらいです。授業のある日以外は8時〜9時くらいまで自主残業してます。明日の業務量をとにかく減らしたいからです。
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再三再四になりますが、是非アドバイスをいただけないでしょうか。質問は以下になります。
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1.私は実際にはいつ退職すべきなのでしょうか。労働基準法では、退職日の14日前に申し出る必要があると規定されていると説明されました。
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2.過去5年で100社以上は応募してきたのですが、ホームページがあるような事務所は既に応募したところばかりです。どの求人媒体を使えば、より良いのでしょうか。それともHPから直接応募する方が良いのでしょうか。もう受け入れ先が底をついたような気がしています。
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3.最後に、前の事務所が特殊な事務所だったため一般的な業務感覚が分からないのですが、一般的に年末調整200人以上というのはノルマとして多いのでしょうか。前任者のこなした数だと思われます。製販分離の事務所ですが、担当先を数えてみたら60社以上ありました。
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以上になります。
夜分遅くに、そして大変長々と失礼いたしました。
また、棘のある言葉でご気分を害されたなら大変恐縮です。
.
ご返事いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。

2018年10月2日 11:56 PM | タマネギ

どの業界も30名以上のスタッフがいないと事業と言えるレベルの経営は難しいでしょう。それ以下は個人商店なのはやむを得ません。少人数では分業制は取れませんし、教育システムもありません。名ばかりの製販分離で生産性が上がってこないはずです。
仕事と受験勉強の両立も、代替要員が確保できる規模でないと機能しないのです。仕事でお金をもらう以上、小規模会計事務所の経営者に期待しすぎても厳しいでしょう。

1.退職時期
①就業規則がない場合(高齢の所長だと、ない可能性が高いでしょう)
月給制の場合は、その期間の前半までに退職を申し入れ、その期間限りで退職することが可能です(民法627条2項)。
月給制なら14日(民法627条1項)ではありません。
10月末(給与が10日締めのときは11月10日)退職くらいが良いような気がします。
.
②就業規則がある場合
原則としてそれに従う(通常は2か月くらいのことが多い)。
従わない場合は、退職はできますがルール違反で損害賠償請求のおそれがあります。
円満退職を実現したい場合は、民法よりも会社の就業規則にある予告期間を優先すると良いでしょう。
今回の事例はそもそも事務所側にも問題がありますが、一般論では
業務の引継ぎは働く人間の責務であり、自己都合による退職で会社に迷惑をかけるのは社会人として良くないので、就業規則に従うのが普通です。
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いずれにせよ、転職活動のための欠勤は可能ですし、労働法に反するような無理な残業にはつき合う必要はありません。
この期間以前でも交渉して合意すればより早く退職できます。
.
2.求人媒体
①人材ドラフト
会計事務所の方から指名が来ます。自分のスペックに対する業界の評価もわかります。
ただし、スペックが高くてコミュニケーション能力が低いと面接で落ちやすいという問題があります。
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②ハローワーク(自宅近くの事務所)
都内だけで3000以上の会計事務所があります。100社では3%に過ぎません。
ちなみに、都内で事業所「税理士」で検索するとハローワークだけでも162件の求人があります。重複もありますが。
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ホームページは単なる営業広告です。いつどれくらい必要としているか採用の実情はわかりませんし、過度に期待しても難しいでしょう。
また、税理士会の求人票は高齢の先生の利用率が高く(税理士法人TOTALでは使っていません)、高齢の所長の事務所ほど若者は入らないので、人不足の現在では危険性が増しています。
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なお、過去に落とされた税理士事務所も今の人不足で採用の可能性はあります。
税理士法人TOTALも、だいぶ採用基準を下げました。
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本文にも書きましたがコミュニケーション能力がなくて正社員で決まらないなら、パートを含めて探せばどこかに決まります。その後、正社員になる選択もあります。
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3.年末調整200名は多いか?
正直、普通でしょう。
担当20社で家族役員もいますので普通は6名くらい、中に30名級が2~3社なら合計で200名です。
60社で200名なら平均3人強で零細事業所ばかりということになります。

2018年10月6日 7:30 PM | 税理士 高橋寿克

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